昨日の続き。有森家の座敷で向かい合って座っている桜子と達彦。杏子がお茶を出して外に出る。外では鈴村と幸が様子をうかがっている。そこから場面が始まる。
向かい合って話すことはなかったよな、と達彦。ほうかもしれんね、と桜子。達彦は、母の最後の世話をしてくれたことを感謝する。自分にとっても大事な人だった。お母さんと呼べる人ができてよかったと桜子も達彦の母と一緒にいられたことを感謝する。六年という長い年月、心変わりもせず自分を待ってくれたことを達彦が感謝する。桜子は達彦のその言葉を聞きながら深刻そうな顔をしている。達彦は「有森、俺」と何か大切なことを切り出そうとするが、それを遮るように、そして見せたいものがあると、達彦をピアノのある部屋に連れて行く。
ピアノのある部屋。桜子がぼろぼろの紙切れを取り出す。キヨシが戦時中、達彦と同じ部隊の人から預かって届けてくれた達彦からの手紙だ。これを覚えてるかと桜子。達彦は、激戦で負傷して死を覚悟したときに書いた手紙だと答える。君が音楽を忘れない限り僕は君の中にいる、そう信じている。と手紙の一節を読み上げて、これを何度となく読み返したと桜子が言う。達彦さんは出征するときも音楽を忘れるなと言ってくれた。秋山さんに教わって編曲や作曲の勉強をした。少しだけど一つ一つが思い出にしみこんだ曲だと言いながら、ピアノの上にあった譜面を達彦に渡す。それを達彦がめくっていくと、「Tに捧ぐ」という楽譜を見つける。達彦が譜面から顔を上げ桜子の顔を見ると、桜子は話を切り出す。「達彦さんの前では正直でありたい。その曲はね。」と言いかけると、大声が聞こえてくる。笛子の声。
座敷で笛子が桜子を呼ぶ。杏子夫婦が挨拶してもそれどころではない笛子。画商から連絡があってここに来たという。桜子が駆けつける。冬吾をかくまっているんでしょう。笛子が、何故ここにいると伝えてくれなかったと聞くと口止めをされていたと桜子は答える。
そこに、ただいまと冬吾の声。笛子が振り向くと冬吾と目が合う。まずいっという顔をして、そっとそこから逃げ出そうとするが、笛子の大声で、動きが止まる。
何があったのかドアから達彦が身を乗り出している。桜子は達彦にそこで待つように言う。達彦は一人部屋に残り楽譜を見つめる。
笛子と冬吾が向き合って座る。その周りにみんながいる。鈴村はサチの様子を見に行くと場から出る。笛子は何で逃げたのかと口火を切る。場に緊張が走る。なぜ、よりによってこの家に隠れている、と笛子。もう少し俺の身になって考えてくれ、と冬吾。ちゃんと考えているという笛子に対して、「うそこけ」、絵に群がってる連中は絵には興味がない。彼らは杉冬吾がかけばかいてあるのが鍋だろうがヤカンだろうが関係ない。それに反論して、冬吾の作品を素晴らしいというありがたい人たちじゃないのか笛子が言うと、そうしゃべれば絵を描くと思っているだけだ。注文を取るのをやめれと冬吾が言う。それは駄目だと笛子が言う。ほうっておいたら、生活を考えないから、家計が回っていかない。手加減してくれ、もう疲れた限界だと冬吾。
桜子が冬吾をかばう発言をする。冬吾は自分の絵の善し悪しが分からない人のために絵を描きたくないのだと。その言葉が笛子を刺激してしまう。芸術の分からない人間の一人と私のことを思っているのでしょう。私は私なりに頑張ってきたにになによ。冬吾に対しても、私ではなく、自分のことが桜子には分かると冬吾も思っているのでしょうと。桜子と冬吾は心の奥底で通じ合ってると。私が知り合う前から、大の仲良しだった。冬吾が家族になるのがうれしいから結婚するのを喜んでいた。それなら、どうして二人は結婚しなかったの、と笛子がぶちまける。そんな昔の話と杏子が言うと、笛子は、昔の事じゃない、私は知ってる。津軽に行く前「Tに捧ぐ」という曲を桜子が作ったが、Tが誰のことかを分かっていた。
そう言うと、笛子は、今持ってきてやるからとピアノのある部屋に駆け出す。扉を開けると、達彦がいた。達彦はお辞儀をして、話を聞いているうちに出て行きそびれたと言う。笛子は帰ってきたこと知らなかったものでとても申し訳ない顔をする。達彦は楽譜を笛子に差し出そうとする。
座敷。テーブルの上には「Tに捧ぐ」の楽譜。今度は桜子と達彦が向かい合って座っている。その周りを杏子、笛子、冬吾が囲んでいる。杏子と笛子がTは別な人のことだとごまかそうとがんばるが、桜子本人が冬吾のことだと正直に言う。達彦には最初から隠しておくつもりはなかったと語りだす。一年前かねが死んだ後、達彦さんのことも駄目かもしれんと思った。大好きなピアノにもさわれなくなって、さびしくてきつくて、心の支えがほしくて、そんなとき、冬吾さんがそばにおってくれた。どん底にいた私を支えてくれた。譜面を焼き桜子の目の前で川に捨てる冬吾のシーンが入る。私の人生はどこにあるって、ここにあるだろうがと自分を見失っている桜子に言い聞かせる場面。冬吾さんがいなかったら、音楽を続けていけなかった。冬吾さんに助けられた。
ナレーション、桜子と達彦は離ればなれの長い年月を埋めようと向き合っていました。
【やっぱりこのドラマ面白い!笛子たちがかき回すのは先週の予告で分かったが、ここまで、ぶち壊してくるとは予想外。桜子も告白を決心していたけれど、これはね。今日はセリフが多い日なので、メモを取るのが難しかった。端折ったし、間違いがたくさんあるはず。今日はまとめるの時間がかかった。】
純情きらり(144)へ つづく