2007年08月16日

ワープする宇宙2

第二章を読んで。

この章では「ひも理論」において余剰次元が観測されない理由について説明している。

「ひも理論」というのは、あとの章で詳しく述べられると思うが、相対性理論と量子力学の両方をうまい具合に説明できる理論のようで、素粒子が振動するひもでできているという考えを基礎に置いている。この理論では余剰次元の存在が不可欠になる。余剰次元というのは、理論的にこの宇宙の空間次元としてあるべきなのに僕たちが存在を感じられない次元のこと。

現実に、僕たちは縦・横・高さの次の四つ目以降の方向を指させない。この空間が三次元だけでなく余剰次元を含めた、より数の多い次元の空間だとしたら、なぜ三次元以外の次元を見つけられないのだろうか?

その理由は、この余剰次元が「巻き上げられている」からだと説明される。だんだんと内容が難しくなっていく。数式は使わないけれど、この丁寧に言葉だけで描いている世界は、まさに日常では考えもしないような特異な世界。数式や用語をできるだけさけて、きちんとした日本語に訳されているからって、日本語が読めれば誰でも分かるなんてそんなレベルではない。

この章の最初には、「不思議の国のアリス」と「フラットランド」の物語を合わせた不思議な物語が載せられている。この世界のアリス(アシーナ)はこの巻き上げられた次元のある世界で不思議な体験をする。これを何度か読んでみると、少しはこの章で描こうとしている世界をイメージできるようになると思う。

この章では、カルツァ-クライン宇宙というのが出てくる。ポーランドの数学者カルツァTheodor Kaluzaは、アインシュタインの一般相対性理論からの帰結として1919年にもう一つの空間次元の存在、つまり余剰次元の考えを提唱した(論文の出版は1921年)。その後、スウェーデンの数学者クラインOskar Kleinがこの空間次元について取り組んで、1926年にこの次元が極めて微少な円状に巻き上がっているという考えを提出した。この次元はあらゆる所にあって、空間のどの点も微少(10の-33乗cm)な円を持っているとされる。この極小の物理量はプランク長さという。とにかくものすごく小さい。

この巻き上げられた時空をイメージするのはとても難しい。そこで喩えとして出されるのが、ホース宇宙。この本以外にもよく使われる喩えらしい。一方向に広いゴムシートでできた平面があるとする。長い方の辺の組をくっつけ丸めて、ゴムホースを作る。ゴムホースの表面は、もとのゴムシートの表面と同じ二次元世界。辺をつないで作ったので閉じている。このホース上を宇宙と考える。冒頭のアシーナが入り込んだのはこれに似た世界。

この宇宙に住む者にとって、巻き上げられた方向が極端に小さい場合は、小さい方の次元は感じることができず、自分が一次元の世界にいると考えてしまう。他の次元でも同じように考えていく。三次元空間で一つの次元が巻き上げられている場合、各点にには微少な円がある。2つの次元を巻き上げる形としてドーナツのような形が考えられるので、四次元空間で2つの次元がこのドーナツ状に巻き上げられている場合には、各点にドーナツがある。

この章には「カラビ-ヤウ多様体」という言葉も出てくる。これは「ひも理論」で使える特殊な数学的性質が定義されている六次元の図形のことらしい。詳しい説明はen.WikipediaのCalabi-Yau manifoldあたりを読むといい。さっぱり分からないけれど。

次は重力と余剰次元について。ここでもうひとつ喩えが出てくる。重力の分散をスプリンクラーでばらまかれる水の量で喩えている。このスプリンクラーでは中心からばらまかれた水が一つの円周上に均等に届く姿を思い描く。そして中心から出る水の量が同じであるが、そのばらまかれる半径が大きくなると、それぞれの点に届く水の量が減ってしまう。これは直感的に理解できる。距離が離れると各点に届く水の量が急激に減っていく。

重力の及ぼす力も、これに似たイメージで考えることができる。このときは円ではなく球面になる。重力の強さは中心点から出てくる放射状の線の数の多さで表すことができる。重力線が出てくる場所と同じ中心をもつ球面を考えると、中心に近い球面のほうがその球面を貫く密度は高くなる。この密度がその地点の重力の強さを表すと見ることができる。中心から距離が離れれば、それだけ重力は弱くなる。これは先のスプリンクラーのイメージで理解できる。

そこで、この重力はどの球面を貫こうと元々同じであり、重力線の総数は同じわけだから、各点での重力の強さはその重力線が貫いている球の表面積に反比例しているだけだとわかる。つまりこの球の表面積は球の半径の二乗に比例するわけだから、ゆえに重力は距離の二乗に反比例することがわかる。これが重力の逆二乗法則。

では、余剰次元がこれにくわわってくるとどうなるか。空間の次元が増えればより急速に距離が離れることで減少してしまう。なぜなら例えば四次元だと球体の表面積は半径の三乗になる。しかし現実の重力は逆二乗法則に従い、僕たちの空間が三次元であることを示している。もし余剰次元があるというならば、どうして逆二乗法則に従うのだろうか。

この解決もホースの比喩で説明をする。一方の端が閉じられてその中央にある針穴からホースに水が入ってきた場合を想像する。ホースに入ったばかりの時は、細い水は三次元的に広がっていく。しかしホースの壁に到達すると、水は長い次元の方向だけに進んでいく。この水の流れを重力線とみなして考える。ホースの断面をコンパクト化された余剰次元だと考える。

この余剰次元の大きさよりも小さなスケールで考えれば高次元の重力の振る舞いが測定できるかもしれないが、この大きさは極めて小さく、それより大きなスケールでは重力はコンパクトな余剰次元がはじめからなかったような振る舞いをしている。


ここまで来ると、早くも、はいそうですか、としか言えなくなる。余剰次元なんてものが始めからないから見えないのか、あるけれどこのようにものすごく小さくコンパクト化されてしまっているから見えないのか、そのことがどうやって区別できるのだろう。存在するとしても極めて小さいために観測できないことがわかっているものをどうやって知るというのだろうか。まあ、そんな疑問を抱きつつ先へと進む。


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ワープする宇宙3

第3章を読んで。
ブレーンbraneについての話。

ブレーンは1995年物理学者ポルチンスキーJoseph Polchinskiによって「ひも理論」に不可欠なものとして立証される。「ひも理論」のブレーンは、粒子や力までがとらわれている。このブレーンを使うと様々なことが説明可能になる。

余剰次元が見えないのは次元が丸まっているからではなく次元が極めて小さいからである。ブレーンを使って考えると余剰次元が丸く閉じてはおらずブレーンによって境界がつくられている有限の次元となっている可能性も考えられる。

ブレーンには2つの方向がある。ブレーンに沿って伸びる方向と、ブレーンから離れていく方向。高次元世界では、ブレーンが高次元空間全体の境界になっている。この空間全体をバルクと呼ぶ。

境界をなすブレーンについて、パイプを使った比喩で説明がされる。パイプの内部には長い次元と短い2つの次元があるとする。パイプの断面を分かりやすく正方形にする。このパイプ空間を自由に動けるハエのような生き物を考える。このパイプの壁がそれぞれ二次元のプレーンである。この境界に達すると跳ね返ってくる性質がある。境界をなすブレーンは空間よりも次元数が少ない。このブレーンとは別に境界をなさないブレーンもある。これも低次元の存在であるが、このブレーンは両側にバルク空間を持っている。

そのあと有名なシャワーカーテンの水滴の比喩。カーテン上の水滴は二次元面の拘束されている。そして15パズルの比喩。このタイルも移動の方向が限定されている。これらの比喩のようにブレーン上の粒子は動き回る次元を限定されていると考えられる。

宇宙が高次元であっても、粒子や力が三次元ブレーンにとらわれているならば、三次元の宇宙にいるのと全く変わらないように感じられる。ブレーンにとらわれている力はそのブレーン上の粒子にしか影響を与えられない。ただ重力は特別で、重力はブレーンに閉じこめられているとは考えられない。ブレーンは少なくとも重力を媒介として、バルクと相互作用を果たしていると考えられる。宇宙の中には複数のブレーンワールドがあり、ブレーンワールドは孤立してはいない。全体の一部として相互作用を果たしている。

ブレーンを考えると、ありとあらゆる可能性を考えていくことができる。ただその他のブレーンワールドを観測できる可能性は低い。相互作用をしているはずの重力の力も極めて小さい。ただ他のブレーンワールドの存在の証拠を見つけ出せる可能性が全然ないというわけでもない。


ここに来るともう、まとめようにまとめられなくなってくる。というか、突然現れた「ブレーン」って一体何?という疑問に何も答えを見いだせないまま、先へと進んでいく。どうして、このブレーンに拘束されてしまうわけ?どうして重力だけが拘束されないわけ?

ブレーンが何もので、どうしてそういう性質を持っているのかということは何も分からない。先へ進んでいくと分かるのかもしれない。もっと詳しい本を手に入れて、調べてみたい。それはこの本を全部読み終わってからの話。


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ワープする宇宙4

第4章を読んで。

冒頭のアシーナとアイクとのやりとりに出てくる映画カサブランカで有名な「As Time Goes By」の忘れ去られた歌詞の原文も探してみた。
This day and age we're living in
Gives cause for apprehension
With speed and new invention
And things like fourth dimension.
Yet we get a trifle weary
With Mr. Einstein's theory.
So we must get down to earth at times
Relax relieve the tension

And no matter what the progress
Or what may yet be proved
The simple facts of life are such
They cannot be removed.
「As Time Goes By - Herman Hupfeld」もyoutubeに置いてある。もちろんこの歌詞の部分はない。

統一理論を見つけようとする態度は、単純性を求めているだけの行為ではないか。世界は複雑であり、そこまで理想化できないのではないだろうかという著者の指摘。

理論を観測結果に結びつける方法には2つある。「ひも理論」の研究者はトップダウン的で、ランドール博士のとるモデル構築という態度はボトムアップ的である。プラトン的かアリストテレス的かとも言い直せるという。

いわゆる演繹と帰納の2つの手法の違いだろう。理論物理学にこういう対立的な構図があるなんて知らなかった。

ひも理論とモデル構築のふたつの陣営はいままで対立した立場をとってきたが、最近は状況が変わりつつある。この本で扱われる余剰次元理論も、モデル構築の考え方にひも理論の着想を組み入れることでできあがっている。

次に進むための、物質の成り立ちの復習

・全ての物質は原子からなりなっている。
・原子は原子核とその周囲を回る負の電荷を持った電子からなっている。
・原子核は、正の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子という二種類の核子からなっている。

・陽子は、2つのアップクォークと1つのダウンクォークからなっている。
・中性子は、2つのダウンクォークと1つのアップクォークからなっている。
・このクォークを結びつけているのが「強い力」である。
・電子は下部構造を持たない。

・高エネルギー粒子加速器を使うと、重い素粒子の存在を観測することができる。

素粒子の物理理論「標準モデル」では素粒子に相互作用を果たせる四つの力のうち三つの力が説明される。

標準モデルの疑問点
・重い素粒子は何故存在するのか。
・四つの力以外の力はないのか。
・他の力に比べて重力はどうしてこんなに弱いのか。
・量子力学と重力はどうすれば両立できるのか。

これらの問題に答えを出そうとする理論がこの本で説明しようとする余剰次元モデル。


さあ、次からはしばらく相対性理論と量子力学からはじまっての現代物理学の解説の話。この分厚さはかなりのものでこの本の半分を占める。
章末に要点が箇条書きになっているから、わざわざここにまとめを書く必要もないだろう。

そして、理論物理学の長いまとめの部分が終わると、この本の核心へと入っていく。それらの章を使って整理された理論を踏まえての、この第一部で単純に描かれてきた余剰空間についてのより詳しい説明が待ち受けるわけだ。


posted by takayan at 10:51 | Comment(0) | TrackBack(1) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月19日

ワープする宇宙 資料

まだ読み終ってないが、いろいろ資料を探してみた。

■リサ・ランドール

まず、この人が日本で紹介されたのは「未来への提言」というNHK BSの番組。「未来への提言」の第二回目として、2006年5月21日に放送された。再放送もあったらしい。宇宙飛行士の若田光一さんがインタビュアー。(未見)

・番組情報
「未来への提言」理論物理学者 リサ・ランドール〜異次元を語る〜 - NHK情報ネットワーク

この番組を元に本にしたのが、日本放送出版協会「リサ・ランドール異次元は存在する (NHK未来への提言) 」。内容は、ランドールさんと若田さんの対談集。場所はハーバード大学の研究室。本にはその番組の場面と思われる写真や、説明のために使われただろうCGなどが白黒で載っている。

「ワープする宇宙」に比べたらそんなに難しいことは書いてないみたい。まだぱらぱらとめくった程度だけど、気になったのは、彼女が教授からもらった助言の「成功したければ質問しなさい」という言葉。理論の説明もあるけれど、彼女自身のことも話題になっている。そしてこの番組のテーマである、21世紀の道しるべを示してくれる。



リサ・ランドール異次元は存在する (NHK未来への提言)



リサ・ランドールさんは今年7月に来日していた。その模様は来週NHKで放送される予定。

・番組情報
NHK BS1 2007年 8月25日(土)午後10:10〜午後11:00(50分)
BS特集「リサ・ランドール 異次元への招待」 - NHK番組表』

このとき、茂木健一郎さんとの対談もあったようで、茂木健一郎「クオリア日記」で紹介されている。

2007/07/29 ボクがもし地球だったら - 茂木健一郎「クオリア日記」

そして、茂木さんによる書評:
『ワープする宇宙』 隠れた次元、率直に追究 - 読売新聞

そういうわけで、BS1で放送がある8月25日までには「ワープする宇宙」を読み終えたいな。


■エレガントな宇宙

「ワープする宇宙」を読みながら思い出したのが、以前NHK-BS2でやっていたひも理論を解説したアメリカ制作のとてもおもしろい科学番組。
名前を思い出せなかったがいろいろ調べてやっとわかった。

「美しき大宇宙〜統一理論への道〜」

これはこの番組で案内役で出ているグリーン教授が書いた本「エレガントな宇宙」を元にした番組で、全三話。

僕は二話目の途中から見た。とにかく閉じたひもが始終飛び交ってた。CGを多用していろんな理論を視覚的に見せてくれた。

案内役は役者かと思ったら、グリーンさん本人だった。つい最近も再放送がされたらしい。

内容はひも理論がどのようにして成立していったかというもの。「ワープする宇宙」の理解に助けが必要な人や、ひも理論そのものに興味を持った人はどうぞ。

NHK BS世界のドキュメンタリー バックナンバー
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 第1回 アインシュタインの見果てぬ夢
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 第2回 “ひも”の振動が万物をうむ
美しき大宇宙 〜統一理論への道〜 最終回 驚異の高次元空間

既にDVDになっている。そしてその元になった本。


美しき大宇宙~統一理論への道~


エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する


この分野の読み物は他にもいろいろあるようだけれど、中身が分からないので、ここでは紹介しない。(本やビデオのリンクを貼り付けるときの基本姿勢)


■教科書

「ワープする宇宙」はまだ読み終えていないのだけど、この数式を使わないというのもちょっともどかしさも感じている。そこで日本語で書かれたこの理論についての書かれた本がないか調べてみた。すると次の本を見つけた。専門向けの本。

大槻義彦編「現代物理最前線5」共立出版 2001
この本には、三つの論文が載っていて、その中のある「四次元を超える時空と素粒子」というのが、「ワープする宇宙」で描こうとしている同じ内容のものだと思われる。断定できないのはまだ読み上げていないから。

目次だけを抜き出すと、
『四次元を超える時空と素粒子』・・・・・坂東 昌子・中野 博章
1章 はじめに
1.1 物理学と空間の次元
1.2 スケールの話
1.3 本当に時空は四次元か?
2章 ゲージ原理―力の法則と空間の次元
2.1 力の起源とゲージ粒子
2.2 高次元における力の法則
2.3 多様な力の法則
3章 コンパクト化された余次元空間
3.1 空間のコンパクト化とKKモード
3.2 余次元からの多様な場
3.3 KKモードと有効理論
4章 素粒子の左右非対称性と余次元
4.1 四次元のカイラル構造
4.2 高次元理論はカイラルでない?
4.3 カイラル非対称性を作る
5章 ブレイン世界
5.1 弦理論と時空のコンパクト化
5.2 非摂動的な弦理論とDブレイン
5.3 ブレインワールド
6章 ドメイン壁と物質場の局在化
6.1 キンク解とドメイン壁
6.2 カイラルな物質場の局在化
6.3 オビフォルド空間上でのフェルミ場の局在化
7章 重力場の局在化
7.1 ランドール−サンドラム模型
7.2 ランドール−サンドラムの五次元時空
7.3 重力場の局在化 ― ゼロモード
7.4 重力場の局在化 ― KKモード
8章 おわりに


僕にはすぐにさらさらとここに書かれている式を理解できないのだけど、読み終わったらこちらにも挑戦してみようと思っている。


出版社のシリーズ案内ページ
共立出版株式会社 刊行中のシリーズ「現代物理最前線」



現代物理最前線〈5〉




■英語の資料

原書のページ
Warped Passages by Lisa Randall
原書の歪んだ表紙のほうが好きだ。


Lisa Randallのこの本「Warped passages」についてのインタビュー(英語)
Charlie Rose - Lisa Randall / Edward O. Wilson
内容はインタビュー番組 Charlie Rose's show。後半の人物は生物学者のエドワード.O.ウィルソン。


最後に。リサ・ランドールさんがケンブリッジで講演したときの映像。下記ページのVideoのところ。
Unification in warped extra dimensions and bulk holography
これは本書p182で出てきたケンブリッジでのひも理論会議の中での講演だと思われる。

せっかく見つけたけど、僕には駄目だ。英語での物理の講義が理解できる人はどうぞ。


posted by takayan at 02:44 | Comment(2) | TrackBack(0) | ワープする宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月22日

「ワープする宇宙」読了

未だ興奮冷めやらずというところ。
中三の頃、はじめて相対性理論の解説書を読んだときの興奮を思い出した。

六百ページ超の分厚い本で、半分以上を占める理論物理学のこれまでの道筋の部分は、正直挫折しそうになった。でも最後の理論に直接関わらない理論の説明まで細かく描いていく妥協を許さない著者の態度には感服する。これは、必死にかじりついて読み進まずにはいられない。これまでの物理学の流れの部分はそれだけでも十分で、素晴らしく知的な体験をさせてもらえた。

何が書いてあったと聞かれても正確に答えることはできないけれど、理論物理学の発展を一つ一つ丁寧にたどったあとに、最後に畳み掛けてくる、著者の理論が描く想像を超える世界像に興奮しながら読み終えた。

数学的な裏付けはまだ僕には分からない。けれど少なくともこの文章で描かれているこの理論は極めて論理的に構築されていて本物の理論だと思った。読んだだけで、それが世界をちゃんと描けているかどうかは僕に分かるわけはないのだけど。

1回読んだだけでは分からないことばかりだから、何度でも読んで理解したいと思う。

あとがきは、一番最後に読むことにしている。さっき読んで「スタートレック」や「宇宙戦艦ヤマト」が話題にされているのを知った。ワープといったらやっぱりこの2つが最初に浮かぶ。監訳者の向山信治氏の簡潔な概略はとてもわかりやすく整理してくれる。でも先回りして読まなくてよかった。

さて、この「ワープした余剰次元」理論というのは、LHCによる実験結果によって、裏付けられるのだろうか。どうなるのだろうか。そしてその実験結果からまたどんな理論が生まれてくるのだろうか。この本のおかげで楽しみが増えた。


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2007年08月27日

いよいよ「子連れ狼」最終回

時代劇専門チャンネルで放送されている萬屋錦之助版「子連れ狼」がいよいよ今週火曜日8月28日に最終回をむかえる。このチャンネルでの以前の連続放送も見ていたのだが、一度見たのに今回もどうしてもはまってみてしまう。

いよいよ柳生烈堂との最終決戦。時代劇専門チャンネルを見ることができる人は是非見よう。興味のある人だけでいいけどね。
そして是非とも、最終回の前の回「波と笛と」も忘れずに。この回は裏柳生の最後の草たちとの死闘。父拝一刀から息子大五郎への大切な遺言がある。それがタイトルにある「波」が象徴するもの。

子連れ狼 - 時代劇専門チャンネル 番組詳細
第25話「波と笛と 」
  放送日時 2007年08月27日(月) 12:00、24:00

第26話「腕(かいな)」 最終回
  放送日時 2007年08月28日(火) 12:00、24:00



時代劇専門チャンネルでは9月になると、ドラマ版「蝉しぐれ」も再び登場。脚本は同じ人だけど、さっきあった映画とはまた違った趣の作品。大きな違いはナレーションかな、展開がよく分かる。物語が回想という形を取っている点も違う。映画だと映像と音楽で人の心に届くような作品作りをしてあるけれど、こちらは連続ドラマで、展開を楽しむといった感じ。内野聖陽主演というのもいい、というかそこが一番のみどころ。

蝉しぐれ - 時代劇専門チャンネル 番組詳細

放送日時
  2007年09月16日(日)より毎週日曜日 12:00、20:00


posted by takayan at 01:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美しき知性「リサ・ランドール博士・異次元の謎」

土曜日はBS-1であった例の番組を見た。
講演の内容を中心に伝えるとばかり思っていたが、そうではなかった。
簡単な理論の紹介。講演をしている姿。茂木さんとの対談。東大の学生たちとの研究室での対話と、その学生達との食事をしながらの会話。

理論の紹介の部分は、去年あった若田さんとの対談番組の使い回しのようだ。あの番組は見ていないが持っているその対談をまとめた本「リサ・ランドール異次元は存在する」に同じような画像が沢山出ている。短期間で番組を作る必要があったのだろうから、仕方がないのだろう。

僕は本「ワープする宇宙」を読み終えなければ番組に理解できない内容があるかもしれないと思って、急いで読み上げたのに、なんか肩すかし。あの本読んだあとだと、番組内での理論の説明は全然歯ごたえがない。

それでも、初めて見た人にはとても印象深い番組だったのかもしれない。僕も予備知識がなければきっとそうだったに違いない。

今は本屋に無ければ、簡単にネットで注文できる。本屋だと中身を確かめて買えるけれど、ネットだとそれはちょと難しい。「ワープする宇宙」の分厚さも分からないだろう。待ちに待って、いざ読んでみて、挫折する人が続出しなければいいが。


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2007年08月29日

皆既月食

昨日の夜はいちごさんが教えてくれ皆既月食。甥っ子達が遊びに来てくれた。僕が一緒だと、それなりに詳しいのでいろいろ説明してやれるからね。

でも月の出の頃、こちらでは東の空は曇ってしまっていて、しばらく待ったが月の様子は見ることができなかった。方位磁石担当を決めて、どちらを向けばいいのか考えてもらったが、見つけることができなかった。

8時頃になってもう一度様子を見に行っても、まだ雲があって月を見つけられなかった。それでもしばらく甥っ子達と南東の空を眺めていた。すると、赤い月が雲の切れ間から姿を現した。思っていたより高い位置にあった。最初は薄い雲に隠れてあまりはっきりしなかったが、次第に雲が晴れて、きれいな薄く赤っぽい姿が現れた。

三十分ほど月の観察をした。天体望遠鏡も一番小さい子の背の高さに合わせて設置した。しばらく見ていると、小さな星が月の端から現れてくるのが見えた。これは恒星食と呼ばれるもので、いつも起きていることだけれど、月が暗くなっているからとてもきれいに観測することができる。この恒星食はアストロアーツの特集ページで紹介されている。時刻もちょうどあっているので「みずがめ座σ星」なのだと分かる。星が月の縁に出てきたばかりの様子を子ども達が観測できたのはよかった。とてもきれいだと言ってくれた。

月食中に起きる恒星食 - アストロアーツ 特集 2007年8月28日皆既月食

観測が終わると、部屋に戻ってみんなでボードゲームの「Catanカタン」とカードゲームの「neuノイ」をして遊んだ。これで遊ぶのはひさしぶりだけど、みんなだんだん頭が良くなってるなと頼もしさを感じるひとときだった。


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