2006年08月18日

「ドレスデン大空襲」の視聴記録

「ドレスデン大空襲」を見たまとめ。
以前この番組があることの情報をこのブログで書いたら(ドレスデン大空襲)、意外に検索エンジンで、そのページを見つけてくれる方が多いので、折角ですので視聴したまとめと資料を書いておきます。

番組情報:
 ドレスデン大空襲 Das Drama von Dresden
 製作ブロードビューTV(ドイツ2005年)
 国際エミー賞受賞作品


それから、今日再放送があるようです。

 BS世界のドキュメンタリー「ドレスデン大空襲」- NHK 番組表
 チャンネル :BS1
 放送日 :2006年 8月18日(金)
 放送時間 :午後11:10〜午後11:55(45分)



この番組は前編と後編に別れていて、前編は、ドレスデンの紹介と、第一波、第二波攻撃の様子、後編は、炎に包まれた街を逃げまどう人々の様子と第三波攻撃の様子が描かれています。

爆撃の対象となったドレスデンは、芸術的な建物があるとても美しいとドイツ東部の都市です。
エルベ河畔のフィレンツェとも呼ばれていました。 フィレンツェというのは、有名なイタリアの花の都ですね。

ドレスデン - Wikipedia

この番組では、この空襲の関係者が証言をしている映像と、その言葉の再現映像、そして貴重な当時の写真や映像を交えて構成されています。

証言しているのは様々な人たちです。一人一人がカメラの前で一人きりで証言していきます。看護師、負傷して病院にいた兵士、幼い弟と二人きりでドレスデンに来たばかりの少女、サーカスの団長、明日にでも強制収容所に連れて行かれるユダヤ人、この日に生まれた女性本人、目の不自由な両親と暮らしていた少女などなど、そこにはそれぞれの悲劇があり、彼らは彼らの一生の中で決して忘れることができない出来事を語っていきます。またカメラの前で証言している人々の中には、実際爆弾を投下した兵士達もいます。この様々な証言が断片的に映され、当時の映像や、再現映像が挿入され、当時の時間を追って再構成されていきます。爆弾を落とす側と落とされる側の発言が交互に映されていくと、なんとも言えない気持ちになります。

ドレスデンがどうして空襲の対象となったのかですが、その理由はソ連がドイツに進撃するのを連合国側が助けるため、前線近くの民間人を混乱に陥れるのがねらいと、この番組では説明されています。1945年2月上旬におこなわれた有名なヤルタ会談で、ドレスデンを含むドイツの都市を空爆することをイギリス首相チャーチルから提案がなされ、それをアメリカ合衆国ルーズベルト大統領、ソ連の指導者ヨシフ・スターリンが賛同する形で決定されたとありました。この爆撃の指揮官は、ブッチャー(殺し屋)ハリスのあだなをもつアーサー・ハリスです。民間人を狙ったドイツへの絨毯爆撃は、この軍人の指揮下で行われました。

番組の内容は書ききれないくらいのものです。最小限にまとめると: 空襲前のドレスデンの様子。1945年2月13日の夜の第一波の空襲。そして消火活動を妨げた時限発火爆弾。第一波の二倍の第二波空襲。黄燐が使用された疑いのある焼夷弾。街を覆う巨大な炎が作り出す火災旋風。旋風に飲み込まれないように地上を逃げまどう人々。地下室に閉じ込められた人々が地上を求めてさまよう様子。丸太のように焼けた多くの死体。翌日の昼間に行われたアメリカ軍による第三波。機銃掃射の証言。くずれ落ちる聖母教会。60年ぶりに再建された聖母教会。そして和解。

このドキュメンタリーでは、当事者の証言の映像と、その証言の内容を再現した映像を積み重ねることで、たんたんと非情な爆弾や焼夷弾の下にいた人々の様子を伝えています。悲劇的なドラマも語られますが、再現の映像そのものは感情的ではありません。感情を表すのはあくまでも被災者本人であり、その感情も怒りではなく、悲しみでした。

最後、このような出来事が二度と起きてほしくないと願ってきた被災者の女性が、世界の現状に憤りを覚えていると嘆く言葉で終わります。この悲惨な証言を見た最後に、この世界に絶望した言葉は心に重くのしかかりました。


最後の和解の映像が示すように、この番組は当時の連合軍の非道を告発するドキュメンタリーではなく、戦争、そして特に民間人への無差別爆撃がいかに悲惨なものであるのかを伝えることを主題にしようとしているドキュメンタリーでした。だからこそ、ドイツという国が訴える戦争被害のドキュメンタリーであるにもかかわらず、高く評価されたのだと思います。



参考リンク

ドレスデン爆撃 - Wikipedia

放送した「ZDF」の番組紹介ページ(ドイツ語)

製作の「BROADVIEW TV」の番組紹介ページ(ドイツ語)

[DVD]Das Drama von Dresden - Amazon.de(ドイツ語)

ハイビジョン特集 よみがえった聖母教会・・・以前放送されたドキュメンタリー(未見)

ハンブルグ在住の人フンメルさんのブログ「ドイツ音楽紀行」の以下のページ

ドレスデン大空襲と聖母教会

ドレスデン大空襲へのレクイエム


posted by takayan at 21:05 | Comment(2) | TrackBack(1) | ドキュメンタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新グレートジャーニー

先日フジテレビで放送された「新グレートジャーニー」のこと。

 土曜プレミアム 特別企画
 「新グレートジャーニー 日本人の来た道」
 フジテレビ 2006年8月12日 21時〜23時09分放送


以前の「グレートジャーニー」は、アフリカにいた人類の祖先たちが最も遠い南アメリカの南端まで広がった道を、南アメリカからの逆方向から、自転車やカヤックといった人力だけで旅だった。

今回の「新グレートジャーニー」は、日本人の祖先たちが日本列島にたどり着いたとされるルートをたどる。今度は逆方向にさかのぼるのではなく、日本がゴールの旅になる。

この「新グレートジャーニー」では、関野吉晴氏は、三つのルートの旅をする。今回放送された第一弾はモンゴルを出発点としてアムール川をくだり樺太を通って北海道にたどり着く「北方ルート」。

第2弾は「南方ルート」として朝鮮半島を経由して九州北部へいたるルート。現在岡野氏はこの旅の途中らしい。そして第3弾として、南西諸島を通って九州南部にたどり着く「海洋ルート」を計画している。



こういう人類史とか大好き。それに昔からこういう世界の紀行番組も大好きなので、以前の「グレートジャーニー」も楽しみに見ていた。そして今回の「日本人が来た道」というテーマだけでもとても興味深かった。

モンゴル人は、最近相撲でも見かけるけど、やっぱり日本人に似てる。旅の途中では少数民族が出てくるけど、やはりこの人たちも日本人にどこか似ている。中国や朝鮮半島の人よりも親近感を持ってしまうのはなぜだろうというくらい。

樺太(サハリン)は1945年ソ連が侵攻するまでは日本の領土だったので、樺太の旅では戦争の傷跡が紹介される。日本人をテーマにすれば、このような面を描くのは当然といえば当然だろう。樺太に取り残された朝鮮人のことはあまり報道されていないので知らない人もいると思う。この「日本人の来た道」というタイトルも二重の意味が込められているんだなあと思える。

新グレートジャーニー 日本人の来た道 - フジテレビ ... 公式サイト。とても詳しくまとめられてる。表現が放送とはちょっと違ってた。


本の紹介。この番組で使われている「グレートジャーニー」という言葉は、上記のページで考古学者ブライアン・M・フェイガンの使った言葉として紹介されている。

このフェイガンの本は以前読んだことがある。日本でのタイトルは「アメリカの起源―人類の遥かな旅路」。関連があるとは知らずに手にした。読んでみると内容がまさにそうだった。この本の原書名が「The Great Journey: The Peopling of Ancient America」だ。この本を読んでから環北太平洋の人々のことに興味を持った。英語版は2004年に内容が少し更新されているらしい。





posted by takayan at 01:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする