ももこと鈴村が寝室で、桜子と達彦のこと何とかしてやれないものかと相談をしている。戦場で何があったか分かれば何とかなるかもしれないと、鈴村が言う。
翌日。鈴村が山長に向かう。達彦は、いつもの山長の敷地内の腰掛けに座っている。いつもここにいるが、家の中にいると戦場の記憶がよみがえってしまうのでいられないのだろう。鈴村は挨拶し、自分は杏子の夫で、達彦のいた部隊と漢江ですれ違ったと自己紹介をする。自分もいろいろあったが、女房に話してから楽になったと自分の経験を話す。鈴村は腰掛けの上に大切に置いていた手帳と写真に気付くと、なかば強引にその写真をとりあげる。遺品ですかと尋ねるが、達彦はあなたには関係ないという。
家の中、達彦は暗い廊下でまた戦場の記憶におそわれる。
暗い建物の中、軍曹がここを撤収すると言い出す。達彦の隣にいるのは、腹に血に染まった包帯を巻いて横になっている写真の兵士。彼の名前は若山。達彦は彼が重傷で歩けないと主張するが、軍曹は聞き入れるわけもない。彼も軍人ならば身の処し方も分かっているだろうと言われ、別の兵士が彼の自決のための手榴弾を達彦に渡す。若山は隊長殿自分は死にたくありませんと達彦に訴える。
場面は現在に戻る。達彦はわかやまーと叫びながらその場に膝をつく。
帰ってきた鈴村は桜子に、達彦は戦死した仲間を気に病んでるらしいと報告する。店の人が言うには最近一度だけ、豊川に外出したという情報ももってくる。戦友の遺族に会いに行ったのかもしれないと言うと、桜子は自分がそこへ行ってみると言い出す。
どうやって探し当てたか分からないが、桜子は若山と表札のある家の前にいる。すると玄関から先日針仕事をしていた女性(木村多江)が出てきた。あの兵士の姉だった。桜子は弟さんと同じ部隊にいた達彦に会ってくれないかと頼む。
夕暮れのいつもの山長の敷地に達彦と桜子がいる。桜子は若山さんの姉さんに会いに行こうと突然切り出す。達彦はほっといてくれとはねのける。桜子は、逃げないで、驚かないから全部話してと説得する。
俺はあいつを見捨てた。彼は両親を早く亡くして、二人暮らしの姉さんの話ばかりしていた。姉さんは大学まで行かせてくれたと言っていた。そう苦しそうに話す達彦を桜子は抱きしめる。
若山家。姉は弟のためにご足労ありがとうしました、と遺品を受け取る。達彦は頭を床にすりつけて、申し訳なかったと謝る。それに対して姉は、とても穏やかな顔と口調で、許しませんと言う。許したら弟が浮かばれない。若者たちを奮い立たせて戦地に送り込んだこの戦争を許さないと。あなたには未来がある。でも弟にはないのです。泣くわけでもなく、怒りを表すわけでもなく、おだやかに姉はそう話す。
小川の河原に達彦と桜子が並んで座っている。桜子は自分はこれからも達彦の味方だという。達彦は涙を流す。桜子はその達彦にやさしく寄り添う。
次回予告はマルセイユのマスター・ヒロ。