2007年06月08日

黙示録写本

ヨハネの黙示録の場面を描いた作品がヨーロッパの人々に現在のドラゴンのイメージを広めたのではないかということを以前書いたが、昨日、ヨハネの黙示録に記述された世界を広めた人物としてベアトゥスBeatusの存在を知った。

ベアトゥスは8世紀の北部スペインの修道僧、神学者で、776年に黙示録の注釈を書いたことで有名な人。この人が書いたものを元にしたとされる写本が現在も30以上伝わっている。その写本のほとんどには黙示録の場面を描写する美しい挿絵が入っている。

ベアトゥスを知ったのはこの本:
西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編 - amazon.co.jp

ベアトゥスに関する資料としては、英語だがWikipedia(en)のBeatus of Liébanaがある。日本語ではWikipediaに記事はないが、中世ヨーロッパ彩飾写本図鑑さんの「ベアトゥスの黙示録注解 その1」「ベアトゥスの黙示録注解 その2」に、ベアトゥスの生涯とベアトゥスが注釈した黙示録の分かりやすいまとめがある。

以前紹介したドラゴンの絵を集めたサイト「Dragons in Art and on the Web」に、中世ヨーロッパ彩飾写本図鑑で紹介されている物と似たような絵をいくつもみつけたが、あれがベアトゥス写本というものだったのか。ここで紹介されているベアトゥス写本では黙示録12章のドラゴンには翼が描かれていない。ここを基点にデューラーに至るまでドラゴンに如何にして翼が描かれ出したかを調べていけばいいのだろうか。

そう思って、いろいろ探していると、アリゾナ大学図書館の蔵書紹介サイトに、次のページを見つけた。このサイトの9世紀から10世紀の写本の列に、Trierer Apokalypseがある。そのページの写真をクリックすると翼の生えた蛇の絵が出てくる。足が無く蛇に近い姿で、鳥のような羽が生えている。左側に書かれている言葉をよく見るとちゃんと、"et postquam vidit draco quod proiectus est in terram persecutus est mulierem quae peperit masculum..."と読めるので、ラテン語聖書のヨハネの黙示録12章13節以降だとわかる。つまり、この絵は大地が竜の吐きだした川を飲み干している16節の場面である。これは「トリーア本」と呼ばれる写本らしい。

さて、「Trierer Apokalypse」で調べてみると、次のページを見つけた。Die Trierer Apokalypse(ORF)。ドイツ語なのでよく分からないが、ここにはこの写本の他のページも掲載されている。日本語では上智大学貴重資料Databaseサイト内にあるこのページには、800年代に製作されたように記述されている。先のドイツ語のページの冒頭だけを訳して読んでみると、これはカロリング朝の黙示録写本に分類されるようだ。

まだ確証はないが、カロリング朝ではドラゴンに鳥の翼を描く傾向があるのではないかと思う。前回の「ドラゴンの翼」で指摘した鳥の翼をつけたドラゴンもこのカロリング朝の形式で描かれているということではないかと思う。


■資料

ベアトゥス黙示録註解― ファクンドゥス写本 ― - 岩波書店
安い方の『ベアトゥス黙示録註解』の書店の紹介ページ。残念ながら在庫切れで古本でしか手にできない。もう一つ「アローヨ写本」版の『ベアトゥス黙示録註解』も日本で手に入るが、個人で買う本ではないだろう。

サン・スヴェールの黙示録 - 清泉女子大学図書館
清泉女子大学図書館の蔵書案内より。サン・スヴェールの綴りは、Saint Sever。この単語の画像検索で、アリゾナ大学図書館を見つけた。

初期中世の黙示録写本挿絵サイクルにおける挿絵とテキストの配列関係 - 大阪大学文学部・大阪大学大学院文学研究科
PDF文書。カロリング朝の写本について書いてある。

ジローナのベアトゥス黙示録注釈書の挿絵をめぐる諸問題 - 金沢美術工芸大学卒業論文
黙示録の挿絵について、いろいろ難しいことが書いてある。ベアトゥス写本にカロリング朝の写本の影響があるのかどうかを論じている。

Die Trierer Apokalypse - 紀伊國屋書店
トリーア本。

第131回常設展示 記録の中の「幻獣」たち - 国立国会図書館
ベアトゥスで検索していると、このページを見つけた。ドラゴンなど幻獣の出てくる様々な本の紹介がある。




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