2006年08月29日

「軌道上で圧倒的に大きい天体」?

しつこく惑星問題。

惑星の定義の第三条件を、ニュースによっては「軌道上で圧倒的に大きい天体」と表現しているところがある。というか、ブログなどで引用されている定義は圧倒的にこちらの方が多い。あまりに多すぎで、国立天文台の翻訳由来の定義を見つけ出すこともできないくらい。

おそらく日本人の大半は、惑星の定義で一番重要な第三項を「軌道上で圧倒的に大きい」で覚えてしまっただろう。結果的に間違ってはないとは思うのだけど、この言葉はどこから来たのだろうと不思議に思った。

このブログで「惑星の定義」(2006/8/25)の投稿をするときも、この表現を引用しようかと思ったが、この言葉の情報源を見つけることができなかったのであきらめた。この「圧倒的」という訳は、IAUの決議の英文をあたっても、その日本語訳の国立天文台の翻訳を見ても、見つけることができなかった。この「圧倒的」という日本語による第三条件の出所はいったいなんなんだろうか。

結論から言うと、分からない。

この「軌道上で圧倒的に大きい天体」という言葉は、2006年8月23日のこの提案が出されるらしいという記事の頃から使われている。今でも生き残っている古いページはここだろう。
太陽系惑星:冥王星除外…9→8に 天文学連合定義案修正−科学:MSN毎日インタラクティブ


第三条件の該当する原文は下の文以外にない。まともな文の形にすると。
A planet is a celestial body that has cleared the neighbourhood around its orbit.

この文章の訳しかたの問題なのだろうか?用語として訳そうとしなかったとか。でも英英辞書で単語の別な意味も調べても分からなかった。どこかネット上の探せなかったところに「圧倒的」という解説の原文があるのだろうか?

"clearing the neighbourhood"の解説としては、Wikipediaのclearing the neighbourhoodが、おそらくもっとも詳しい。
ここには、第三条件の根拠としている数値上の冥王星と惑星の違いの資料も引用されている。


とにかく、「掃き散らす」という言葉を使った惑星の定義だとわかりにくいので、なるべくはやく小学生にもわかりやすい惑星の定義をよろしく願います。


★追記2006年8月29日10:51
IAUによる惑星の定義の日本語訳が掲載されている国立天文台 アストロ・トピックス (233)(速報)太陽系の惑星の定義確定の第三条件の文章の中に「それだけが際だって目立つようになった」という言葉がある。これを含めた長い言葉「他の天体を掃き散らしてしまいそれだけが際だって目立つようになった」が、用語としての"clearing the neighbourhood"の日本語の訳となるわけだ。よく考えてみると、もしかすると、この部分が「圧倒的」という言葉と関係があるのかもしれない。わからないけど。
こういう定義の言葉は記者が勝手に変えてはいけないことだと思うから、誰か専門家の言葉として「圧倒的」の言葉が使われた根拠があるんだろうけど、やっぱり分からない。

yahooのブログ検索で「掃き散らす」で検索すると、僕のように定義のことについて書いてあるブログが見つかる。
冥王星を蟄居させるな(ぐるぐる堂日録@blog)
ここを見ると、BBC NEWSで原文をちょっとやさしくしたような定義が載せられていたのが分かった。
Pluto loses status as a planet(BBC NEWS 24 Aug 06)

The scientists agreed that for a celestial body to qualify as a planet:
it must be in orbit around the Sun
it must be large enough that it takes on a nearly round shape
it has cleared its orbit of other objects

この英文も求めているものではなかったけど。


posted by takayan at 01:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 冥王星 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする