関野吉晴さんが、人力だけで太古の人類が歩んだ道をたどる「グレートジャーニー」。新グレートジャーニーは、どんな道を通って日本人が日本列島にやってきたかを辿る旅。今回はその第二弾の南方ルート。
金曜プレステージ
『地球デイプロジェクト
グレートジャーニー スペシャル
日本人の来た道 ヒマラヤ〜日本15000キロ』
<2008年3月21日(金)21時15分〜23時37分放送>
番組情報:
地球デイプロジェクト グレートジャーニー スペシャル 日本人の来た道 ヒマラヤ〜日本15000キロ - フジテレビタイトルにある、地球(アース)デイプロジェクトというのは、地球の未来を見据え「今、私たちがすべき事は何か…」を考えるきっかけにとフジテレビが作った企画で、今回の放送と別にもう一つ、環境破壊の結果、動物たちの貴重な命が消えている現実を伝える『消えゆく命の物語』という番組が予定されている。小西真奈美、江口洋介、成海璃子の三人それぞれがカナダ、インドネシア、ケニアを旅する内容で、これは3月30日に放送される。
番組情報:
地球デイプロジェクト『消えゆく命の物語』 - フジテレビさて、久しぶりに番組の内容を書いてみよう。悲しいことに、半分以上見損ねてしまった。特にチベットの人たちの生活を見られなかったのはとっても残念だ。
僕が見始めたのは、ラオスのところから。その前にヒマラヤ、ネパール、インド、ブータンとあって、メコン川上流を氷河の一滴からたどる旅だったようなのだけれど、見れなかった。前回の北方ルートとあわせてDVDにして発売してもらえるとありがたいのだけど。
見始めたラオスの場面は、正月を迎えるためにおこなわれる「水かけ祭り」の儀式のあたり。村人たちが準備をしようとするのだけれど、その儀式を司ってくれるお坊さんがいなくて右往左往しているところだった。この儀式は大切で、うまく執り行わないと作物を作るのに必要不可欠の雨季が始まってくれないかもしれない。村長さんも、祈祷師の人もとても困っていたけれど、若いお坊さんしか来てくれなくて、いろいろ手違いもあったりで、一時はどうなることかという状況だった。けれども儀式が終わると同時に見事に大雨になって、終わりよければすべて良し状態だった。責任重大だった祈祷師の人も雨が降ってほんとにうれしそうだった。乾季と雨季がある地域の人たちには、乾季がこのまま続くのではという不安がどこかしらにあるんだろうな。毎年いつも通りにやってくるものでも、今回も必ず来てくれるという保証は実はどこにもないわけで、そのためにも自分たちの罪を流したりするこういう儀式をみんなでやっていくんだろうな。
村を離れたあとは、関野さんは自転車に乗ってメコン川の河口を目指す。河口よりも前でゴムカヌーに乗り換えてメコン川の本流に乗り出す。日本の感覚では考えられないくらい川幅が広い。広すぎて、どこが河口かはっきり分からないくらい広い。
ここでナレーション(益岡徹さん)と映像による人類史の解説。ここらあたりは5万年くらい前は陸地で、その陸地はスンダランドと呼ばれている。そしてこの地で人類は大繁栄したと考えられている。それが、1万5000年前に氷河期が終わり、海面が上昇し、多くの土地が水没し現在の地形になったとされている。ベトナムの景勝地ハロン湾の映像。ここの水没したような地形はスンダランドが海に飲み込まれた様子を残しているらしい。ハロン湾で見つかった2万5000年前の貝塚の貝。これは陸の貝で、ここがその頃陸地で人が生活していたことを示している。
映像は関野さんのところに戻る。近年メコン川の水量は減っているらしい。原因は上流の中国雲南省での森林伐採やいくつものダムの建設の影響のようだ。魚も捕れなくなってきている。浅瀬ではメコン川の上流からの肥沃な泥でアサリやハマグリの養殖をしている。これがメコンの流れの一番最後の恵みだ。
関野さんは一時帰国して、東京の国立科学博物館へ。ミトコンドリアDNA研究の第一人者篠田謙一博士に会う。関野さんは旅で出会った人たちの口の粘膜を採取していて、その分析結果の話。アフリカから出た人類が、3、4万年前に東南アジアのあたりで生活し、そしてその一部が日本にたどり着いたということが、今回のデータからもたしかに読み取れたということらしい。
旅に戻った関野さんは中国を通り、朝鮮半島に向かう。北朝鮮への入国の許可は出たが、監視付きで人気のない道を合計たった一時間しか自転車で走れなかった。つまり人力の旅が絶たれてしまった。現地の人々と交流しながら旅をしていくことが目的なのだから、それが許されない関野さんは心なしか険しい顔になっている。
韓国へ向かう前に、南北に分断された兄弟をつなぐメッセンジャー役を担うことになる。日本で過酷な労働をしていたペクさん。韓国側ではなくあえて北朝鮮に帰国したために韓国の家族とは離ればなれになってしまった。朝鮮半島にはこういう離散家族がたくさんいる。ペクさん自身は最近亡くなってその子供たちの映ったビデオ映像を韓国にいる伯父さんに見せることになった。韓国の田舎に住むペクさんの兄は泣きながらそれを見ていた。ただビデオの映像の日付は8月15日になっていて、北朝鮮での行動がすべて北朝鮮のシナリオ通りなのが丸わかりの映像だった。
前回の北方ルートでは、サハリンの残留朝鮮人の話があって、まさにもう一つの意味での日本人の来た道を描いていて考えさせられることもあった。でも今回はちょっと北朝鮮側の政治的な意図が露骨すぎた。前回のように関野さんが出会った人と話していて、そこにある真実に気づいていくというのであれば、僕の心も動いたかもしれない。北朝鮮側が何も仕組まなくても、関野さんなら自然な人々との交流の中でちゃんと日本人に伝えるべきことを伝えてくれただろうに。
プサンから、サポートの渡部さんと一緒に関野さんは朝鮮海峡をカヤックで渡る。途中海の真ん中でとても静かな凪になっていて、その鏡のような海面はとても不思議な光景だった。潮の流れにまっすぐに逆らっていかないといけない大変なところもあったけれど、無事日本の陸地に到着。釜山からカヤックで8時間弱かかった。
そのあと、日本人の祖先について関野さんの言葉があった。日本人の起源にはっきりしたものがあるわけではなくて、いろんな人たちが混じり合って、突き出され、そういうことをいろんなところで繰り返して、突き出されてきた人たちなのだろうと言っていた。チベットの人たちのことも例に挙げて、彼らのように不毛な土地であっても生きるすべを見つけて、住めば都にしてきた人たちなのだろうとも言っていた。
そのあと益岡さんのナレーションによるまとめ。最近、六、七万年前にアフリカを出た人類は500人程度であったという研究が出されたそうだ。現在六十億人まで繁栄した人類の基礎を作ったのは、勇者だけではなく、はじき出されてきたものが、生き残るために必死の努力と絞り出した知恵のたまものかもしれないと、関野さんの言葉を補足して、おしまい。
それはそうと、第三弾はどうなったのだろう。2年前にあった番組の最後では、今回の第二弾の旅の途中だというのが伝えられ、そしてそのあとに第三弾の「海洋ルート」を計画中とかあったはずだけど、今回の最後には予告はなかった。わざわざ朝鮮半島を経由せずに日本にやってきた人たちがいたのは、ほぼ間違いないだろう。でもカヤックで実際に旅をするのは大変だろうな。これからの旅についてネットで探したなかで一番新しい情報は(他にもあるかもしれないけれど)、
キャノンのニュースリリース(2007.8.30)にある関野さんのメッセージ。「2008年からは、「海のグレートジャーニー」+初期日本人の「海洋ルート」を辿る旅を始める予定です。」とある。放送は数年後になるだろうが、今から楽しみだ!
当ブログ関連記事:
「新グレートジャーニー」...二年前、第一弾のことについて書いた記事
関連資料:
関野吉晴公式サイト...今回放送された南方ルートの近況報告ログを読むことができる。
グレートジャーニーの本とDVD、そして関連本をamazonのスライドにしてみた。グレートジャーニーの表紙はどれも美しい写真を使っているので、いいスライドになった。大型本の第一巻にはamazonに画像がないのでこのリストに入っていないが、ちゃんと探すとamazonで扱っている。このリストに入れてあるが、第一弾の新グレートジャーニー「北方ルート」は二冊の本が出ている。番組中に出てた篠田謙一さんの本や、タイトルの由来でもあるフェイガンの本もリストに入れてある。