2007年03月15日

地球ドラマチック「知られざるカバの世界」

ゾウやジュゴンの祖先を調べていると、それとは別にカバとクジラが近縁だということもわかってきて、ほ乳類の進化もおもしろいなと思っていると、昨日とってもタイムリーな番組をやっていた。カバの生態についての番組だ。残念ながら気付くのが遅れて後半だけしか見ることができなかった。カバは思っていた以上にすごい動物だった。

番組ホームページ:地球ドラマチック「知られざるカバの世界」
NHK教育 2007年3月14日(水) 19:00-19:45
原題:Hippos - The river beast
制作:National Geographic(アメリカ)2006年


◆カバとクジラ
古生物学者フィリップ・ギンガリッチ(Philip Gingerich)が発見した化石。足の骨の一部で牛やカバの仲間に特有のもの。※これは「距骨」という骨らしい。この骨により、カバとクジラは5500万年前に同じ先祖から枝分かれしたと考えられるている。

初期のクジラは足を使って泳いでいた。尾を使って泳ぐようになると、足は退化し流線型の体に。現在のクジラには体の内側に足だった骨が残っている。

化石だけでなく遺伝子の研究でもあきらかになってきた。画面に系統樹が示される。ラクダが別れ、ブタが別れ、キリンやシカが別れ、カバとクジラが別れる。そのあとハクジラとヒゲクジラが別れる。


◆カバとクジラの類似点
二つの動物の大きな類似点としてクジラの噴気孔とカバの鼻孔。両者とも水を遮断し、体内に空気を閉じこめておくことができる。たとえ眠っていても水面下に沈むと自動的に閉じる。カバは五分程度水中に潜ることができる。

◆カバのコミュニケーション
カバの鼻は呼吸器官だけでなく、コミュニケーションの道具でもある。クジラのコミュニケーションはよく知られているが、カバにも同じような能力があることがわかってきた。

カバのコミュニケーションを専門に研究している動物学者ビル・バークロー。オハイオのトレド動物園。カバはコミュニケーションをするとき口を開かず鼻を使う。喉で発せられた音波は口ではなく鼻の穴から外に出る。野生のカバは120dbというジェット機の離陸音に匹敵する大きな音を出す。

カバは水中と空中で同時に音を出せる。目と耳と鼻を空中に出し他の部分を水中に沈める。空気中では鼻から音を出し、耳でそれを聞いている。同時に水中では、喉の周りの脂肪を振るわせて音を出す。カバは空気中の音と水中の音を同時に聞くことができる。水中ではアゴを使って音をうけとめている。下あごが頭蓋骨につながる部分に薄い骨があり、水中の音を感じている。


◆カバの食事
カバは食料を求めて陸にも上がってくる。カバは日が落ちてから活動する。草を食べるとき厚い唇を使う。草をむしり取り、奥歯ですりつぶして食べる。一日で45キロの草を食べる。体の大きさはゾウの三分の一、食べる量は六分の一。カバの胃は四つあり、効率よく消化吸収する。牛のように反芻はしない。胃だけでほとんどのものを分解することができる。

◆カバの皮膚
カバの皮膚は鎧のように硬い。ライオンの攻撃も受け付けない。今でもこの皮のために密猟されて盾や鞭に使われる。気温が高くなるとカバの肌はピンク色になる。これは皮膚から出る分泌物の色で、日焼け止めの役割がある。カバは15頭程度の群れで生活している。一匹の強いオスが交尾する権利を独占している。オスは縄張り争いをするため、年取ったオスの皮膚はたいてい傷だらけになる。しかし感染症には滅多にならない。ピンクの分泌物には殺菌作用もあるから。

◆その他の生態
・カバは出産も水中で行う。赤ちゃんは40キロ。
・オスが子供のカバを水中に押さえつけ溺死させる映像がある。理由は不明。
・カバは短い距離ならば時速30キロ以上で走る。
・カバは縄張りを主張するために糞を尾でまき散らす習性がある。
・南アフリカのセントルシアでは、夜、人家の近くに草を食べにカバが出没する。そのため注意を促す標識がある。

カバは今や絶滅危惧種。私たちはカバの持つ素晴らしい能力を理解し始めたばかり。


■参考資料

地球ドラマチック「知られざるカバの世界」 - NHK番組ホームページ

Origin of Whales from Early Artiodactyls: Hands and Feet of Eocene Protocetidae from Pakistan ...番組に出ていたギンガリッチ氏のサイエンス誌の論文(英文)

日本語タイトル「クジラの起源は初期の偶蹄目:パキスタンで見つかった始新世プロトケトゥスの手と足」
サイエンス日本語版 2001年9月21日号 解説

Evolution of cetaceans - en.wikipedia クジラ目の進化(英文)


posted by takayan at 19:41 | Comment(2) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする