家に帰って7時からの「IQサプリ」を見てたら、伊東美咲がトランプのクラブをクローバーと呼んでいた。このセリフ、このブログでカルタのこと調べてる僕にはちょっと聞き流せない。彼女は台本を読んだだけだから、伊東美咲を批判するつもりはない。いや結論からいくと、相手が伊東美咲だからというわけではないが、僕は許してしまうのだけれど、ちょっと書こう。
まず、トランプのあのクラブはクラブであって、クローバーではない。両方英語からの外来語であるけれど、綴りは、クラブはclub、クローバーはclover。音の響きから日本人には関連のある単語に聞こえるかもしれないが、全く関連の無い単語。
英語のclubの元々の意味は「棍棒」。どうしてあの形が棍棒なのか。それはフランス北部であのシンプルな形を描いたトランプが発明されイギリスに輸入される以前、イギリスでは実際に棍棒が描かれたトランプを使っていたらしいから。フランスからのトランプのマークの形が今まで使っていた棍棒と違う形でも、そしてそれと同じようなデザインで自分たちで作るようになっても、イギリスではそのまま同じ名前で呼び続けているというわけ。
トランプの歴史は、フランスやイギリスよりも、イタリアやスペインの方がはやく、そしてそのイタリアやスペインへは14世紀にエジプトのイスラム教国から伝わったという説が有力とされている。このときイスラムのカードに描かれたポロのスティックが、当時のヨーロッパ人にはただの木の棒にみえてしまった。そしてそれは棍棒になった。今もスペインには棍棒が描かれているカードがある。南ヨーロッパ形式のこの種のカードが、フランスからよりも先にイギリスに伝わって、その形を見たまんまのclubと呼んで定着したということだろう。
そういう経緯はあったとしても、やっぱり普段見るあのクラブの形はどう見ても三つの葉っぱのクローバーに見える。だから、クローバーと呼んでもいいんじゃないか!そう見えるんだからしょうがないじゃない。そう考える人には都合のいい事実がある。実際、フランス語ではあのクラブはtrèflesと呼ばれている。そう、まさに三つ葉、クローバーという意味の言葉で呼ばれている。
だから、日本人がそう呼んだって構わない。このマークの形は15世紀の後半にフランス人が考えたと言われているのだから、その国の人たちが呼んでいる言葉の意味で日本人がクローバーと読むのを間違いだと批難できるだろうか。(ただフランス人がクローバーを模して、あの三つ葉のシルエットを作ったわけではないらしく、おそらくドイツで使われているドングリのマークからだと言われている。トランプの歴史は奥が深い。今いろいろ調べている。)
そういうわけで、クラブのあのマークをクローバーと呼ぶのは間違いだとはいいきれないけど、でもあまりおすすめはしない。トランプの用語は英語だから、それでちゃんとclubとなっているカードだから、あくまでもクローバーは俗語扱いになる。クローバーよりも抽象的な「三つ葉」と呼んだ方がいくらかましだけど、でも、やっぱりクローバーと呼びたいんであれば、あれは英語ではclub、ついでにフランス語ではtrèflesだということを頭の片隅に入れておいてください。
現行のスペインのカード(私物)
■関連資料
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Playing card・・・Wikipedia(en) 英語
トランプの歴史について詳しくまとめてある。
・
Carte à jouer・・・Wikipedia(fr) 仏語
ヨーロッパ各国での呼び方の表がある。クラブにおいて英語が形と原義が一致しておらず例外的だと分かるが、他の各国も様々だと分かる。ちなみに、同じ項目のスペイン語版Wikipediaだとスペイン語ではフランス・イギリス式のクラブを、tréboles と呼ぶとある。
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カルタ―PLAYING CARD ・・・ Amazon.co.jp
以前紹介したこの本には復元されたマムルークカード(イスラム世界トルコの15世紀のカード)の写真など、トランプの歴史をうかがえるものがある。
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posted by takayan at 00:23
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