2008年01月04日

ハンガリーカード

ヨーロッパのトランプの中には、四つのスートに対応して季節が描かれているものがある。ハンガリーカードやテルカードと呼ばれているカードである。



エースに相当するカードに下のように季節を表す単語が書き込まれ、背景にもそれぞれの季節の風景が描かれている。このハンガリーカードはハンガリーで使われるハンガリー語のものとオーストリアで使われるドイツ語で書かれたものがある。このカードにはドイツ語で、Frühling春、Sommer夏、Herbst秋、Winter冬と書かれている。それぞれ花を摘んでいる少女、収穫をしている若い女性、ワインを男性と作っている女性、薪を背負っている老女の姿が描かれている。これとは別に、夏のカードで若者が収穫のあと休んでいるものや、冬のカードで男性がたき火にあたっている姿が描かれているものもある。別のバージョンでそれ以外の季節に何が描かれているかは持っていないので分からない。(別なバージョンが使われている画像は、この記事の最後のリンク先にある。)



このスートを表す記号は日本では使われていない。ドイツ南部やハンガリーなど中央ヨーロッパで見られるもので、ドイツスートと呼ばれている。ハンガリーカード以外にもこの近辺のカードに使われているパターンである。このドイツスートは日本で使われているフランススートよりも前から使われていて、影響を与えたと考えられている。ドイツ語ではそれぞれHerzハート、Schellen鈴、Grün葉、Eichelドングリと呼ばれ、ハンガリーではpiros赤、tökうり、zöld緑、makkどんぐりと呼ばれる。

一般的なドイツスートのカードには次のような特徴がある。エースには、マークが二つ描かれている。エースと呼ばずDausと呼ぶこともある。上の画像のように上下に同じ絵を描いている場合は結局4つになる。絵札には、エース、王、上の兵士、下の兵士がある。上の兵士は記号が上の方に、下の兵士のカードには記号が下の方に描かれている。数札にはその記号がその数だけ描かれて、その上にX、IXなどとローマ数字が書かれている。数札はすべての数が用意されているわけではなく、下位の数字が最初から無く全部で32枚とか36枚になっている。僕が持っているものは、ケースにSchnapsと書いてあって最初から24枚しか入っていなかった。これは、シュナプセンゼクスウントゼヒツィヒ(66)というゲームで遊ぶ専用デッキらしい。

ハンガリーカードと呼ばれるものには、エースに季節が描かれていることの他にも特徴がある。それが上の兵士と下の兵士のカードに描かれている絵である。そこにはウィリアムテルの戯曲に出てくる英雄達の絵が描かれている。ハンガリーカードが(ウィリアム)テル・カードとも呼ばれているのはそのためである。




英語版WikipediaのPlaying Cardの記事の中央ヨーロッパのところに、ハンガリーのトランプの説明が書かれている。


重要そうな部分の内容を勝手に訳すとこんな感じになるだろう:
これらのカードには一連の特別な絵が描かれている。ヨーロッパ全土で革命運動が巻き起こっていた頃、ハンガリーでも1849-50年革命があったが、このカードはその革命以前には誕生していたことが分かっている。
エースは四季を表す:ハートのエースは春、ベルのエースは夏、葉のエースは秋そしてドングリのエースは冬。上カード、下カードの絵は1804年にシラーによって書かれたウィリアムテルの戯曲から取られている。この戯曲はクルージ・ナポカで1827年に上演されている。
このデッキはウィーンにあるフェルディナンド・ピアトニックのカード彩色工房で発明されたと長い間信じられてきた。だが1974年に極めて初期のデッキがイギリスの個人コレクションの中から発見された。そしてこのデッキの発明者・制作者の名がペシュトのカード彩色家Schneider Jozsefであり、1837年に作られたことが明らかになった。
彼は上、下のカードのキャラクタとしてスイスの物語のキャラクタを選んだ。仮に彼がハンガリーの英雄や自由の戦士を選んでいたとしても、彼のデッキは当時の政府による厳しい検閲のために決して流通させられなかっただろう。面白いことに、カードのキャラクタはスイス人なのに、スイスではこのカードは知られていない。


※上の文章で1974年と書かれているものは、1973年かもしれない。また1837年という年は特定できないのかもしれない。このことについては、以下で述べる。



■これからはちょっとした探求の話。

この英語版Wikipediaの中央ヨーロッパのカードについての出典を探してみたが、よく分からない。でも探しているうちにハンガリー語によるWikipediaの記事Magyar kártyaを見つけた。ハンガリー語の概要部分を眺めてみると、冒頭の国名の羅列らしきものが、英語版の内容と同じように思える。機械翻訳で英語にしてどんな意味の単語が並んでいるか確認すると実際そうなっていた。先の英語の文ととても似た文章の構成をしている。こちらが先かと思ったが、そのページ下の関連リンクのところに、ソースとして英語版の中央ヨーロッパの項へのリンクが紹介されているので、英語版を元にしているのだろう。ただいくつか内容に違いがある。英雄の名前が書かれている。このテルカードが作成されたとされる年が書かれていない。古いデッキが発見された年が1974年ではなく、1973年となっている。

最初、どちらが先に書かれた記事か分からなかったので、違いが出てきたのがいつかを調べるためにWikipediaの履歴を調べてみた。英語版Wikipediaのハンガリーのトランプについての記事は2005年12月27日03:38に最初のその原形が追加されている。章の名前が途中で変わっていたり分量も増えているが、今の英語版の該当箇所とほとんど同じ内容になっている。一方、ハンガリー語版Wikipediaでの記事の最初の作成は2006年6月3日 11:39である。この時点では具体的な年が書かれていて当時の英語版とほとんど同じ内容のようだ。英語版は記事中の日付などほとんど同じ内容で推移しているが、ハンガリー語版は2007年8月12日の修正で、古いデッキが発見された年が1973年へと変更され、また発見されたデッキの作成された年の部分が削除されて、今に至っている。

ついでにドイツ語WikipediaのSpielkarteを調べてみる。履歴を探ると2006年5月18日08:46に中央ヨーロッパの章が出現する。それを、機械翻訳してみると、当時の英語版Wikipediaの中央ヨーロッパの部分を簡単に要約しドイツ版として数行付け加えたという内容だった。現在のものは、より詳しく独自の加筆がされていて、英語のものともハンガリーのものとも違う内容へと発展している。ただ、最初からSchneiderのことや1974の発見のことについての部分は具体的には書かれていない。フランスやスペイン、イタリアのWikipediaのページも機械翻訳をしながら眺めてみたが、ハンガリーのトランプについては詳しく書いていなかった。

ハンガリー語版には概要の部分の下にさらに文章が続いている。当初は現在の概要部分だけの記事だったものが、加筆を繰り返し、現在のようなかなり詳しいものへと発展したというのが履歴から分かる。ざっと単語を眺めてみるだけでも、ハンガリーカードを考えたとされるSchneiderさんの名前が所々出てくる。本文の章の題を訳してみると、「ハンガリーカード小史」と訳せる。内容は分からないが、ここに英語版では書かれていないような詳しい内容が書かれているようだ。

ここも機械翻訳してみた。しかしハンガリー語から英語への機械翻訳ではあまり精度はよくないのでよく分からない。さっきの概要部分の翻訳もそれほどいいものではなかったが、元になった英語版と似ているかの判断だけをすればよかったので、おおよその推測ができた。しかし今回は、ハンガリー語版がオリジナルの文章なので、内容を推測するのが難しい。そういえば以前赤ちゃんポストについて調べたときもハンガリー語で行き詰まった。とても悔しい。

この機械翻訳では、翻訳されずにそのまま残ってしまう単語が多い。たいていそれは長い単語でおそらく複合語になっているものがうまく訳せないのだろう。ドイツ語から英語の機械翻訳のようには、すんなりとはしてくれない。ハンガリー語はヨーロッパの中央にありながら周りの国と全く違うウラル語族に属している。語順だけ見ると、日本語のように助詞が単語にくっつき動詞が最後に来る構造をしている。今まさに僕が作っているプログラムもこういう語順で言葉が並ぶ日本語を解釈するプログラムなので、なんだか面白い。でも日本語は同じ語族に属するとは単純に考えてはいけない。ヨーロッパの現行言語の並びの方が特異なのだと考えるべきだろう。

それでもなんて書いているのか知りたいから、複合語らしいものを分割して意味を調べたり、かなり粘って調べてみたが、やっぱり内容を把握するのは無理だった。それでもいくつかヒントになる単語を見つけられた。「カード史家」という複合語を見つけることができた。そしてそのそばにある二つの人名。Kolb Jenőと、Sylvia Mann。歴史家という単語がなければこれが人名だとは判断できなかった。この人名を検索すると、まさに、それぞれがハンガリーのカードについての著作を書いていた。

このKolb Jenőという人の名前で検索すると、Régi játékkártyák. Magyar és külföldi kártyafestés XV.-XIX. századという本が出てきた。中身が分からないので断言はできないが、この本を典拠にしているのだろう。またSlivia Mannという人はドラゴンカードを調べたときにも見かけた名前だった。イギリス人で、IPCSというトランプの学会の初代会長をされた人だ。そこの出版物のリストを見ると、この人の名前やハンガリーのコレクションのことについてのタイトルなどが見つかる。ハンガリー語版も英語版のWikipediaの記事ではおそらくここにあげられているもののどれかを典拠にしているのだろう。これも現物を確かめたわけではないので断言はできない。

結論としては、英語版のほうは典拠をはっきり書いていないので記事中の日付の由来そのものが分からないので駄目だ。そう言う意味でドイツ語版の人名や日付など具体的な表現を避けた謙虚さは賞賛できる。ハンガリー語版では過去の研究書を参考にしながらいろいろ書いているように見えるので、おそらく、その研究の内容を正しく紹介しているのではないかと思われるが、ハンガリー語が分からないので残念ながら理解できない。

今回はここまでが限界。トランプの歴史にとって、もっと重要な疑問はあるのだけれど、革命が巻き起こった頃の19世紀のヨーロッパが背景にあったり、ハンガリー語を少しかじれたり、Wikipediaの履歴を調べて翻訳の形跡や変遷を眺めたり、調べてみて面白かった。



■関連リンク

・ハンガリー大使館サイト内には、Magyar Kártya(ハンガリーカード)の画像を使って日本語による解説がしてあるページと、代表的な遊び方であるSnapszli(シュナプスリ)の遊び方の解説もある。

Games played with German suited cards
英語のページ。ドイツスートのカードについて詳しく書かれている。ページ内のリンクをたどっていくと、各国の主なゲームの遊び方に行き着く。この記事の最後に簡単なテルカードの解説がある。リンク先の最終更新日は2004年1月18日。

・ハンガリー語も翻訳できる多言語翻訳サイト
http://intertran.tranexp.com/Translate/result.shtml


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2008年01月06日

ハートの起源1(ドイツスート)

いままでこのブログでいろんな探求をやって、そしてそこで気付いたことをもとに、いくつか仮説をたててきた。今回も面白いアイデアを思いついたので、ここに書いてみる。完全な論証にはなっているとはいえないけれど、わりといいんじゃないかと思う。

今回もトランプネタ。トランプという呼び方自体が日本人の誤用ではあるのだけれど、なじみ深い言葉なのでこのまま使うことにする。

現在僕たちが使っているトランプの記号「スペード、ハート、ダイヤ、クラブ」は、それ以前に使われていた記号をもとに作られたと考えられている。その元になった記号は、ヨーロッパの国々で今でも地方札の記号として使われている。いままでにもこのブログで、ポルトガルを通じて天正カルタ、ウンスンカルタにも受け継がれたとされるスペインスートの「剣、カップ、コイン、棍棒」や、前回紹介したハンガリーカードに使われているドイツスートの「どんぐり、葉っぱ、ハート、鈴」を紹介した。

前回紹介したドイツスートのハンガリーカード


今回新しく紹介するのは、それと同じドイツスートのザルツブルグパターン


ザルツブルグパターン参考資料
Salzburg pattern - IPCS Pattern Sheets-

この資料によるとザルツブルグのパターンは16世紀にまでさかのぼれるババリアンパターンと呼ばれるものから派生して1850年頃から使われるようになったらしい。

ザルツブルグカードのエースのデザインは次のようになっている。これはババリアンパターンのデザインとも近い。


どんぐりのエースには、酒樽にジョッキを持った酒神バッカスがまたがっている。頭からどんぐりの枝がはえている。葉っぱのエースには、鹿、ユニコーン、鳥が描かれて、その鳥が葉っぱの生えた木をくわえている。ハートのエースには、キューピッドが描かれている。矢を身につけ目隠しをしている。羽は緑色で、鳥のものではなく、蝶の羽のように紋が入っている。鈴のエースには、ブタとそれに襲いかかっている犬が描かれている。犬には赤い首輪がしてある。

上のエースのデザインは、それぞれのマークの意味を示しているように見える。これはババリアンパターン以前のパターンにおいて既に描かれていたかどうか分からないが、ババリアンパターンで使われるようになったとするならば、そのとき示されたドイツスーツのマークの定義を表しているように思われる。

ババリアンパターン参考資料
Old Bavarian pattern - IPCS Pattern Sheets-
Bavarian pattern Type M - IPCS Pattern Sheets-
Bavarian pattern Type S - IPCS Pattern Sheets-

この図像が象徴していることは、考えようによってはいろいろ考えられるが、素直に考えて、どんぐりは自然の恵み、葉っぱは野生、ハートは愛、鈴は家畜・隷属となるだろう。ババリアン以前にドイツスートは成立していたので、このエースが示している絵はその当時の後付けの解釈かもしれないが、それでも五百年前の時点でこの意味づけが成り立つわけだ。僕の解釈が間違っているかも知れないが、この絵を使って意味づけをしようとしていると考えていいだろう。

ここで重要だと思ったのが、ハートのキューピッドだ。これをキューピッドと解釈して間違いないだろう。蝶の羽根をしているのはちょっと変だが、このデザインによって、この図形が愛を表すことが明確に示されている。(因果関係は知らないがイタリアのトランプにも蝶の羽をした天使が描かれているものがある。)

以前、ハートの図形の起源について「ハートの形」に書いた。実は意味と記号の結びつきというのは突き詰めて考えると意外に難しい。そのときの記事では、ドイツスートでハートが使われているとは書いたが、それがどこからやってきたのかはっきりとは分からなかった。そもそもドイツスートのハート形のその記号が現在の記号のように愛を示すのかどうかもはっきりしなかった。それが、このキューピッドの絵によって、意味と記号が結びつけられているのが、はっきりと分かった。

話は紆余曲折してまだまだ続くが、ちょっと忙しいので、今回はここまで。


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2008年01月09日

パソコン壊れた

パソコンが起動しなくなってしまった。前回の投稿の日の夜。起動させてみると、XPのロゴは出てくるのだけど、途中で画面が真っ青になってしまう。

回復コンソールで「DIR」と打ち込んでも、エラーになる。ファイル名が出てこない。たぶんファイルシステムが壊れてる。Bart PE のCD作って起動させても、Cドライブを認識できなくてフォーマットしますかとか、殺生なことをきいてくる。

いままでブログに書こうと思って集めた資料も全部この中なのに。他にもいろいろ大切なものが残っている。少なくとも数ヶ月前のバックアップの状態に戻って、自分の人生の数ヶ月の活動を失ってしまうという現実に、ちょっと血の気が引いてしまった。

結局、KNOPPIX CDで起動すると、ちゃんとCドライブを認識できて、ほとんどファイルを救出できそうだとわかった。一時は人生の半分を失ったかのようにうろたえてたけど、今は一安心。現在はとにかく丁寧にファイルを外付けハーディスクにコピーしている。

今はメイン機ではなくなったソケットAのパソコンを使っている。KNOPPIXマシンと化した愛用のノートパソコンは今一生懸命ファイルを書き出してる。


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2008年01月10日

「見えない生活」がテレビ朝日で

「見えない生活」は、ほとんど目の見えない浦田りえさん、愛称りえちゃんの、見えない日常生活を密着するシーリーズ。福岡の九州朝日放送が制作する「ドォーモ」という番組で不定期で放送されている。通常の放送エリアは九州・山口地方のみ。このブログで何回も取り上げた内容だから、過去ログ「見えない生活」を読んでもらうと分かります。

とても明るい声の、とても前向きなりえちゃん。彼女の感じた中途失明の絶望は僕には想像することもできないものだろう。でもそういうことを微塵も感じさせないりえちゃんの明るさは、これはかなり衝撃的だった。

りえちゃんは、ゴールボールという競技の選手で、今の一番の目標はパラリンピックの北京大会に出場すること。去年ブラジルで行われた大会では、メンバーの一人として参加した。日本女子チームは、この大会で銅メダルとなり、めでたくパラリンピックのチームの出場権を獲得した。この1月に正式な北京大会での参加選手が決まるらしい。


そんなシリーズが今回、テレビ朝日と東日本放送で放送される。今まであったものすべてではないが、三本にまとめて放送される。テレビ朝日とあるから日本中にネットされるかと思ったら、残念ながらそうではないらしい。深夜なので曜日を間違えないように。

放送内容:

1.「見えない旅・見えない生活」
2.「見えない生活2・見えないデート」
3.「見えない卒業式・見えないスポーツ」

テレビ朝日:
 (1) 1/11(金) 深夜3時50分〜
 (2) 1/18(金) 深夜3時50分〜
 (3) 2/1(金) 深夜3時55分〜

東日本放送:
 (1) 1/31(木) 深夜12時51分〜
 (2) 2/7(木) 深夜12時51分〜
 (3) 2/14(木) 深夜12時51分〜


詳しくは公式ページ:「見えない生活l ドォーモ」 - 九州朝日放送

りえちゃんがゴールボールの練習をしている様子の動画が置いてある。


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2008年01月13日

ハートの起源2(蝶の羽を持つキューピッド)

トランプで使われるハートマークについての考察の続き。今回は前回出てきたキューピッドについての補足。

ドイツ系スートのザルツブルグパターンやババリアンパターンでは、ハートのエースに相当するカードにおいて、蝶の羽をもち目隠しをした子供が矢を身につけている絵が描かれている。前回は、これによりハートの記号に対して愛という意味が関連づけられていると考えられるというところまで書いた。

下の画像はザルツブルグパターンのエース(このサイトのトランプの画像は私物)。



下の画像は上下対称のババリアンパターンのエース(これは鳥の羽)。



記号がその当時どのような意味を持っていたのかということをはっきりと知ることは難しい。だからこそ、この関連付けはいい足がかりになる。ハートマークはハートと呼ばれる。だがこのハートという言葉そのものは愛を直接意味しない。全然関連しない言葉ではないが、ハートという言葉以上にこの記号は愛の意味を示している。そんなことは呼び名からではわからない。呼び名はその記号を指し示すだけで、意味そのものを正確に表さない。記号とはそういうものだ。

この目隠しをし矢を身につけている天使の図像は、キューピッドと解釈していいだろう。キューピッドは、ギリシャ神話におけるアフロディテの息子エロスと同一視される。まさに愛。奇妙に思えたのが、鳥の羽ではなく紋のはいった蝶の羽に見えること。

まず、キューピッドの目隠しを調べてみる。これは現在のイタリアのカードでも使われている。下の画像は北部イタリアのベルガモパターンの聖杯の1。イタリアスートの聖杯はフランススートのハートに対応するとされている。




目隠しのキューピッドという記号は絵画にも使われている。サンドロ・ボッティチェリの「春」(1478) という作品が有名だ。次のリンク先に説明がある。また左側にある拡大表示で画像を大きくすることができる。

サンドロ・ボッティチェリ-春(ラ・プリマベーラ)- - Salvastyle.com

この絵にキューピッドが描かれていることを知ったのは、次のページを読んだから。ここを読むと、蝶の羽を持つキューピッドにはもっと別な背景があることがわかった。

関連リンク:2.西洋におけるキューピッドと天使の図像 - ニッポンのエンゼル

このページでは、キューピッド(クピド)の、記号としての役割なども述べてある。愛の寓意という解釈は心強い。他の章も読んでいくと、まさに求める「蝶の羽を持つクピド」について書かれている。これはいい。

ビクトリア朝では天使の蝶の羽は自然に描かれていたとある。妙なこのカードの図柄は単にその当時のキュービッドのデザインを受け入れただけのようだ。

前回参照した古いザルツブルグやババリアンパターンの画像は年代的にはどれもビクトリア朝かそれ以後のものだ。これらに限ればこの時代の影響下にあったと考えるのが妥当だろう。それ以前のババリアンタイプのハートのエースでどう描かれていたのかが知りたいところだ。

それにしても、このサイトには詳しそうな参考文献が示されているので、これでまた別の探求ができるぞ。


この記事を読むまでは、蝶はプシュケーに関連するのではないかと考えていた。ギリシャ神話において蝶と言えば、プシュケー。言葉の上でも物語の上でも、エロスとプシュケーは切っても切れない関係がある。

関連リンク:
プシューケー - Wikipedia
Cupid and Psyche - en.Wikipedia

上記リンク先で使われている画像の中で羽の描かれているものは、どれも19世紀のフランスの画家ブーグロー(William-Adolphe Bouguereau)の作品。拡大してみると、プシューケーの背中には紋のある蝶の羽が描かれている。ほかの作者の19世紀以前の例はまだ見つけていないので、この図像が上記のトランプパターンが成立した頃にも常識的に使われていたのかどうかわからないが。

蝶の羽を持ったキューピッドはこの物語を踏まえているのかもしれないと考えていた。プシューケーpsycheは、キューピッドに愛される美しい女性であるとともに、心・魂を意味する言葉でもある。その意味でもプシューケーの羽を持つキューピッドは、ハートマークの定義としては的を射ている。


こんなふうに、知的な探求をするのはおもしろい。探しているうちに、新たな発見や自分の思いこみにも気がついていく。気をつけないといけないのは、自分が望む結論を導くために都合のいい事実だけを並べてしまうことだ。常に自分を疑う必要がある。でもそれには限界がある。これを読む人に任せるしかない。そのためにも検証可能なようにいろんな関連情報を残す必要がある。


ビクトリア朝の天使の図像の問題は、先サイトの参考文献を読んで調べてみるのはおもしろいだろう。ただここでの考察ではもうこれ以上考えなくていいだろう。キューピッドの記号の確認はこれまで。


この考察はまだまだ続く。


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2008年01月14日

「見えない生活」の反響と恩人

僕のブログは一日平均244ページビューのささやかなブログなんだが、テレ朝で「見えない生活」が放送された12日(土)は、1日だけで1018まで跳ね上がった。まさにりえちゃん効果。未明の3時50分という一番視聴率の悪そうな時間帯の放送だったのに、これだけの反響とは、やっぱり東京すごいな。

せっかく開いてくれた人には申し訳ないが、このブログにはりえちゃん個人のことについて詳しい情報は書いていない。番組を見てわかったことも場所など具体的なことは書かないように心がけて書いている。りえちゃんはお年頃の一般人なので開いてくれた人も了解してほしい。

次回は今回見た人たちが口コミで広げて、より一層の反響があるだろう。せっかくだからできれば高校生ぐらいの若い人たちにも番組を見てほしいな。これからいろんな苦難があるかもしれないけれど、りえちゃんの笑顔を思い出せば、どんな深い闇だっていつかは乗り越えられるだろう。この笑顔にはそういう輝きがある。そして彼女のように生きる人がほんとはどこにでもいることに気がつくと思う。


下で紹介するのは、残念ながら、かわいい女の子のものではなくおじさんのブログ。僕の視覚障害者との関わりを作ってくれた恩人のブログだ。この人がいなければ、僕はブログにりえちゃんのことを書かなかっただろう。以前りえちゃんが歩いていた同じ道で視覚障害者の人を誘導したことがあると書いたが、それがこの人である。

一昨年このおじさんは脳出血をして半身が動かなくなった。今このブログの記事は右手だけの点字入力で書いている。今は日々リハビリをしながら本業の鍼を一日でも早く本格的に再開できるようにがんばっている。

・「健康と生き甲斐の追求


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2008年01月22日

「婚外子が初めて半数超える フランス、法制度も後押し」

こんな記事を見つけた。カテゴリーの「赤ちゃんポスト」とは直接関係ないけれど、フランスにおける出生の記事。

 フランスで昨年生まれた子どものうち、婚外子の割合が50.5%と初めて半数を超えたことが、仏国立統計経済研究所が15日に公表した人口統計で分かった。結婚に縛られない自由な男女関係を望む風潮を、法制度が後押ししてきた背景がある。

 統計によると、昨年生まれた子どもは81万6500人で、83万人を超えた06年を約1.7%下回ったものの、昨年の結婚件数は26万6500件と前年より約2.8%も減少。その結果、婚姻関係にある男女間に生まれた嫡出子が半数を切った。


引用元:婚外子が初めて半数超える フランス、法制度も後押し 2008年01月16日20時14分 asahi.com

フランスがそんな制度だということは知っていたが、ここまで来てるんだ。以前赤ちゃんポストのことを調べたときは、フランスには匿名出産(Accouchement sous X - fr.wikipedia)なんていうのがあるから、赤ちゃんポスト自体必要がないということがわかって驚いてしまった。人権の進んだフランス人の考えには正直ついていけないな。

記事の引用していない部分に出てくるPACSは、日本語版Wikipdeiaでは民事連帯契約法として書かれている。フランス語版Pacte civil de solidaritéだと、具体的な数字なども紹介されている。


ブログに書くときは、記事が正しいかちょっと調べたくなる。それで元記事を探してみた。

日本語の文章の翻訳元ではないが、同じ話題を扱ったルモンドの記事を見つけた。タイトルにPACSとある。上記の日本語の部分に対応するところだけを引用すると、

Conséquence de la baisse des unions matrimoniales, les naissances hors mariage ont poursuivi leur progression et sont devenues en 2006 majoritaires pour la première fois, avec 50,5 % de l'ensemble des naissances contre 48,4 % un an plus tôt. Il y a dix ans, cette proportion ne dépassait pas 40 % et elle était de 10 % seulement en 1977, il y a une génération, rappelle l'Insee.


引用元:Le pacs progresse, les naissances hors mariage aussi

朝日の記事だと昨年ということになっていたけど、これはどうやら2006年の統計だ。人口については2007年の統計だけど。

最後の単語Inseeは、 Institut national de la statistique et des études économiquesの略称。つまりフランス国立統計経済研究所のこと。サイトのアドレスも見つけたが、開けなかった。


参考ページ:
婚外子がフランスでは過半数に (01/21) - フランス語講座(携帯対応)

フランスの婚外子出生比率、06年に50%を突破 - ロイター

仏の婚外子、初の過半数・07年出生割合 - 日経


利用した翻訳サイト:
Alta Vista - Babel Fish Translation


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2008年01月26日

バックアップしましょうね

先日、ハードディスクがアクセス不能になってしまって、修復はできたけどちょっと大変だった。(パソコン壊れた参照)

そこで、有料でもいいから便利なツールはないかと探してみた。これだと思ったのは、「Acronis True Image」。最新版は最近出たばかりの「Acronis True Image 11 Home」。

「Acronis True Image 11 Home」にはパッケージ版もダウンロード版もある。僕は時間が惜しかったからダウンロード版のほうを買った。

【限定特価】Acronis True Image 11 Home 通常版
おすすめ度 :
コメント:便利ですよ。




これ一本あれば、バックアップに関するたいていのことができる。以前はこれの簡易版を使っていてそれだけで十分だと思っていたが、最新版の機能をみて、これだけの機能が使えるならば、この値段を出してもいいと思った。

これは、パソコンのドライブを丸ごとバックアップすることも、特定のフォルダだけをバックアップすることもできる。増分バックアップや差分バックアップもできるので、最初に完全なバックアップを作っておけば、その語の変更は最小限の容量でその都度バックアップを残していける。定期的なバックアップができるようにスケジュールを登録することができる。

ドライブを丸ごとバックアップしたときは、そのデータを右クリックのメニューで「マウント」を選べば、ハードディスクと見なしてアクセスすることができる。そこからデータを参照して現在のフォルダに持ってくることができる。そのマウントしたハードディスクの内容を書き換える設定にすることもできる。

Windowsを実行中でもバックアップを実行できる。起動CDも作成できて、パソコンがCD-ROMから起動できるように設定してあれば、そのCDを使って作業ができる。

別のハードディスクに内容を完全にコピーすることもできる。つまりクローンだ。その機能を使って、ハードディスクの容量が足りなくなってきたら、より大きな容量のハードディスクに置き換えることができる。ハードディスクから異音が聞こえてもうすぐ寿命だなと思ったときもこれを使えばいい。自分でハードディスクを物理的に取り替える技術も持っていたほうがいいけど、外付けドライブにバックアップをした後(もちろんマウントしてうまくいったか確認すること)、修理に出して新品のハードディスクに換えてもらってから、外付けハードディスクから内蔵ハードディスクへ同じことをすればいい。クローンをする向きを間違えたりしたらすべてがだめになるから、どの行為も慎重に行わなくてはいけないけれど。

実際僕は数年前メーカーに修理に出すとき、この方法を使った。当時はこれの簡易バージョンを使っていた。それを使って、自分のデータを見られたくなかったから、外付けドライブに現在のクローンを作り、本体をマニュアルの手順通りリカバリーして購入時の状態に戻して修理に出した。そして修理から戻ってきたあと、その外付けドライブのデータを使ってリカバリー前の状態に戻した。信用していいかわからない量販店の店員を介する場合はなおさらだろう。

今度のバージョンからハードディスクの内容を完全抹消する機能も持つようになったから、パソコンを廃棄するときもこれ一つで安心。

さて、これでまったく安心かというとそうでもない。ハードディスクの内容を一つのファイルにしてしまうわけで、そのファイルが壊れてしまうとどうしようもなくなる。だから、より完璧を期すためには、完全バックアップでできたファイルはそれ自体どこか別の場所にコピーしてバックアップをしておかないといけない。もちろんこれも確率の問題だけど。

今は人生の記録そのものが電子化されてしまって、すべての写真、すべてのビデオライブラリ、すべての個人的な日記などなど、もう決して失うことができないデータを僕たちは自分のハードディスクの中に抱え込んでしまっている。でもこんなふうに丁寧にバックアップをしても、バックアップ先が自宅の別なハードディスクだと災害が起きたときには、両者とも同じ運命をたどってしまうだろう。近いうちに、個人レベルでみんなが遠隔地にデータサーバを用意するのがあたりまえになるかもしれないな。


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2008年01月29日

神の手

最近このブログへの検索語に久しぶりに「神の目」という言葉が出てきたので、もしやと思っていろいろ調べてみたら、「神の目」ではなく「神の手」のチェーンメールが流行っているらしい。どれだけブログで語られたかを示す下のグラフを見ても、ランキングには現れるほどではないが、この半年の中でもおおきな盛り上がり。

過去180日間に書かれた、神の手を含む日本語のブログ記事
テクノラティ グラフ: キーワード「神の手」に関するグラフ

上のグラフだと、日付の指定ができないので、期間を指定できるYahoo!ブログの注目度グラフへのリンク
「神の手」の注目度の推移

おそらくこの余波で「神の目」が検索されたのだろう。

このチェーンメールは「神の目」が流行った頃にも見た。一目でうさんくさく思った。それにしても、ちょっとググればこれが馬鹿げた加工だと分かるのに、そんな簡単な確認もせずにブログに書いてばらまいてしまう人はいったいネットに何しに来てるんだろう。厳しい言い方だけど。


神の目のときにも思ったけれど、これをばらまいている人は心からの善意で動いているんだろうな。画の真偽はともかく自分の周りの人を幸せにしたいとほんとに思い込んじゃったんだろうな。その気持ちは素晴らしいものだけど、疑いもせずググりもせずにあっさりブログに書くなんて。そんな無垢な心のままだと悪意に利用されるだけだよ。きっと10代の人も多いんだろうな。簡単に信じちゃった人は悪徳商法には特に気をつけよう。巧妙なやつはこんなふうに自分がやっているのは善意だと思い込まされている人を使って近付いてくるからね。

神の目のときやったようにいろいろ調べてみようと思ったが、もう既にされていた。下のリンクだ。結論を見ると、目にもしたくない下品なものを見なくてすんだようだ。

「神の手」はどこから来たのか【加筆・修正あり】 - PSJ渋谷研究所X
どこまで広がる「神の手」 - PSJ渋谷研究所X
神の手 - はてなダイアリー

はっきり書くと、どこかのアブノーマルな人が自分の肛門を両手で開いているグロ画像があって、それへのオマージュとして作られたのがこの「神の手」画像らしい。とんでもないものを、ありがたがってたんですよ。


・関連記事
ヘリックス星雲
「七夕」と「らせん星雲」

※例の「神の目」の写真は、一緒に出回っている注釈は嘘だけど、写真そのものは本物。光の波長からわかる成分を示すために意図的に着色された画像(青は酸素、赤は水素や窒素)。これは合成写真であるけれど、一般人が勝手に作るような合成ではなく、部分的に撮影されたデータをそれが完全な全体像になるように合わせたもの。その意味での真っ当な合成。自分の以前書いたものを読み直してみたけど、そのニュアンスが伝わっていなかったかもしれない。


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posted by takayan at 01:08 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記・未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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