2007年08月14日

「ワープする宇宙」

いろいろ話題になっているようなので、買ってみた。まだ、前書きと序章しか読んでいないのだけど、ちょっとワクワクしてくる。頭のいい人のとても丁寧な文章だ。

内容は筆者リサ・ランドールが発表した5次元時空の解説書。序章の説明によると、その理論についてはもちろんだけど、そこにたどり着くまでの、時空や素粒子といった20世紀初頭からの空間をめぐる理論物理学の世界も、とても分かりやすい表現で説明していく。数式を使わずに、たとえ話を使って読者に分かりやすく伝えていく。

リサ・ランドールLisa Randallはハーバード大学の理論物理学の教授。プリンストン大学物理学部の終身在職権を持つはじめての女性教授。1999年サンドラム博士とともに「warped extra dimensions」を発表した人。

この本の英語の原題は、Warped Passages。日本でワープというと、やっぱりSFのワープ航法のワープを思い浮かべてしまうだろう。空間をねじ曲げ短絡させて光速を越えて移動する空想上の移動方法。この本のタイトルのワープは、その航法の名前の由来である空間の歪曲を示す言葉。空間が歪曲しているということはどういうことかは、詳しくは読んでみないと分からない。

他方passageは通路とかいう意味をもつ言葉だけど、リサ・ランドールが使う場合はまた別な意味になる。この本ではパッセージは、余剰次元の呼び名として使われている。次元らしく方向をイメージさせる言葉が選ばれている。この言葉が表しているものがどんなものなのかは、やっぱり、読んでみないと分からないだろう。

とにかく、「歪曲した余剰次元」が原題の意味するところとなる。もちろん、曲がりくねった通路とか、そういう意味もこのタイトルには重ねられているのかもしれない。最後まで読んでみないと分からないだろう。いや、最後まで読んでも僕に分かるかはまだ分からない。

日本では「ワープ」という言葉に歪曲したという意味を連想する人がそんなにいるかどうか疑問だ。それも「ワープした」ではなく、「ワープする」という表現が、より一層誤解させてくれる。

もちろん、分かってて狙ってるんだろうな。「歪曲した余剰次元」なら、まさに学術書としか思われないし、字義どうり訳しても何の話かさっぱり分からないし。読んでいけば、ワープする宇宙でも、内容的には間違いないなって思えるのかもしれない。


しばらくこの本を楽しもう。まとめたくなったら、書こうと思う。





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2007年08月15日

ワープする宇宙1

やっと、第一部を読み終えた。
ここには、序章から第四章までが含まれている。

第一部の内容は。次元というものは何なのか、この世界に他の次元があってもそれを感じられないのはどうしてなのか。それらに対して単純なイメージを示しながら、おおまかな解説をしていく。そして第四章で、「ひも理論」との違いや問題点を指摘しながら、現代の理論物理学がどのように形成されてきた道筋を示して、次の第二部以降へと誘う。

各章の冒頭には引用があり、四つとも歌詞からのものだ。
英語の原文を探してみた。原書からではないので、間違ってるかもしれない。

Fleetwood Mac - Go Your Own Way
You can go your own way
Go your own way

Jefferson Starship - No Way Out
No way out
None whatever

Elvis Presley - Stuck On You(日本語タイトル:本命はおまえだ)
I'm gonna stick like glue,
Stick because I'm
Stuck on you

Kraftwerk - The Model
She's a model and she's looking good


日本語訳でもだいたい分かるが、その章に関係ある言葉が使われている。本文ではタイトルが書いてなかいけれど、どれも曲のタイトルそのものがその言葉だ。ちなみに全部Youtubeにあがってる。


各章の概要をまとめてみる。

第一章は、次元とは何か、低い次元から高い次元のものを見るということはどういうことかが書かれている。

次元とはその空間内の点を表すために必要な数値の組のこと。私たちの空間の位置をあらわすためには三つの数字の組が必要にある。ただ点だけが示されればいいわけではなく、点と点の距離を測る物差しのような基準が必要になる。これはメトリック(metric、計量)と呼ばれる。同じ次元の数であっても、空間が曲がっていればメトリックが違ってくる。例えば平面と風船の表面上の点は、どちらも二次元の座標で表されるが、メトリックが違う。つまり、次元の数とメトリックによって空間は記述される。


1844年にイギリスの数学者エドウィン・A・アボットEdwin Abbott Abbottが書いた小説「Flatland」を元に話を進んでいく。注によるとこのFlatlandは日本でも翻訳、出版されたが既に絶版になっている。
Flatland - en.Wikipedia 英文による解説
Flatland - Project Gutenberg 原文

この小説は、二次元宇宙の住人が見るその世界や他の次元の世界を描いたものだ。この物語を例に取りながら、高次元の見え方を説明する。自分よりも高い次元のものを見ようとしても、直接は不可能なのだから、断面としてや射影としてしか見ることができない。ただ見えている情報を蓄積することで、高い次元を推測していくことはできる。


つづく


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posted by takayan at 22:56 | Comment(0) | TrackBack(1) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月16日

ワープする宇宙2

第二章を読んで。

この章では「ひも理論」において余剰次元が観測されない理由について説明している。

「ひも理論」というのは、あとの章で詳しく述べられると思うが、相対性理論と量子力学の両方をうまい具合に説明できる理論のようで、素粒子が振動するひもでできているという考えを基礎に置いている。この理論では余剰次元の存在が不可欠になる。余剰次元というのは、理論的にこの宇宙の空間次元としてあるべきなのに僕たちが存在を感じられない次元のこと。

現実に、僕たちは縦・横・高さの次の四つ目以降の方向を指させない。この空間が三次元だけでなく余剰次元を含めた、より数の多い次元の空間だとしたら、なぜ三次元以外の次元を見つけられないのだろうか?

その理由は、この余剰次元が「巻き上げられている」からだと説明される。だんだんと内容が難しくなっていく。数式は使わないけれど、この丁寧に言葉だけで描いている世界は、まさに日常では考えもしないような特異な世界。数式や用語をできるだけさけて、きちんとした日本語に訳されているからって、日本語が読めれば誰でも分かるなんてそんなレベルではない。

この章の最初には、「不思議の国のアリス」と「フラットランド」の物語を合わせた不思議な物語が載せられている。この世界のアリス(アシーナ)はこの巻き上げられた次元のある世界で不思議な体験をする。これを何度か読んでみると、少しはこの章で描こうとしている世界をイメージできるようになると思う。

この章では、カルツァ-クライン宇宙というのが出てくる。ポーランドの数学者カルツァTheodor Kaluzaは、アインシュタインの一般相対性理論からの帰結として1919年にもう一つの空間次元の存在、つまり余剰次元の考えを提唱した(論文の出版は1921年)。その後、スウェーデンの数学者クラインOskar Kleinがこの空間次元について取り組んで、1926年にこの次元が極めて微少な円状に巻き上がっているという考えを提出した。この次元はあらゆる所にあって、空間のどの点も微少(10の-33乗cm)な円を持っているとされる。この極小の物理量はプランク長さという。とにかくものすごく小さい。

この巻き上げられた時空をイメージするのはとても難しい。そこで喩えとして出されるのが、ホース宇宙。この本以外にもよく使われる喩えらしい。一方向に広いゴムシートでできた平面があるとする。長い方の辺の組をくっつけ丸めて、ゴムホースを作る。ゴムホースの表面は、もとのゴムシートの表面と同じ二次元世界。辺をつないで作ったので閉じている。このホース上を宇宙と考える。冒頭のアシーナが入り込んだのはこれに似た世界。

この宇宙に住む者にとって、巻き上げられた方向が極端に小さい場合は、小さい方の次元は感じることができず、自分が一次元の世界にいると考えてしまう。他の次元でも同じように考えていく。三次元空間で一つの次元が巻き上げられている場合、各点にには微少な円がある。2つの次元を巻き上げる形としてドーナツのような形が考えられるので、四次元空間で2つの次元がこのドーナツ状に巻き上げられている場合には、各点にドーナツがある。

この章には「カラビ-ヤウ多様体」という言葉も出てくる。これは「ひも理論」で使える特殊な数学的性質が定義されている六次元の図形のことらしい。詳しい説明はen.WikipediaのCalabi-Yau manifoldあたりを読むといい。さっぱり分からないけれど。

次は重力と余剰次元について。ここでもうひとつ喩えが出てくる。重力の分散をスプリンクラーでばらまかれる水の量で喩えている。このスプリンクラーでは中心からばらまかれた水が一つの円周上に均等に届く姿を思い描く。そして中心から出る水の量が同じであるが、そのばらまかれる半径が大きくなると、それぞれの点に届く水の量が減ってしまう。これは直感的に理解できる。距離が離れると各点に届く水の量が急激に減っていく。

重力の及ぼす力も、これに似たイメージで考えることができる。このときは円ではなく球面になる。重力の強さは中心点から出てくる放射状の線の数の多さで表すことができる。重力線が出てくる場所と同じ中心をもつ球面を考えると、中心に近い球面のほうがその球面を貫く密度は高くなる。この密度がその地点の重力の強さを表すと見ることができる。中心から距離が離れれば、それだけ重力は弱くなる。これは先のスプリンクラーのイメージで理解できる。

そこで、この重力はどの球面を貫こうと元々同じであり、重力線の総数は同じわけだから、各点での重力の強さはその重力線が貫いている球の表面積に反比例しているだけだとわかる。つまりこの球の表面積は球の半径の二乗に比例するわけだから、ゆえに重力は距離の二乗に反比例することがわかる。これが重力の逆二乗法則。

では、余剰次元がこれにくわわってくるとどうなるか。空間の次元が増えればより急速に距離が離れることで減少してしまう。なぜなら例えば四次元だと球体の表面積は半径の三乗になる。しかし現実の重力は逆二乗法則に従い、僕たちの空間が三次元であることを示している。もし余剰次元があるというならば、どうして逆二乗法則に従うのだろうか。

この解決もホースの比喩で説明をする。一方の端が閉じられてその中央にある針穴からホースに水が入ってきた場合を想像する。ホースに入ったばかりの時は、細い水は三次元的に広がっていく。しかしホースの壁に到達すると、水は長い次元の方向だけに進んでいく。この水の流れを重力線とみなして考える。ホースの断面をコンパクト化された余剰次元だと考える。

この余剰次元の大きさよりも小さなスケールで考えれば高次元の重力の振る舞いが測定できるかもしれないが、この大きさは極めて小さく、それより大きなスケールでは重力はコンパクトな余剰次元がはじめからなかったような振る舞いをしている。


ここまで来ると、早くも、はいそうですか、としか言えなくなる。余剰次元なんてものが始めからないから見えないのか、あるけれどこのようにものすごく小さくコンパクト化されてしまっているから見えないのか、そのことがどうやって区別できるのだろう。存在するとしても極めて小さいために観測できないことがわかっているものをどうやって知るというのだろうか。まあ、そんな疑問を抱きつつ先へと進む。


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posted by takayan at 01:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ワープする宇宙3

第3章を読んで。
ブレーンbraneについての話。

ブレーンは1995年物理学者ポルチンスキーJoseph Polchinskiによって「ひも理論」に不可欠なものとして立証される。「ひも理論」のブレーンは、粒子や力までがとらわれている。このブレーンを使うと様々なことが説明可能になる。

余剰次元が見えないのは次元が丸まっているからではなく次元が極めて小さいからである。ブレーンを使って考えると余剰次元が丸く閉じてはおらずブレーンによって境界がつくられている有限の次元となっている可能性も考えられる。

ブレーンには2つの方向がある。ブレーンに沿って伸びる方向と、ブレーンから離れていく方向。高次元世界では、ブレーンが高次元空間全体の境界になっている。この空間全体をバルクと呼ぶ。

境界をなすブレーンについて、パイプを使った比喩で説明がされる。パイプの内部には長い次元と短い2つの次元があるとする。パイプの断面を分かりやすく正方形にする。このパイプ空間を自由に動けるハエのような生き物を考える。このパイプの壁がそれぞれ二次元のプレーンである。この境界に達すると跳ね返ってくる性質がある。境界をなすブレーンは空間よりも次元数が少ない。このブレーンとは別に境界をなさないブレーンもある。これも低次元の存在であるが、このブレーンは両側にバルク空間を持っている。

そのあと有名なシャワーカーテンの水滴の比喩。カーテン上の水滴は二次元面の拘束されている。そして15パズルの比喩。このタイルも移動の方向が限定されている。これらの比喩のようにブレーン上の粒子は動き回る次元を限定されていると考えられる。

宇宙が高次元であっても、粒子や力が三次元ブレーンにとらわれているならば、三次元の宇宙にいるのと全く変わらないように感じられる。ブレーンにとらわれている力はそのブレーン上の粒子にしか影響を与えられない。ただ重力は特別で、重力はブレーンに閉じこめられているとは考えられない。ブレーンは少なくとも重力を媒介として、バルクと相互作用を果たしていると考えられる。宇宙の中には複数のブレーンワールドがあり、ブレーンワールドは孤立してはいない。全体の一部として相互作用を果たしている。

ブレーンを考えると、ありとあらゆる可能性を考えていくことができる。ただその他のブレーンワールドを観測できる可能性は低い。相互作用をしているはずの重力の力も極めて小さい。ただ他のブレーンワールドの存在の証拠を見つけ出せる可能性が全然ないというわけでもない。


ここに来るともう、まとめようにまとめられなくなってくる。というか、突然現れた「ブレーン」って一体何?という疑問に何も答えを見いだせないまま、先へと進んでいく。どうして、このブレーンに拘束されてしまうわけ?どうして重力だけが拘束されないわけ?

ブレーンが何もので、どうしてそういう性質を持っているのかということは何も分からない。先へ進んでいくと分かるのかもしれない。もっと詳しい本を手に入れて、調べてみたい。それはこの本を全部読み終わってからの話。


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ワープする宇宙4

第4章を読んで。

冒頭のアシーナとアイクとのやりとりに出てくる映画カサブランカで有名な「As Time Goes By」の忘れ去られた歌詞の原文も探してみた。
This day and age we're living in
Gives cause for apprehension
With speed and new invention
And things like fourth dimension.
Yet we get a trifle weary
With Mr. Einstein's theory.
So we must get down to earth at times
Relax relieve the tension

And no matter what the progress
Or what may yet be proved
The simple facts of life are such
They cannot be removed.
「As Time Goes By - Herman Hupfeld」もyoutubeに置いてある。もちろんこの歌詞の部分はない。

統一理論を見つけようとする態度は、単純性を求めているだけの行為ではないか。世界は複雑であり、そこまで理想化できないのではないだろうかという著者の指摘。

理論を観測結果に結びつける方法には2つある。「ひも理論」の研究者はトップダウン的で、ランドール博士のとるモデル構築という態度はボトムアップ的である。プラトン的かアリストテレス的かとも言い直せるという。

いわゆる演繹と帰納の2つの手法の違いだろう。理論物理学にこういう対立的な構図があるなんて知らなかった。

ひも理論とモデル構築のふたつの陣営はいままで対立した立場をとってきたが、最近は状況が変わりつつある。この本で扱われる余剰次元理論も、モデル構築の考え方にひも理論の着想を組み入れることでできあがっている。

次に進むための、物質の成り立ちの復習

・全ての物質は原子からなりなっている。
・原子は原子核とその周囲を回る負の電荷を持った電子からなっている。
・原子核は、正の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子という二種類の核子からなっている。

・陽子は、2つのアップクォークと1つのダウンクォークからなっている。
・中性子は、2つのダウンクォークと1つのアップクォークからなっている。
・このクォークを結びつけているのが「強い力」である。
・電子は下部構造を持たない。

・高エネルギー粒子加速器を使うと、重い素粒子の存在を観測することができる。

素粒子の物理理論「標準モデル」では素粒子に相互作用を果たせる四つの力のうち三つの力が説明される。

標準モデルの疑問点
・重い素粒子は何故存在するのか。
・四つの力以外の力はないのか。
・他の力に比べて重力はどうしてこんなに弱いのか。
・量子力学と重力はどうすれば両立できるのか。

これらの問題に答えを出そうとする理論がこの本で説明しようとする余剰次元モデル。


さあ、次からはしばらく相対性理論と量子力学からはじまっての現代物理学の解説の話。この分厚さはかなりのものでこの本の半分を占める。
章末に要点が箇条書きになっているから、わざわざここにまとめを書く必要もないだろう。

そして、理論物理学の長いまとめの部分が終わると、この本の核心へと入っていく。それらの章を使って整理された理論を踏まえての、この第一部で単純に描かれてきた余剰空間についてのより詳しい説明が待ち受けるわけだ。


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2007年08月19日

ワープする宇宙 資料

まだ読み終ってないが、いろいろ資料を探してみた。

■リサ・ランドール

まず、この人が日本で紹介されたのは「未来への提言」というNHK BSの番組。「未来への提言」の第二回目として、2006年5月21日に放送された。再放送もあったらしい。宇宙飛行士の若田光一さんがインタビュアー。(未見)

・番組情報
「未来への提言」理論物理学者 リサ・ランドール〜異次元を語る〜 - NHK情報ネットワーク

この番組を元に本にしたのが、日本放送出版協会「リサ・ランドール異次元は存在する (NHK未来への提言) 」。内容は、ランドールさんと若田さんの対談集。場所はハーバード大学の研究室。本にはその番組の場面と思われる写真や、説明のために使われただろうCGなどが白黒で載っている。

「ワープする宇宙」に比べたらそんなに難しいことは書いてないみたい。まだぱらぱらとめくった程度だけど、気になったのは、彼女が教授からもらった助言の「成功したければ質問しなさい」という言葉。理論の説明もあるけれど、彼女自身のことも話題になっている。そしてこの番組のテーマである、21世紀の道しるべを示してくれる。



リサ・ランドール異次元は存在する (NHK未来への提言)



リサ・ランドールさんは今年7月に来日していた。その模様は来週NHKで放送される予定。

・番組情報
NHK BS1 2007年 8月25日(土)午後10:10〜午後11:00(50分)
BS特集「リサ・ランドール 異次元への招待」 - NHK番組表』

このとき、茂木健一郎さんとの対談もあったようで、茂木健一郎「クオリア日記」で紹介されている。

2007/07/29 ボクがもし地球だったら - 茂木健一郎「クオリア日記」

そして、茂木さんによる書評:
『ワープする宇宙』 隠れた次元、率直に追究 - 読売新聞

そういうわけで、BS1で放送がある8月25日までには「ワープする宇宙」を読み終えたいな。


■エレガントな宇宙

「ワープする宇宙」を読みながら思い出したのが、以前NHK-BS2でやっていたひも理論を解説したアメリカ制作のとてもおもしろい科学番組。
名前を思い出せなかったがいろいろ調べてやっとわかった。

「美しき大宇宙〜統一理論への道〜」

これはこの番組で案内役で出ているグリーン教授が書いた本「エレガントな宇宙」を元にした番組で、全三話。

僕は二話目の途中から見た。とにかく閉じたひもが始終飛び交ってた。CGを多用していろんな理論を視覚的に見せてくれた。

案内役は役者かと思ったら、グリーンさん本人だった。つい最近も再放送がされたらしい。

内容はひも理論がどのようにして成立していったかというもの。「ワープする宇宙」の理解に助けが必要な人や、ひも理論そのものに興味を持った人はどうぞ。

NHK BS世界のドキュメンタリー バックナンバー
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 第1回 アインシュタインの見果てぬ夢
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 第2回 “ひも”の振動が万物をうむ
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 最終回 驚異の高次元空間

既にDVDになっている。そしてその元になった本。


美しき大宇宙~統一理論への道~


エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する


この分野の読み物は他にもいろいろあるようだけれど、中身が分からないので、ここでは紹介しない。(本やビデオのリンクを貼り付けるときの基本姿勢)


■教科書

「ワープする宇宙」はまだ読み終えていないのだけど、この数式を使わないというのもちょっともどかしさも感じている。そこで日本語で書かれたこの理論についての書かれた本がないか調べてみた。すると次の本を見つけた。専門向けの本。

大槻義彦編「現代物理最前線5」共立出版 2001
この本には、三つの論文が載っていて、その中のある「四次元を超える時空と素粒子」というのが、「ワープする宇宙」で描こうとしている同じ内容のものだと思われる。断定できないのはまだ読み上げていないから。

目次だけを抜き出すと、
『四次元を超える時空と素粒子』・・・・・坂東 昌子・中野 博章
1章 はじめに
1.1 物理学と空間の次元
1.2 スケールの話
1.3 本当に時空は四次元か?
2章 ゲージ原理―力の法則と空間の次元
2.1 力の起源とゲージ粒子
2.2 高次元における力の法則
2.3 多様な力の法則
3章 コンパクト化された余次元空間
3.1 空間のコンパクト化とKKモード
3.2 余次元からの多様な場
3.3 KKモードと有効理論
4章 素粒子の左右非対称性と余次元
4.1 四次元のカイラル構造
4.2 高次元理論はカイラルでない?
4.3 カイラル非対称性を作る
5章 ブレイン世界
5.1 弦理論と時空のコンパクト化
5.2 非摂動的な弦理論とDブレイン
5.3 ブレインワールド
6章 ドメイン壁と物質場の局在化
6.1 キンク解とドメイン壁
6.2 カイラルな物質場の局在化
6.3 オビフォルド空間上でのフェルミ場の局在化
7章 重力場の局在化
7.1 ランドール−サンドラム模型
7.2 ランドール−サンドラムの五次元時空
7.3 重力場の局在化 ― ゼロモード
7.4 重力場の局在化 ― KKモード
8章 おわりに


僕にはすぐにさらさらとここに書かれている式を理解できないのだけど、読み終わったらこちらにも挑戦してみようと思っている。


出版社のシリーズ案内ページ
共立出版株式会社 刊行中のシリーズ「現代物理最前線」



現代物理最前線〈5〉




■英語の資料

原書のページ
Warped Passages by Lisa Randall
原書の歪んだ表紙のほうが好きだ。


Lisa Randallのこの本「Warped passages」についてのインタビュー(英語)
Charlie Rose - Lisa Randall / Edward O. Wilson
内容はインタビュー番組 Charlie Rose's show。後半の人物は生物学者のエドワード.O.ウィルソン。


最後に。リサ・ランドールさんがケンブリッジで講演したときの映像。下記ページのVideoのところ。
Unification in warped extra dimensions and bulk holography
これは本書p182で出てきたケンブリッジでのひも理論会議の中での講演だと思われる。

せっかく見つけたけど、僕には駄目だ。英語での物理の講義が理解できる人はどうぞ。


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posted by takayan at 02:44 | Comment(2) | TrackBack(0) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月22日

「ワープする宇宙」読了

未だ興奮冷めやらずというところ。
中三の頃、はじめて相対性理論の解説書を読んだときの興奮を思い出した。

六百ページ超の分厚い本で、半分以上を占める理論物理学のこれまでの道筋の部分は、正直挫折しそうになった。でも最後の理論に直接関わらない理論の説明まで細かく描いていく妥協を許さない著者の態度には感服する。これは、必死にかじりついて読み進まずにはいられない。これまでの物理学の流れの部分はそれだけでも十分で、素晴らしく知的な体験をさせてもらえた。

何が書いてあったと聞かれても正確に答えることはできないけれど、理論物理学の発展を一つ一つ丁寧にたどったあとに、最後に畳み掛けてくる、著者の理論が描く想像を超える世界像に興奮しながら読み終えた。

数学的な裏付けはまだ僕には分からない。けれど少なくともこの文章で描かれているこの理論は極めて論理的に構築されていて本物の理論だと思った。読んだだけで、それが世界をちゃんと描けているかどうかは僕に分かるわけはないのだけど。

1回読んだだけでは分からないことばかりだから、何度でも読んで理解したいと思う。

あとがきは、一番最後に読むことにしている。さっき読んで「スタートレック」や「宇宙戦艦ヤマト」が話題にされているのを知った。ワープといったらやっぱりこの2つが最初に浮かぶ。監訳者の向山信治氏の簡潔な概略はとてもわかりやすく整理してくれる。でも先回りして読まなくてよかった。

さて、この「ワープした余剰次元」理論というのは、LHCによる実験結果によって、裏付けられるのだろうか。どうなるのだろうか。そしてその実験結果からまたどんな理論が生まれてくるのだろうか。この本のおかげで楽しみが増えた。


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2007年08月27日

美しき知性「リサ・ランドール博士・異次元の謎」

土曜日はBS-1であった例の番組を見た。
講演の内容を中心に伝えるとばかり思っていたが、そうではなかった。
簡単な理論の紹介。講演をしている姿。茂木さんとの対談。東大の学生たちとの研究室での対話と、その学生達との食事をしながらの会話。

理論の紹介の部分は、去年あった若田さんとの対談番組の使い回しのようだ。あの番組は見ていないが持っているその対談をまとめた本「リサ・ランドール異次元は存在する」に同じような画像が沢山出ている。短期間で番組を作る必要があったのだろうから、仕方がないのだろう。

僕は本「ワープする宇宙」を読み終えなければ番組に理解できない内容があるかもしれないと思って、急いで読み上げたのに、なんか肩すかし。あの本読んだあとだと、番組内での理論の説明は全然歯ごたえがない。

それでも、初めて見た人にはとても印象深い番組だったのかもしれない。僕も予備知識がなければきっとそうだったに違いない。

今は本屋に無ければ、簡単にネットで注文できる。本屋だと中身を確かめて買えるけれど、ネットだとそれはちょと難しい。「ワープする宇宙」の分厚さも分からないだろう。待ちに待って、いざ読んでみて、挫折する人が続出しなければいいが。


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2007年09月03日

余剰次元

「ワープする宇宙」に出てくる余剰次元のことをちょっと整理したくなったので、書いてみる。あらかじめ断っておくけど、僕の立場は科学好きの単なる読者なので誤解もあるかもしれない。

ネット上の解説文だけを読んで、その本が何を伝えているのかを判断している人もいるだろう。でもそれだけの情報だと、ランドール博士が最初に5次元時空を提唱したと誤解している人がいるんじゃないだろうかと思ってしまった。4の次の5だから、単純にアインシュタインの4次元時空を越える5次元時空の理論が出たと思った人もいるかもしれない。


それにNHKが彼女の理論が紹介するとき「異次元」という言葉をやたらに多用してしまっていることにも僕は違和感を覚える。意図的なキャッチフレーズなんだろう。異次元、異次元世界という言葉は、日本ではオカルトやSFで「異世界」という意味で使われることの多い言葉であるから、科学者の考えを指す言葉としては避けるべき言葉であるはずだ。この言葉に新たな意味を持たせて、彼女の説を表すキーワードにしたかったのならば、明確な定義をはっきりと示し、それを繰り返して誤解が生じないような配慮をすべきであった。番組では、表面的な紹介だけで、余剰次元の歴史は何も語られず、ランドール博士の漠然とした偉業だけが語られている。本来彼女の業績として強調すべきことは「歪曲した余剰次元」のアイデアによって、シンプルに、他の力に比べて重力が弱いことや、次元の見えない理由を説明できるモデルを作ったことである。

以下の文章は、ランドール博士の「ワープする宇宙」そのものを元にしている。他からの補足もちょっとある。

まず、私たちが日常接している次元の数は三つである。私たちは日常においてこれ以外の空間次元を見つけられない。また時間を次元の一つとしてこの空間次元と合わせて考えたものを時空と呼ぶ。時間は時空において次元の一つとして扱われるが、あくまでも時間は時間であり、空間次元とは区別される。この本の主役の「余剰次元」とは知覚できない空間次元のこと。理論上はそれがあった方が、いろんなことが説明できて都合がいいんだけど、どうしてもそれを見つけることはできない空間次元。

この本では五次元時空、つまり日常接する《空間の三次元》と《次元としての時間》に《一つの余剰次元》を加えた世界が語られる。けれど余剰次元が一つしかないと断言しているわけでもない。第一章39ページに次のような文章がある。
本書では、余剰次元の数がいくつになろうと、その可能性を柔軟な姿勢で探っていきたいと思う。この宇宙が実際にいくつの次元を含んでいるかを断言するのはまだ早い。これから説明する余剰次元についての考えの多くは、余剰次元の数がいくつであっても適用できるのだ。ごくたまに、そうでないケースも出てくるが、その場合はそれと分かるように明記しよう。
この本のタイトル「ワープする宇宙」も妙な訳だと以前書いたが、副題の「5次元時空の謎を解く」というのも、この引用からすると五次元に限定していると誤解しかねないから厳密には的確ではない。原書の副題は「Unraveling the Mysteries of the Universe's Hidden Dimensions」。「五次元時空」に対応する語は本来は「宇宙の隠された次元」という語になっていて、それもちゃんと次元dimensionが複数形で表されている。

第二章にすすむと、はっきりと「余剰次元」という考えが既に1919年に提出されていたことが書かれている。数学者カルツァが四番目の空間次元を導入し、その目に見えない次元の形状を数学者クラインが微少な円に巻き上げられているとした。この本では巻き上げられた四番目の空間次元をもった宇宙を指して「カルツァ・クライン宇宙」という言葉が使われる。このように次元を極めて微少にすることをコンパクト化という。ちなみに、この本では紹介されてはいないが、このカルツァ・クライン理論は、一般相対性理論から重力と電磁気学の両方を扱えるようにするための理論だ。

このように余剰次元という考え方はおよそ90年前からある決して新しいとは言えない。

この本のいたるところで、ひも理論、超ひも理論の話が出てくる。「ひも理論」は量子力学と一般相対性理論を組み入れられるとされる理論で、宇宙の粒子が粒ではなく「ひも」からなっているとする理論である。「超」は超対称性という特徴を持っているという意味である(それが何かはこの投稿では説明しない)。超ひも理論について詳しく書かれているのは、第14章。シュワルツとグリーンが算出した「超ひも理論」では次元数は10次元という考えが出される(1984年)。つまり超ひも理論では余剰次元が6つの空間次元になる(391ページ)。

この余剰次元も現実に合わせて見えなくする工夫が必要になるのだが、当初これを「弱い力」(素粒子の間にはたらく力)の性質を保ったままコンパクト化する方法が見つからなかった。しかしすぐに「カラビ-ヤウ多様体」という特殊な形にコンパクト化すればいいことが分かった。

「超ひも理論」以前の「ひも理論」においても26次元など大きな次元数が考えられていた。また現在も、複数の系統に発展した「ひも理論」をまとめる「M理論」において次元数は11必要になっている。

このように「ひも理論」が現れ、ひも理論とともに余剰次元の存在を多くの物理学者が理論の上において認めるようになっていった。

ひも理論の研究が進むと、ブレーンという高次元の膜のような物体も理論上欠かせないことが分かってくる。BSの番組でバスルームのカーテンで喩えられていたものだ。閉じていないひもの両端がブレーンに接し拘束されていると考えられる。その後、特定の粒子や力が全て拘束されているブレーンというものも考え出され、それはブレーンワールドと呼ばれるようになる。

第16章440ページに、2つのブレーンを並べて空間を挟む方法が紹介されている。これはホジャヴァ-ウィッテン理論によって使われるものだ。2つのブレーンには9つの空間次元がある。11番目の次元をこの2つのブレーンが挟み込んでいる。また2つのブレーンに別れて粒子や力が拘束されている。ブレーンには9つの空間次元があるため、先のカラビ-ヤウ多様体によって6次元を巻き上げコンパクト化する。

ブレーンを使った「大きな余剰次元」という考えも19章で紹介される。これは提唱者三人の頭文字を取ってADDモデルと呼ばれる。これは重力が弱いことを説明しようとするモデルである。一枚のブレーンを使う。これに標準モデルの粒子が閉じこめられている(巻末の用語解説の言葉を借りると、標準モデルというのは、既知の全ての素粒子と重力以外の力を、その相互作用とともに記述した有効理論のこと)。バルクに重力だけがある。余剰次元は円筒状に数ミリ程度に巻き上げられていて、その中心にブレーンがある。

このように九十年代後半、様々なブレーンワールドを使ったモデルが提出され、そして、いよいよ1999年ランドール博士とサンドラム博士の「歪曲した余剰次元」という考え方が出てくる。これには二種類ある。

RS1と呼ばれる最初のものは、二枚のブレーンによって余剰次元を挟み込む。第20章で説明されている。同じように二枚のブレーンで挟む上記HWモデルと違って、見えなくしなくてはならない余剰次元はブレーンにではなく、バルクにある。ブレーンはともに四次元で、一方を重力ブレーン、他方をウィークブレーンと呼ぶ。ウィークブレーンに標準モデルの粒子がある。重力はブレーンには束縛されていない。この2つのブレーンの間に挟まれているのが有限の長さの余剰次元である。このモデルの最大の特徴が、ブレーンとバルクにあるエネルギーにより、その間に挟まれた空間が歪曲することである。この歪曲により、余剰次元が見えないこと、重力が弱いことが説明される。

もう一つの理論はRS2と呼ばれ、第22章で説明される。これは非常に小さく巻き上げられた有限の広さの余剰次元でもなく、また「大きな余剰次元」モデルの数ミリ大に巻き上げられた有限の余剰次元でもない。RS1モデルで使われた二枚のブレーンに挟まれた有限の長さをもった余剰次元とも違う。驚くことに見えないはずの余剰次元は無限の大きさを持っている。このシナリオは一枚の重力ブレーンだけを使い、この重力ブレーンに全ての標準モデルの粒子が閉じこめられているとする。このブレーンから離れていく方向に広がる余剰次元は、無限の大きさを持っているというのに、時空の歪曲により、重力が重力ブレーンの近辺に局所集中し、次元が隠されてしまう。重力の法則を含め物理法則が4次元時空のものと見分けが付かなくなってしまう。

まとめると以上のようになる。


余剰次元についてはこの本の中だけでもいくつも出てきていて詳しく説明されている。それらの影響の元にランドール博士のモデルが出てきたことがはっきりと読み取れる。こう並べると、逆にいいとこ取りで組み上げたように見えるかもしれない。しかしそれも間違っている。新しい理論というのは、先人の理論の影響を受け問題点を修正することでうまれていくものだ。それにブレーンを使って余剰次元を歪曲させるという点だけでも十分にこのモデルは独創的である。とてもシンプルに物事を説明できる素晴らしい理論である。

最後に、間違えてはいけないのは、このモデルはいくつもある宇宙に関する理論の一つに過ぎないということだ。この理論が一番もっともらしく見えるのは、研究者本人が書いているからに他ならない。このモデルが来年のLHCを使った実験でうまく実証できるかもしれないし、できないかもしれない。それは実験してみないと分からない。だからこそワクワクして待っている。それからLHCはこれを証明するためだけに何千億円もかけて作られるわけではない。LHCはより本質的な標準モデルの検証のために作られている。


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2007年09月07日

「ワープする宇宙」と力の統一

科学の啓蒙書を読んだ程度の知識でこういう難しい話を書くのはおこがましいけど、この本を読んでとても知的におもしろかったんで、分かったことを整理せずにはいられない。とりあえず高校生の頃の自分だったら分かるだろうという分かりやすさで書いてみた。僕のブログはそういうことを書いてきたところだし。もちろん理解力の足りないところは否めないので、間違いもきっとあるだろう。

理論物理学の論文を読みこなせるなら、どんなに素晴らしいだろう。万が一読めるようになったときのためにも論文へのリンクも貼り付けておこう。

jp.arXiv.org ... いろんな論文が置いてあるところの日本のミラーサイト。


■歪曲した余剰次元理論

先の投稿では、歪曲した余剰次元の理論によって重力が弱いことを説明できると書いていたが、もう少し専門的な用語を使うと、これは階層性問題の解決と言う。だからより正式な表現をすると、歪曲した余剰次元理論は階層性問題を解決する理論ということになる。階層性問題については第12章まるごとが階層性問題の解説になっている。巻末の用語集では「階層性問題・・・重力がなぜ弱いかという問題。別の言い方をすれば、重力の強度を決めるプランクスケール質量は、なぜ弱い力に関わるウィークスケール質量より16桁も大きいのかという問題。」とある。

RS1モデルについて書かれた論文はたぶん次のリンク
A Large Mass Hierarchy from a Small Extra Dimension(Lisa Randall, Raman Sundrum)

この論文の概要には、最初の行にはっきりと次のように書いてある。「
We propose a new higher-dimensional mechanism for solving the Hierarchy Problem. 」

ちなみに、RS2モデルについて書かれた論文はたぶん次のリンク
An Alternative to Compactification(Lisa Randall, Raman Sundrum)

実は初期のRS1には問題があって、このことは第20章の「さらなる発展」の節で触れている。これは階層性問題の解決が成り立たなくなるような重大な問題だった。この欠点に対してゴールドバーグとワイズが、二枚のブレーンの距離を適切に調整し、安定化させる仕組みを作ることで解決した。この問題の解決については別の本「リサ・ランドール 異次元は存在する」の巻末にある解説「現代物理学の謎とリサ・ランドール」が図入りで分かりやすい。これは「ワープする宇宙」の監訳者の向山信治さんによるもので、この文章は現時点で一番分かりやすいこの理論の解説文だと思う。この番組は見たから読まなくてもいいやと思っている人にも、この部分は一読の価値はある。

この安定化の理論は、おそらく次の論文だろう。
Modulus Stabilization with Bulk Fields(Walter D. Goldberger, Mark B. Wise)

■力の統一

歪曲した余剰次元理論における力の統一についてまとめる前に、物理学における力の統一とは何かを簡単に書くと、

自然界には四つの力がある。重力と電磁気力と、強い力と弱い力。
重力はニュートンでおなじみの僕たちが常に意識していなければならない力。地球は僕たちを引っ張ってくれている。太陽も地球をいつまでも捕まえていてくれる。電磁気力も日常生活でいつもお世話になっている力。磁石や電気の力。この重力と電磁気力の2つの力の存在は簡単に受け入れられる。

でも残りの2つの力は日常生活で直接実感することはない。それでもこれがないと世界が成り立たない重要な力。弱い力は、中性子がベータ崩壊して陽子に変わるときなどにはたらく力。強い力は陽子の構成要素であるクォーク同志を結びつけたりする力。この2つの力がどれくらい重要でどのような性質を持っているかは、第7章の標準モデルの説明のところで詳しく述べられている。

この四つの力を、統一した理論で記述できるのではないかという発想は昔からあるのだけれど、これはまだ解決していない。現時点で、電磁気力と弱い力は、電弱理論と呼ばれる理論でひとつにまとめることができることが分かっている。現在はここまで。それに強い力を加えたものを大統一理論GUTと呼び、超ひも理論などでこれが解決できるのではないかと研究されている。

このGUTを実現させるために、一番有力だとされているのが、超対称性理論。この理論ではボソンとフェルミオンを入れ替える対称性を持っている。超対称性については第13章で扱っている。この超対称性を取り入れた標準モデルだと、階層性問題を解決でき、また重力以外の三つの力を統一できる。ただ、超対称性が正しい場合に見つかっていなければならない粒子が、今の段階でまだ見つかっていない。加速器での発見待ち。


■歪曲した余剰次元理論と力の統一

超対称性を利用しなくとも階層性問題を解決できる歪曲した余剰次元理論。この理論でも力の統一を記述できるのではないかという話。この話題について述べているのは、532ページの節「歪曲した幾何と力の統一」とその直前の数行。

ランドール博士は「力の統一という考えが正しいかどうかは、まだはっきりわかっていないのだ。」と力の統一理論が存在するかについては慎重な立場をとっているようだ。これは「モデル構築者」の立場としては真っ当な見解だと思われる。108ページには次のような文章がある。「統一理論を山の頂点とするなら、モデル構築の研究者は、麓から山頂にいたる道を見つけようとしている開拓者のようなものだ。既存の物理理論からなる固い地盤から出発して、最後に新しいアイデアを全て統合できればいい。モデル構築の研究者もひも理論の魅力は認めているし、ひも理論が最終的に正しい可能性もありうると思っているが、いざ頂点に立ったときにどんな理論が見つかるかを、ひも理論の研究者のように最初から確信してはいないのである。」。それでもこの節では、超対称性理論によって重力以外の三つの力を表す三本の線が一点で交わる事実は何か重要なものの前触れかもしれないと思わせると、あっさり捨てるべきではないとも書いてある。

次のように歪曲した余剰次元の理論を発展させて、力の統一に関する理論が出されたことが紹介される。

「アレックス・ポマロールは力の統一が歪曲した幾何の中でも起こりうることを確認した」とある。これは次の論文のことだろう。
Grand Unified Theories without the Desert(Alex Pomarol)

これはランドール-サンドラム(RS)モデルを元にしているが、ゲージボソンがバルク上にある点でオリジナルのそれとは違っている。つまり四つの力を伝える粒子全てがバルクにある。またこの理論は超対称性を前提としている。このシナリオを使うことで力の統一を説明している。

これを踏まえて、ランドール博士は指導学生だったマシュー・シュワルツと、歪曲した余剰次元を使っての、力の統一と階層性問題の解決を両立した理論を提出した。ただしこれもオリジナルのRS1モデルではない。彼らはヒッグス粒子がウィークブレーン上で、クォークとレプトンとゲージボソンがバルクにあった場合、力の統一と階層性問題の解決の両方ができることを示した。

おそらくこの2つの論文。
Quantum Field Theory and Unification in AdS5(Lisa Randall, Matthew D. Schwartz)
Unification and the Hierarchy from AdS5(Lisa Randall, Matthew D. Schwartz)

とにかく工夫次第でブレーンと歪曲した余剰次元を組み合わせるといろんなことが説明できるらしいのは分かった。ところどころ「!」を使って強調はしているけれど、理論物理学の大きなテーマにしてはこの本では、あっさりとした扱いに思えた。


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posted by takayan at 00:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする