2014年06月07日

「ウェヌスの治国」について 補足

2011/03/05に書いた「「ウェヌスの治国」について」という記事の補足です。ボッティチェリの《春》は「ヴィーナスの治国」や「ヴィーナスの王国」といった名前でも呼ばれています。これはイタリア語での「il regno di Venere」、ドイツ語では「das Reich der Venus」の日本語訳です。この記事はその呼び方の由来に関するGoogle Booksを使った探求でした。なおこのブログでは神々の名前の読みはラテン語読みで統一したかったので、ウェヌスと読んでいます。

このときHermann Ulmannが書いた『Sandro Botticelli』の全文が見られませんでした。ですが、久しぶりに探してみると簡単に見つかりました。以前も「インターネットアーカイブ」は探したのですが、2013年に電子化されたようです。以前書いたものの最後に、「Ulmannの内容が分かったら」と書いていたので、ここに追記します。

次のリンクからそれを読むことができます。
Sandro Botticelli (1893)

Ulmannの本ではボッティチェリの作品リストなどで「春の寓意」もくしくは「ウェヌスの治国」と併記しているところもありますが、84ページと85ページの間にある1ページを使った《春》そのものに対して、そのタイトルとして「das Reich der Venus」(ウェヌスの治国)と書いてあります。

Werburgの《ヴィーナスの誕生》と《春》についての本も、ここにあります。
Sandro Botticellis "Geburt der Venus" und "Frühling" : eine Untersuchung über die Vorstellungen von der Antike in der italienischen Frührenaissance (1893)

3年前はどちらの本が早かったのかがよく分かりませんでした。しかし以前読めなかったHermann Ulmannの『Sandro Botticelli』の中を調べてみると、Werburgの『Sandro Botticellis "Geburt der Venus" und "Frühling"』 への参照がp54の脚注に書いてありました(ただしここではヴァールブルクの本の出版年が1892年)。これでウルマンよりヴァールブルクの方が先だと言うことが分かりました。これで以前の疑問は解決しました。

もう少しこの本を詳しく見てみます。84ページに次の文章があります。

Vasaris Worten nach zu urteilen, scheint ihm der Sinn der Darstellung bereits nicht mehr ganz klar gewesen zu sein. Erst in allerneuester Zeit ist gleichzeitig von verschiedenen Seiten die richtige Deutung gegeben worden. Sandros Bild ist eine Illustration zu den Versen Polizians in der Giostra, wo il regno di Venere 》das Reich der Venus《  geschildert wird:
(そして、ウェヌスの治国の描写のあるジョストラの第64節が引用されます。)

日本語訳はこんな感じです。内容をはっきりと断定しています。

ヴァザーリの言葉によって判断することは、表現の意味をもう完全に明らかにしないと思われています。
やっとつい最近になって、同時に別々の面から正しい解釈がもたらされました。
サンドロの絵はジョストロにおけるポリツィアーノの詩に対する一つのイラストレーションであり、
そこにはウェヌスの治国(il regno di Venere / das Reich der Venus )が描かれています。

このページにはこの部分への脚注があって、そこにA.BayesdorferとA.Venturi、A. Warburgへの参照があります。最後のWarburgは前述の「ウェヌスの治国」を描いたと結論づけた本のことであり、最初のBayesdorferの文章とは、そのヴァールブルクの《春》の冒頭でヴァザーリの記述の問題点を示すために引用されている《春》の描写の簡単な解説のことです。つまり先ほどのドイツ語の最初の文の根拠となるものです。初めて見るのが、Venturiという名前です。調べてみると、これが異なった面からもたらされた正しい解釈の、ヴァールブルクとは別のもう一つのものになります。

Nuova antologia(1892年版)に収められているVenturiが書いた論文のタイトルは「La primavera nelle arti rappresentative」で、芸術で表現されている春についての考察が書かれています。タイトルの中にprimaveraという言葉がありますが、これはボッティチェリの絵の《春》を指すものではなく、単なる季節の春を意味します。この論文のボッティチェリの《春》について考察する部分で、ヴァールブルクと同じようにこの絵がポリツィアーノの「ウェヌスの治国」が描かれていることを示しています。さらに中央の女性をシモネッタとしています。

この文書はgoogle booksの次のリンクで読むことができます。

La primavera nelle arti rappresentative
ポリツィアーノの詩を引用してのボッティチェリの作品解説の途中、全体の46ページに「il regno di Venere」という言葉が出てきます。

このように1892年にポリツィアーノの詩と絡めてこの絵が《ウェヌスの治国》を描いたものだという解釈が成立しています。それと同時に、このポリツィアーノの詩の目的から類推して、ジュリアーノ・デ・メディチとシモネッタをこの絵の中に見いだそうという解釈も行われてきたわけです。



拍手する
posted by takayan at 02:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | プリマヴェーラ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック