2007年08月16日

ワープする宇宙4

第4章を読んで。

冒頭のアシーナとアイクとのやりとりに出てくる映画カサブランカで有名な「As Time Goes By」の忘れ去られた歌詞の原文も探してみた。
This day and age we're living in
Gives cause for apprehension
With speed and new invention
And things like fourth dimension.
Yet we get a trifle weary
With Mr. Einstein's theory.
So we must get down to earth at times
Relax relieve the tension

And no matter what the progress
Or what may yet be proved
The simple facts of life are such
They cannot be removed.
「As Time Goes By - Herman Hupfeld」もyoutubeに置いてある。もちろんこの歌詞の部分はない。

統一理論を見つけようとする態度は、単純性を求めているだけの行為ではないか。世界は複雑であり、そこまで理想化できないのではないだろうかという著者の指摘。

理論を観測結果に結びつける方法には2つある。「ひも理論」の研究者はトップダウン的で、ランドール博士のとるモデル構築という態度はボトムアップ的である。プラトン的かアリストテレス的かとも言い直せるという。

いわゆる演繹と帰納の2つの手法の違いだろう。理論物理学にこういう対立的な構図があるなんて知らなかった。

ひも理論とモデル構築のふたつの陣営はいままで対立した立場をとってきたが、最近は状況が変わりつつある。この本で扱われる余剰次元理論も、モデル構築の考え方にひも理論の着想を組み入れることでできあがっている。

次に進むための、物質の成り立ちの復習

・全ての物質は原子からなりなっている。
・原子は原子核とその周囲を回る負の電荷を持った電子からなっている。
・原子核は、正の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子という二種類の核子からなっている。

・陽子は、2つのアップクォークと1つのダウンクォークからなっている。
・中性子は、2つのダウンクォークと1つのアップクォークからなっている。
・このクォークを結びつけているのが「強い力」である。
・電子は下部構造を持たない。

・高エネルギー粒子加速器を使うと、重い素粒子の存在を観測することができる。

素粒子の物理理論「標準モデル」では素粒子に相互作用を果たせる四つの力のうち三つの力が説明される。

標準モデルの疑問点
・重い素粒子は何故存在するのか。
・四つの力以外の力はないのか。
・他の力に比べて重力はどうしてこんなに弱いのか。
・量子力学と重力はどうすれば両立できるのか。

これらの問題に答えを出そうとする理論がこの本で説明しようとする余剰次元モデル。


さあ、次からはしばらく相対性理論と量子力学からはじまっての現代物理学の解説の話。この分厚さはかなりのものでこの本の半分を占める。
章末に要点が箇条書きになっているから、わざわざここにまとめを書く必要もないだろう。

そして、理論物理学の長いまとめの部分が終わると、この本の核心へと入っていく。それらの章を使って整理された理論を踏まえての、この第一部で単純に描かれてきた余剰空間についてのより詳しい説明が待ち受けるわけだ。


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ワープする宇宙3

第3章を読んで。
ブレーンbraneについての話。

ブレーンは1995年物理学者ポルチンスキーJoseph Polchinskiによって「ひも理論」に不可欠なものとして立証される。「ひも理論」のブレーンは、粒子や力までがとらわれている。このブレーンを使うと様々なことが説明可能になる。

余剰次元が見えないのは次元が丸まっているからではなく次元が極めて小さいからである。ブレーンを使って考えると余剰次元が丸く閉じてはおらずブレーンによって境界がつくられている有限の次元となっている可能性も考えられる。

ブレーンには2つの方向がある。ブレーンに沿って伸びる方向と、ブレーンから離れていく方向。高次元世界では、ブレーンが高次元空間全体の境界になっている。この空間全体をバルクと呼ぶ。

境界をなすブレーンについて、パイプを使った比喩で説明がされる。パイプの内部には長い次元と短い2つの次元があるとする。パイプの断面を分かりやすく正方形にする。このパイプ空間を自由に動けるハエのような生き物を考える。このパイプの壁がそれぞれ二次元のプレーンである。この境界に達すると跳ね返ってくる性質がある。境界をなすブレーンは空間よりも次元数が少ない。このブレーンとは別に境界をなさないブレーンもある。これも低次元の存在であるが、このブレーンは両側にバルク空間を持っている。

そのあと有名なシャワーカーテンの水滴の比喩。カーテン上の水滴は二次元面の拘束されている。そして15パズルの比喩。このタイルも移動の方向が限定されている。これらの比喩のようにブレーン上の粒子は動き回る次元を限定されていると考えられる。

宇宙が高次元であっても、粒子や力が三次元ブレーンにとらわれているならば、三次元の宇宙にいるのと全く変わらないように感じられる。ブレーンにとらわれている力はそのブレーン上の粒子にしか影響を与えられない。ただ重力は特別で、重力はブレーンに閉じこめられているとは考えられない。ブレーンは少なくとも重力を媒介として、バルクと相互作用を果たしていると考えられる。宇宙の中には複数のブレーンワールドがあり、ブレーンワールドは孤立してはいない。全体の一部として相互作用を果たしている。

ブレーンを考えると、ありとあらゆる可能性を考えていくことができる。ただその他のブレーンワールドを観測できる可能性は低い。相互作用をしているはずの重力の力も極めて小さい。ただ他のブレーンワールドの存在の証拠を見つけ出せる可能性が全然ないというわけでもない。


ここに来るともう、まとめようにまとめられなくなってくる。というか、突然現れた「ブレーン」って一体何?という疑問に何も答えを見いだせないまま、先へと進んでいく。どうして、このブレーンに拘束されてしまうわけ?どうして重力だけが拘束されないわけ?

ブレーンが何もので、どうしてそういう性質を持っているのかということは何も分からない。先へ進んでいくと分かるのかもしれない。もっと詳しい本を手に入れて、調べてみたい。それはこの本を全部読み終わってからの話。


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ワープする宇宙2

第二章を読んで。

この章では「ひも理論」において余剰次元が観測されない理由について説明している。

「ひも理論」というのは、あとの章で詳しく述べられると思うが、相対性理論と量子力学の両方をうまい具合に説明できる理論のようで、素粒子が振動するひもでできているという考えを基礎に置いている。この理論では余剰次元の存在が不可欠になる。余剰次元というのは、理論的にこの宇宙の空間次元としてあるべきなのに僕たちが存在を感じられない次元のこと。

現実に、僕たちは縦・横・高さの次の四つ目以降の方向を指させない。この空間が三次元だけでなく余剰次元を含めた、より数の多い次元の空間だとしたら、なぜ三次元以外の次元を見つけられないのだろうか?

その理由は、この余剰次元が「巻き上げられている」からだと説明される。だんだんと内容が難しくなっていく。数式は使わないけれど、この丁寧に言葉だけで描いている世界は、まさに日常では考えもしないような特異な世界。数式や用語をできるだけさけて、きちんとした日本語に訳されているからって、日本語が読めれば誰でも分かるなんてそんなレベルではない。

この章の最初には、「不思議の国のアリス」と「フラットランド」の物語を合わせた不思議な物語が載せられている。この世界のアリス(アシーナ)はこの巻き上げられた次元のある世界で不思議な体験をする。これを何度か読んでみると、少しはこの章で描こうとしている世界をイメージできるようになると思う。

この章では、カルツァ-クライン宇宙というのが出てくる。ポーランドの数学者カルツァTheodor Kaluzaは、アインシュタインの一般相対性理論からの帰結として1919年にもう一つの空間次元の存在、つまり余剰次元の考えを提唱した(論文の出版は1921年)。その後、スウェーデンの数学者クラインOskar Kleinがこの空間次元について取り組んで、1926年にこの次元が極めて微少な円状に巻き上がっているという考えを提出した。この次元はあらゆる所にあって、空間のどの点も微少(10の-33乗cm)な円を持っているとされる。この極小の物理量はプランク長さという。とにかくものすごく小さい。

この巻き上げられた時空をイメージするのはとても難しい。そこで喩えとして出されるのが、ホース宇宙。この本以外にもよく使われる喩えらしい。一方向に広いゴムシートでできた平面があるとする。長い方の辺の組をくっつけ丸めて、ゴムホースを作る。ゴムホースの表面は、もとのゴムシートの表面と同じ二次元世界。辺をつないで作ったので閉じている。このホース上を宇宙と考える。冒頭のアシーナが入り込んだのはこれに似た世界。

この宇宙に住む者にとって、巻き上げられた方向が極端に小さい場合は、小さい方の次元は感じることができず、自分が一次元の世界にいると考えてしまう。他の次元でも同じように考えていく。三次元空間で一つの次元が巻き上げられている場合、各点にには微少な円がある。2つの次元を巻き上げる形としてドーナツのような形が考えられるので、四次元空間で2つの次元がこのドーナツ状に巻き上げられている場合には、各点にドーナツがある。

この章には「カラビ-ヤウ多様体」という言葉も出てくる。これは「ひも理論」で使える特殊な数学的性質が定義されている六次元の図形のことらしい。詳しい説明はen.WikipediaのCalabi-Yau manifoldあたりを読むといい。さっぱり分からないけれど。

次は重力と余剰次元について。ここでもうひとつ喩えが出てくる。重力の分散をスプリンクラーでばらまかれる水の量で喩えている。このスプリンクラーでは中心からばらまかれた水が一つの円周上に均等に届く姿を思い描く。そして中心から出る水の量が同じであるが、そのばらまかれる半径が大きくなると、それぞれの点に届く水の量が減ってしまう。これは直感的に理解できる。距離が離れると各点に届く水の量が急激に減っていく。

重力の及ぼす力も、これに似たイメージで考えることができる。このときは円ではなく球面になる。重力の強さは中心点から出てくる放射状の線の数の多さで表すことができる。重力線が出てくる場所と同じ中心をもつ球面を考えると、中心に近い球面のほうがその球面を貫く密度は高くなる。この密度がその地点の重力の強さを表すと見ることができる。中心から距離が離れれば、それだけ重力は弱くなる。これは先のスプリンクラーのイメージで理解できる。

そこで、この重力はどの球面を貫こうと元々同じであり、重力線の総数は同じわけだから、各点での重力の強さはその重力線が貫いている球の表面積に反比例しているだけだとわかる。つまりこの球の表面積は球の半径の二乗に比例するわけだから、ゆえに重力は距離の二乗に反比例することがわかる。これが重力の逆二乗法則。

では、余剰次元がこれにくわわってくるとどうなるか。空間の次元が増えればより急速に距離が離れることで減少してしまう。なぜなら例えば四次元だと球体の表面積は半径の三乗になる。しかし現実の重力は逆二乗法則に従い、僕たちの空間が三次元であることを示している。もし余剰次元があるというならば、どうして逆二乗法則に従うのだろうか。

この解決もホースの比喩で説明をする。一方の端が閉じられてその中央にある針穴からホースに水が入ってきた場合を想像する。ホースに入ったばかりの時は、細い水は三次元的に広がっていく。しかしホースの壁に到達すると、水は長い次元の方向だけに進んでいく。この水の流れを重力線とみなして考える。ホースの断面をコンパクト化された余剰次元だと考える。

この余剰次元の大きさよりも小さなスケールで考えれば高次元の重力の振る舞いが測定できるかもしれないが、この大きさは極めて小さく、それより大きなスケールでは重力はコンパクトな余剰次元がはじめからなかったような振る舞いをしている。


ここまで来ると、早くも、はいそうですか、としか言えなくなる。余剰次元なんてものが始めからないから見えないのか、あるけれどこのようにものすごく小さくコンパクト化されてしまっているから見えないのか、そのことがどうやって区別できるのだろう。存在するとしても極めて小さいために観測できないことがわかっているものをどうやって知るというのだろうか。まあ、そんな疑問を抱きつつ先へと進む。


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