演奏会の続き。
演奏が終わる。会場から大歓声。拍手。桜子は立ち上がりお辞儀をする。進駐軍兵士が壇上の桜子に近寄ってきて、英語で褒める。会場からも桜子への賞賛の拍手。秋山が何かひとこと言うようにすすめる。そして壇の中央にやってきて、日本語で話をはじめる。通訳は秋山さん。「私の婚約者は六年経って帰ってきました。皆さんのふるさとにも帰りを待っている人がいるでしょう。戦争が終わってホントに良かった。この曲みなさんと皆さんの帰りを待つ人に送ります」。埴生の宿(Home sweet home)を演奏する。もちろんジャズ調。[この曲は桜子のいろいろな場面ででてきた曲だ]。達彦、涙が頬をつたっている。会場の進駐軍は壇上にあがり、英語で歌っている。ピアノを演奏している桜子の後ろで数人で肩を組みながら、バンドメンバーと肩を組みながら、歌っている。マスターヒロも達彦の肩に腕をかけている。
演奏会場から外に出ても、バンドメンバーは、群衆に囲まれて賞賛されている。秋山さんは、東京に行った方がいいと改めて思ったと桜子を誘う。桜子は困った顔をする。「もう一回だけ考え直してくれないか。いい答えを待っている」といいながら、秋山は離れる。桜子に会おうと駆けつけた達彦は、近づかないまま階段の上からこのやりとりを聴いていた。別のバンドメンバーが来て、お偉いさんがごちそうしてくれるから行こうと誘ってくる。動こうとしない桜子に対して、先に行ってるぞと言って離れる。達彦は桜子に見つからないようにその場を離れる。
桜子は達彦を捜して会場に戻ってくるが、達彦はいない。そこにヒロがやってきて、引き留めたが達彦がもう帰ってしまったと伝える。そして達彦からの東京へ行けという伝言を伝える。ヒロはさあどうすると聴く。桜子は走り出す。後ろ姿を見ながら、そうするよなとヒロがつぶやく。
夜の外は雨。走る桜子。石段をあがっている達彦を見つけ、呼び止める。「追いついて良かった。」と桜子。達彦は、「東京へ行けよ。有森」。昔からピアノやジャズが好きだったのに、家族のためや、山長の母のために、いままでその思いがとげられなかった。母や自分にここまでしてくれた桜子に返せるのは、黙って見守ることだ。自由に羽ばたけるときがきた。
そう言う達彦に対して、桜子は「私は東京に行かんよ。どうしていかないかわからんの。達彦さんがここにいるから。達彦さんのそばにいてずっと支えていきたい。達彦さんがおるから音楽を続けて来られた。おらんかったらここまで音楽はやってないよ。達彦さんが好き、達彦さんが何よりも大事。だからここにおる。」
「そう思っとっちゃいかん。いかんかな?」そう達彦に問いかける。
すると達彦は石段の上から桜子の方へ降りて来る、見つめ合い。桜子を抱きしめる。抱きしめられた桜子はとても幸せな顔をする。
家に戻ってきて、一人桜子はあの写真を見ている。ナレーション、不安や孤独を乗り越えて、桜子は達彦がここにいる幸せをかみしめていた。
有森家の朝。杏子が「演奏大盛況だったとヒロさんに聞いたよ」。達彦さんも来ていたと桜子が言うと、達彦さんもずいぶん元気になったねと喜ぶ杏子姉ちゃん。達彦の回復に力を貸してくれた鈴村も喜んでいる。
山長の朝。達彦と冬吾。冬吾はあのままとまったらしい。朝食を食べながら「この味噌づけはうめえな。さすがは味噌屋だな」と冬吾。達彦は急に立ち上がり「いまから有森の家に行ってきます」。冬吾「うんだか」。
有森家の玄関。達彦がくる。桜子が出迎える。座敷。「ごゆっくり」と杏子。影から鈴村とサチが様子をうかがっている。桜子と達彦は向かい合って座っている。ナレーション「ようやく二人が向き合える日がやってきました。」
純情きらり(143)へ つづく