2006年08月25日

惑星の定義

前回の投稿に書いたように、冥王星は、惑星から、dwarf planet(ドワーフプラネット)に降格になった。そこで惑星の定義について、もう少し詳しく調べてみた。

「dwarf planet」は正式な訳語はまだはっきり分からないが、おそらく「矮惑星(わいわくせい)」と呼ばれるだろう。


◆惑星の定義についての資料となるページ

IAUの公式ニュース(英語)このページに決議の内容が英語で公開されている。議決されたときの様子や、結果決まった新しい太陽系の星々を並べたキレイな画像も置いてある。壇上にディズニーのプルートの人形が置かれている写真もある。

・日本で一番、天文関係で信頼していい情報を得たいのならば、国立天文台「惑星」の定義についてのページがわかりやすい。
※ここでは、いまのところ「dwarf planet」を日本語には訳さずdwarf planetとそのまま表記している。




さて、今回の会議で、太陽系の天体は「惑星」planets、dwarf planets、Small Solar-System Bodiesの三つに区分されることが決められた。上記IAUのリンクにある該当部分の英語原文を抜き出してみる。


The IAU therefore resolves that "planets" and other bodies in our Solar System be defined into three distinct categories in the following way:

(1) A "planet"*1 is a celestial body that (a) is in orbit around the Sun, (b) has sufficient mass for its self-gravity to overcome rigid body forces so that it assumes a hydrostatic equilibrium (nearly round) shape, and (c) has cleared the neighbourhood around its orbit.

(2) A "dwarf planet" is a celestial body that (a) is in orbit around the Sun, (b) has sufficient mass for its self-gravity to overcome rigid body forces so that it assumes a hydrostatic equilibrium (nearly round) shape*2 , (c) has not cleared the neighbourhood around its orbit, and (d) is not a satellite.

(3) All other objects*3 except satellites orbiting the Sun shall be referred to collectively as "Small Solar-System Bodies".

*1 The eight planets are: Mercury, Venus, Earth, Mars, Jupiter, Saturn, Uranus, and Neptune.
*2 An IAU process will be established to assign borderline objects into either dwarf planet and other categories.
*3 These currently include most of the Solar System asteroids, most Trans-Neptunian Objects (TNOs), comets, and other small bodies.



翻訳するのが大変だし、不正確な翻訳をしてもいけないので、意味を知りたい人は国立天文台による日本語訳「国立天文台 アストロ・トピックス (233)(速報)太陽系の惑星の定義確定 」を、どうぞ!

表現がわかりにくいのは仕方がない。clearing the neighbourhood (Wikipedia)という言葉も、用語としての意味は難しい。国立天文台長の談話映像のテキストが、惑星の定義についての一番確かな、現在公開されている日本語の解説のようだ。

これらより、条件cのclearing the neighbourhood「他を掃き散らした」の意味を考えてみると、天体が軌道を通る様子をほうきでスーッと掃くような姿に、軌道にある小さな物体のほうを石ころに喩え、それがほうきにくっついたり、ほうきにはじき飛ばされたりして、ほうきの軌跡がきれいになった状態のイメージで考えればいいのかな。このとき、ほうきにくっつくという比喩は、物体が重力に引かれていっしょになることを表している。条件Cを満たすには、小さい天体ではだめで、それなりに「掃き散らす」だけの大きさが必要になる。

惑星の定義をとても簡単な表現にすると、条件a「太陽の周りを回る」、条件b「自分の重力で球形をしている」、条件cが「(掃き散らして)軌道上に他の天体がない」といったところになるだろう。

一方、矮惑星の定義は、条件aとbは同じだが、条件cが否定文になり「(掃き散らせなくて)軌道上に他の天体がある」、そして条件dとして「衛星ではない」が追加される。
(疑問 矮惑星の衛星も、条件dに触れるのか?)

冥王星は惑星の条件Cを満たさないので惑星ではなく、また衛星でもないので、矮惑星となる。

今回のIAUの会議では、惑星が12個に増えるのではないかと言われたときに出てきたセレスと2003UB313も、矮惑星の分類に含まれることが決まった。ただこのとき惑星の候補となった冥王星の衛星カロンは現時点では矮惑星には含まれていない。矮惑星は今回決まった冥王星、セレス、2003UB313のの3つだけでなく、今後IAUが追加していくことになっている。現時点でも十数個が候補に挙がっているそうだ。


ちなみに、dwarf(ドワーフ)は、指輪物語のギムリや、白雪姫に七人で出てくるような小人の妖精のこと。天文学の用語では、昔からこの単語は小さな星を表すためにつけられてきた。矮星(わいせい) dwarf star、白色矮星 white dwarf赤色矮星 red dwarf矮小銀河 dwarf galaxy(いずれもウィキペディアへのリンク)

矮惑星ではなく、「矮小惑星」と訳したニュースもあったが、すでにある日本語の「小惑星」という用語との関連から、矮惑星と訳した方が誤解がないように思う。どちらにしても、あとで公式な訳語も定義されるだろう。


posted by takayan at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 冥王星 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする