2012年06月15日

美の迷宮への旅 三百年の眠りから覚めた女神 ボッティチェリ「春」 のメモ

おととい6月13日、BS朝日でボッティチェリの絵を扱った番組をやっていたので、その内容のメモ。

要潤がナレーションをしているBS朝日の「世界の名画 美の迷宮への旅」というシリーズ。この回は今年の4月25日(水)に放送されたものの再放送。《春》を軸に、ボッティチェリの作品と人生を紹介していく。その中で作品の謎についての解説がある。ボッティチェリの話題だけで無く、当時から続くトスカーナ地方のワイナリーも訪ねている。

21時57分から見始めた。本来は21時からの1時間番組だが、プロ野球中継が延長になったせいで、残り30分を見ることができた。前半は見られなかったけれど、とても分かりやすくまとめられた番組だったと思う。これは再放送らしいので、またいつか再放送されることを願う。

以下、途中からだけど、その内容をまとめた要約。個人的な感想などは次回。

フィレンツェの街角の壁にあいている奇妙な穴。これは昔、貴族が自家製のワインを売るために使っていた窓口で、当時貴族がワイナリーを持っていたことのなごり。『君主論』のマキャヴェリもワイナリーを持っていた。トスカーナ地方の老舗のワイナリー、フレスコバルディーが紹介される。ボッティチェリの購入記録も残っている。フィレンツェ市内にあるフレスコバルディーの豪邸の内部。ギルランダイオGhirlandaioの聖母子が飾ってある。この邸宅はブルネレスキが設計したサント・スピリト教会とつながっている。

ボッティチェリの話に戻る。東ローマ帝国がトルコに脅かされ、逃れてきた学者たちが、古代ギリシア、ローマ思想をイタリアに伝えた。メディチ家のロレンツォが文化サークルを作り、多くの文化人と共にボッティチェリもそこに招かれた。そして《春》が誕生した。古いものから生まれた全く新しい芸術。ギリシア・ローマの神々というモチーフを初めて取り入れた。

この作品の目的は何か?30年ほど前、謎を解く手がかりが見つかった。画の汚れを落としたところ、いくつもの花が浮かび上がってきた。190種ほどのフィレンツェの春に咲く花が描かれている。それぞれの花には意味がある。例えば、アイリス。これはゼフィロスがクロリスとの結婚に際して贈った花。クロリスの口から出ているヒメツルニチソウPeriwinkleは結婚による結束を表している。そして口から出た花は愛の勝利を意味する薔薇に変わり、花の女神フローラの体につながっている。これらの花言葉から、この絵が結婚にまつわるものだと考えられ始めた。結婚や愛に関連する花は他にも描かれている。

この絵の制作当時、ロレンツォの親族が結婚式を挙げていた。この絵はこれを祝して贈られたものだともいわれている。ボッティチェリの《パラスとケンタウロス》も、同じ頃、同じ注文主のために描かれている。この作品が《春》の目的の裏付けになる。知恵の女神パラスが半人半馬の暴れ者ケンタウロスの髪を掴み押さえ込んでいる。ニンフを追い回すケンタウロスは欲望の象徴。知恵を司るパラスは理性の象徴。この絵は欲望に対する理性の勝利を讃え、新婚の二人に愛の理想を説いているようにみえる。

ボッティチェリは聖母の画家とも呼ばれる。市庁舎の謁見の間に飾らために描かれた円形の作品《ザクロの聖母》。この聖母を反転すると《ヴィーナスの誕生》のヴィーナスに似ている。モデルが同じ女性だったかもしれない。そのあと、《受胎告知》の紹介。

パトロンであるロレンツォが亡くなって、ボッティチェリはサヴォナローラに心酔していく。サヴァナローラは大衆に禁欲的な生活を説き、ボッテイチェリも昔の宗教画に逆戻りする。ボッティチェリ自身、手元の異教の神々や裸婦像を焼き尽くした。しかしローマ教皇を批判したサヴォナローラは破門され、反対勢力にとらえられ火刑となる。それでもサヴァナローラを擁護するボッティチェリは《誹謗》という作品を描いた。無実を意味する裸の男が、誹謗を表す青い服の女性に髪を掴まれ、引きずり出されている。その先に待ち構えているのは、ロバの耳を持つ不正という名の審問官。ボッテイチェリはこの絵でサヴァナローラに対する仕打ちが不条理だと訴えている。この絵に描かれている真理の象徴たる裸のヴィーナスも、《ヴィーナスの誕生》に登場した優雅な姿ではなく、無骨な印象を受ける。その後ボッティチェリは、貧困にあえぐ晩年を送り、1510年に65才でその生涯を閉じた。

ボッティチェリの死から250年後、メディチ家の美術品を中心に作られたウフィツィ美術館。中庭を囲む28人の彫像の中には、ボッティチェリの姿はない。」ボッティチェリは人々から忘れ去られていた。しかし、1815年、ボッティチェリの作品《春》と《ヴィーナスの誕生》が公開されるやいなや、300年の時を経て、女神たちは微笑み始めた。19世紀末の画家たちがモチーフとして描いた「宿命の女(ファム・ファタール)」のモデルは、この《春》に描かれたヴィーナスだといわれている。

美の歴史を一変させた西洋絵画の金字塔、《春》。それはまさしく、ルネサンスに春を告げた作品だった。

番組ページ:
三百年の眠りから覚めた女神 ボッティチェリ 「春」

予告動画:

300年の眠りから覚めた女神 ボッティチェリ 「春」

この番組での解釈の参考となるのは次の2冊だろう。
・《春》に描かれている全ての花を調べ上げたのは
Mirella Levi D'Ancona  『Botticelli's Primavera: a botanical interpretation including astrology, alchemy, and the Medici』
・《春》を従来の《ヴィーナスの誕生》ではなく、《パラスとケンタウロス》を利用して解釈するのは
ホルスト・ブレデカンプ Horst Bredekamp
『ボッティチェリ《プリマヴェーラ》 : ヴィーナスの園としてのフィレンツェ』



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posted by takayan at 02:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | プリマヴェーラ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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