2006年07月23日

ETV特集「ある人間(アイヌ)からの問いかけ」

今日は昨日録画していた番組を見た。

アイヌの萱野茂さんの生涯の活動をまとめた番組。
「ETV特集 ある人間(アイヌ)からの問いかけ 〜萱野茂のメッセージ〜」

この番組を見て胸がいっぱいになった。

萱野氏はアイヌ初の参議院議員になったことがある人なので、知っている人もいると思う。僕もそれだけ知っていた。名前はしっかり覚えていなかったけど、今年亡くなられたことは知っていたから、きっとこの人だろうと思って、見ようと決めていた。

番組ページ:
ETV特集 あるアイヌからの問いかけ

タイトル中のアイヌは人間という漢字にふりがなとして書かれている。アイヌという言葉はアイヌ語で人間という意味をもっている。

この人のNHKの番組などで放送された映像などと、彼が残したものの現在の映像をあわせて、生涯の活動の紹介である。
三部構成。第一部『奪われた母なる言葉』は同化政策によって言葉を奪われてきた民族の歴史と、言語研究家としての彼の活動を、第二部『「単一民族国家」の中で』では、北海道の先住民族としてのほこりをかけて闘った記録を、そして第三部『北海道旧土人保護法』は、屈辱的な法律を破棄し新しい法律を作るために国会議員をめざし、そして尽力した日々を扱っている。

全体を通して、彼の優しい語り口と、アイヌ語の意味は分からないけれど懐かしいような独特の響きがとてもよかった。

1959年NHKで放送された番組の映像が流れ、当時のアイヌの人々の生活が映し出された。この中で34才当時の萱野さんの活動の様子も紹介されている。当時出たばかりの大きなテープレコーダを持って、老人たちのアイヌ語を記録している萱野さん。この録音の総時間は700時間にのぼるそうだ。この実現のための莫大な資金を稼ぐため、仕方なく観光地での仕事していて出会ったのが、アイヌ語研究で有名なあの金田一京介。彼の仕事を手伝うことになる。1968年頃の金田一京助のインタビュー映像が残っていて、萱野さんと出会えたことをほんとにうれしそうに話す姿がとても印象に残った。こういう出会いは素晴らしいなと思う。

この番組で出てきた彼の業績を書きだしてみると、

・50年かけて集めてきた民具などを集めた資料館の設立
・子どもたちにアイヌ語を受け継いでもらうためのアイヌ語塾の開講
・その後大人たち向けのアイヌ語教室も開講
・老人でも使えるようカタカナで書かれたアイヌ語辞典「萱野茂のアイヌ語辞典」の出版
・二風谷(にぶたに)ダム建設問題での裁判で、ダムは存続されるが、「アイヌは北海道の先住民族であるという言葉」を勝ち取る。
・アイヌ初の参議院議員に当選(比例繰り上げ)
・参議院内閣委員会でアイヌ語での発言を行う。議事録にはカタカナで書かれたアイヌ語が残っている。
・侮蔑的な言葉の入った北海道旧土人保護法の廃止、アイヌ文化振興法の制定に尽力。
・アイヌ語を交えた放送をするFM局の開局。

本当に頭が下がる。純粋に民族の誇りを取り戻すために、費やしてきた人生だと思う。はじめは差別によって自分自身でもアイヌであることに誇りを持てなくなっていたのだけれど、アイヌ語の研究に関わることで民族としての誇りに目覚める。それが自分だけではなく、周りの人々、そして日本の法律さえも変えていく力になっていく。

ちょっと番組名が目に止まって録画してみたのだけど、見て良かった。


posted by takayan at 23:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする