2008年03月27日

ちりとてちん(149)

木曜日。あらすじや感想。

ひぐらし亭。オープンの日。あわただしく準備をしている。でも若狭は何もすることがない。みんな気を遣って若狭に仕事をやらせてくれない。手伝わせたら草々にどつかれるとも言われてしまう。

すると、「わかさちゃん」と誰かが声を掛けてくる。誰だか分からずにきょとんとする若狭に、若者が「せをはやみー」と落語の一説を唱えてみせる。これですぐに若狭に分かった。僕も分かった。兄弟子の草原の息子の颯太だ。落語をやめて量販店の店員をしていた草原兄さんが一門に戻ってくるエピソードの時に出た。草原宅に居座っていた草々が落語の練習するのを聞き覚えて、「せをはやみー」と言うようになった。そのときはとても小さかったけれど、芸歴13年の若狭がまだ入門する前の出来事だから、ここまで大きくなっていても不思議じゃない。あの頃耳について離れなかったこの台詞が、ここで出てくるとは。

兄弟子たちと座って話をしている場面。草原の横には颯太がいる。バイトの照明係として呼んだのだ。颯太は今は二十歳の大学生で、落語の研究をしてる。草原は今はなんともないのだが、店員の時も実演でかみまくり、落語に戻っても高座でかみまくりで、落語家として大きな欠点をもっていた。この颯太も、自己紹介の時に親譲りの見事なかみっぷりを披露する。こういう積み重ねられた話を踏まえた演出は、最後の最後まで楽しませてくれる。

若狭は草々に、師匠たちに気を遣わせるので表に出るなと釘を刺されてしまう。役に立ちたいのに何もできない若狭はかわいそすぎる。ひぐらし亭では何もできないので、若狭は「寝床」にやってきてお弁当の準備を手伝っている。箸はエーコのところの若狭塗り箸。エーコは商売上手。いろとりどりのお弁当を見ながら、自分の学生時代のお弁当について話しだす若狭。夕べの残りの茶色い弁当がいやだったというと、熊五郎が料理人らしい、いいことを言ってくれる。この弁当は一日限りだから凝ったことができる。でも毎日の弁当は早く確実に作らないといけないので、そうもいかない。それよりも毎日のお弁当は体のことを考えて作るのが第一。そんな弁当を毎日続けることはそれだけで凄いことだよ、と教えてくれる。回想シーンとして、糸子がせっせと二人の子供のお弁当を作る様子が映し出される。ドラマタイトル「ちりとてちん」という落語が食べ物を題材に出したものだけに、そして塗り箸が大きな役割を演じているわけだし、このドラマでは食べ物も重要なものになる。

ひぐらし亭の一室。師匠たちと糸子が楽しそうに話をしている。そこにお弁当を運んで若狭がやってくる。師匠たちがお母さんは面白い人だと喜ばれる。師匠たちがふたを開けるとおいしそうなお弁当だと言われるが、一膳お箸が足りなかった。そりゃ師匠にこんな失礼をしたら大変なことだろう。お母ちゃんが機転を利かせて師匠たちに、お父ちゃんから聞いた箸の話をし始める。無くなって初めて箸のありがたみが分かる。いつもは食卓の脇役だけど、どんなごちそうがあってもお箸がないと食べられない。まるで、晴れの舞台に出られない若狭へ向けた言葉なのだけれど、若狭はそれどころではないようだ。

若狭は颯太君のいる照明ブースにもお弁当を届ける。晴れの舞台に少しでも参加できるように、照明を一緒にしませんかと言われるが、若狭には学園祭の暗い思い出が頭をよぎってしまう。

夜、ひぐらし亭、いよいよオープン。客席には、糸子、エーコ、小次郎、奈津子、緑さん、「寝床」のみんなの顔も見える。東京から散髪屋もかけつける。天狗芸能の会長も来ている。脇の部屋には師匠たちもいる。お囃子の演奏の中、奥では、草若師匠の遺影の前で出番前の一門が神妙な顔をしている。照明ブースには若狭と颯太がいる。

若狭のスイッチでぱっと舞台が明るくなる。草若一門が出てくる。兄弟子たちに加えて小草々もいる。客席が拍手で出迎える。師匠の夢だった念願のこのときなのに、照明ブースの若狭は今自分がいる状況に、全く同じ状況の学園祭の暗い体験がまたよぎってしまう。

中央にいる草原がまず「ようこそのお運び...」と挨拶をし、ひぐらし亭の名前にはいろんな意味が込められていると、それに絡めて、順にひとりひとりオープンの言葉を述べていく。若狭がそれぞれにスポットライトを浴びるようにスイッチを切り替えていく。「その日暮らし」の未熟な落語家でも高座に出られるようにと草々。蝉のように土の中に長く修行をしてと小草若。一日中という意味もあるので一日いても飽きない落語家とお客の場所としてと四草。そして小草々が若狭塗り箸の話。小草々は若狭の代わりで出ているのだろう。幾重にも塗り重ねる若狭塗り箸のように、稽古を積み重ねて精進していく所存と、一番若い彼が言う。そして草原に戻って、ぎょうさん笑うていただきますようと、皆で礼をして締めくくる。すると客席が拍手でそれに応える。立ち上がって拍手をしている。いつもは強面の天狗芸能の会長も満足そうな顔でみている。

晴れの舞台を迎えている一門の仲間たちの幸せな顔を見ながら、若狭にもほんの少し笑みが出る。順ちゃんの言葉を思い出す。主役になるのはスポットライトが当たっている人ばかりではない。人にライトを当てるのは素敵な仕事だと。

音楽がオープニング曲のゆっくりしたハミングに変わる。若狭は照明ブースの隙間から、喜んで拍手を送っているお母ちゃんの笑顔を見ている。若狭自身はまだ晴れない顔をしている。でもお母ちゃんの顔見ているうちにかすかに何かに気付いた表情を見せて、お腹を優しく抱きしめる。自分でもつかみきれない思いがこみ上げてきましたと上沼恵美子のナレーション。今日はそれでおしまい。あと残り二回。


以前、「純情きらり」のことを書いていたときには、そんなに時間がかからなかったのに、久しぶりにあらすじを書こうと思ったら、時間がかかるかかる。最終週だから、いままでの場面もいろいろ浮かんでくるから。簡単にまとめられなくなる。あらすじなのに文章も長くなる。
そういうわけで三連投。


posted by takayan at 14:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ちりとてちん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ちりとてちん(148)

水曜日のあらすじ、および感想

冒頭から高座の若狭。ここは常打ち小屋の舞台だから、もう昨日の放送からそれだけ時間が進んだのか?
すると、舞台の袖から女の子が出てくる。昨日の若狭の妄想の中に出てきた娘(子供時代のビーコ役をやったのと同じ女の子)。
落語の途中なのに、その子はかまわず入ってくるが、若狭の方も落語を中断してそのまま話しこむ。若狭が叱ると女の子は泣き出してしまう。さらに舞台の脇から無精ひげを生やしてすさんだ草々も怒鳴りながら出てくる。なんかちょっと悲惨だな。これはきっと夢だ。昨日はビーコが眠りにつくところで終わったから、その夢の中だ、きっと。そう思ってみていると、場面が突然切り替わり、現実に戻る。徒然亭のみんなで話し合いの途中だった。夢ではなく妄想か!冒頭から何の前置きもなしに始まるとは。最終週らしく若狭の妄想は視聴者まで巻き込んでくれる。

舞台挨拶についての話し合いの途中、若狭は気分が悪くなる。つわりがひどそう。常打ち小屋の初日は無理じゃないかと心配して声を掛けられる。大丈夫だと振る舞う若狭。話し合いの中で若狭は今度の舞台で創作落語ではなく「愛宕山」をやってみたいという。愛宕山は若狭が最初に出会った、思い入れのある落語。若狭は、最近落語に対して感じる違和感を皆に話し、この落語をすることで落語にもう一度向き合いたいと言う。創作落語をするのか若狭に確認した四草は、若狭の落語に対する心の変化に気づいているのかもしれない。

場面は変わって、小浜の魚屋食堂。そこに小梅ちゃんが入ってくる。ビーコのおばあちゃん。製作所の和田夫妻が来ている。ドラマ当初は小梅ちゃんは製作所の秀臣をとても憎んでいたが、いまでは完全にそのわだかまりはとれている。こういう気さくな会話をちゃんと最後の週に入れてくるのは分かりやすくてとてもいい。和田製作所の息子はいろいろあって魚屋食堂の娘順子と結婚して食堂の跡取りとなっている。和田夫婦は息子の焼く魚を待っている様子。店の中には、順子と、その父もいる。その父が自分も秀臣のように隠居したいが跡取りの腕がまだまだと言うと、みんなに笑いが起きる。そこにうわさ話の好きな順子の母がやってきて、ビーコちゃんがおめでなんでしょと小梅ちゃんに話しかける。このお母さんの噂好きという特徴をそれも主人公の噂を運んでくるところがなかなか気の利いた展開だ。小梅ちゃんもうれしそうに認める。それを聞いて順子が何かを思う。これが魚屋食堂の最後のシーンなのだろう。小浜のみんなのことをこの一場面の中にきれいに描ききっているのがすごいな。

場面は草若邸。練習する若狭。つわりがひどそう。そこに小次郎おじちゃんが、おめでとうをいいに来た。話をしているうちにまたお金儲けのこと考えて入るんでしょうと若狭に指摘されると、小次郎がいつものようにふてくされる。それを見た若狭が急に妄想を始める。小次郎と同じようなふてくされた仕草をしている娘の姿。最近の妄想は、楽しいのは変わりないが、ちょっと悲観的な妄想ばかりだ。物語の最初の頃はそんなのばっかりだったと思うけれど、若狭の成長に伴い明るく楽しいものへと移っていったのにまた逆戻り。妄想が悲観的なのはつわりがひどく不安定な若狭の状況を表しているのだろうか。結局小次郎は練習が忙しいからと追い返されてしまう。主人公との小次郎との一対一の絡みはこれで終わりかな。何かまた一騒動あってもいいけれど、こういう感じシーンで終わるのもこの人らしくてありだけど。

今度は、糸子母さんがそばをもって若狭のところにやってくる。昨日の回で小浜から駆けつけてずっとこちらにいるのだろう。そばは栄養があるから食べなさいと忍者の携帯食だった話をする。喜代美はそばを食べきるが、そのあとこっそり台所で吐いてしまう。

夕方、若狭が草々に稽古をつけてもらう場面。そこにまた糸子がやってくる。そして糸子は草々に若狭を休めてやってくれと頼む。若狭は何ともないと否定するが、お母ちゃんにはそばを吐いたこともすべて気づかれていた。常打ち小屋は師匠の夢だからどうしても役に立ちたい、自分の体のことだから自分がよく分かると言い張るが、糸子はあんたは昔お母ちゃんのおなかの中におったんやからおかあちゃんには分かると言われる。草々も若狭とおなかの子が一番大事だからと糸子の提案を受け入れる。若狭は初日に出られなくなってしまった。

おそらく別の日。常打ち小屋の客席で若狭はひとり寂しく舞台を眺めている。そこへ順ちゃんがやってくる。もう二人は三十過ぎの設定だけど、若狭は昔のように甘えた声になって泣きながら順子に抱きついてしまう。

順ちゃんは若狭にとって救世主のような存在。昔から困ったときにはいつも相談にのってくれていた。奈津子とはまた別の支えになってくれる。同い年なのにとても達観していてきっぱりと言い放ってくれたり、未来を見通したような助言をしてくれたり、とても頼りになる友人だった。もう若狭も成長し順ちゃんの助言も必要なくなっていたが、最終週の主人公のピンチに、呼んだわけでもないのに、駆けつけてくれた。

部屋で、ビーコは順ちゃんに悩みを相談する。晴れの舞台に出られなくなった若狭の気持ちは一気に昔のダメな頃のビーコに戻ってしまった。いざというときに役に立たない脇役のビーコ。回想シーンとして学園祭の三味線の発表会。練習から逃げてしまいエーコにスポットライトを当てる裏方をしていた頃の映像が出る。順ちゃんも高校の学園祭がビーコにとってのトラウマだと十分に承知している。落ち込んでいるビーコに、順ちゃんは大丈夫やと言ってくれる。確信があるのか、ビーコを支えてやろうとはったりを言っているのか分からないが、順ちゃんは、今回は落語家としての13年の経験があるから同じ結果にはならないと言う。新しいものが見えてくるはずだ。ひさしぶりのそして史上最大の予言だとナレーション。

さて、残り三回でどうなるのだろう。こんな重大なときに、すんなり常打ち小屋のお披露目ができずに、昔のビーコになってしまうなんて、なかなか楽しませてくれる。そして順ちゃんの大予言とは。


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ちりとてちん(147)

火曜日のあらすじと感想

昨日の話の最後で、若狭がこの常打ち小屋の名前を「ひぐらし亭」にしてはどうかと思いついた。
そのことを若狭が誰かに話す場面から始まる。最初、若狭が誰と話しているのか分からないのだけど、カットが切り替わると数年経ってちょっと雰囲気の変わった奈津子だった。先週の話で、めでたく肉じゃが女になることのできた奈津子さん。若狭の叔父の小次郎と結婚したので、若狭とは親戚になった。

そういえば、この人が塗り箸の取材にビーコの和田家を訪ねてきたことから、このドラマが大きく動き出したんだっけ。
ビーコが小浜を飛び出して大阪に向かったのも、大阪に仕事のできる女性としてあこがれていた奈津子が住んでいたからだった。ビーコの理想の女性像だった奈津子は、実は、部屋を散らかしっぱなしだったり、ビーコに負けず劣らずコンプレックスの固まりだったりしたのだけれども、それでも大阪に出てからのビーコにとっては、お姉さん代わりの頼れる相談相手だった。人生経験の多さからか、フリーライターという仕事からか、人間観察には鋭いところがあった。奈津子とビーコの場面はこれが最後ではないだろう。女流落語家・徒然亭若狭の成長を取材し続けている奈津子は、まだまだ仕事をしてもらわないといけない。

草々は、柳眉と尊建に「ひぐらし亭」という名前のことで相談している。草々とこの二人は、かつて若手実力派の上方落語三国志と並び称されるライバルだった。落語なので競い合う場面というのがあるわけではないけれど、徒然亭一門が高座に上がれない不遇の時代、草々はかつてのライバルたちに後れを取っていることを悔しがったりしていた。彼らは草々にとって徒然亭の外の落語界とつないでくれていた存在だった。ひぐらしは徒然亭の紋に使われているので、徒然亭に偏っていると嫌う先輩たちがいるかもしれないが、二人はこの名前にすることに協力すると約束してくれた。これがこの上方落語三国志のドラマの中での最後の場面になるのだろう。実力のある三人がそろうことで、徒然亭だけでなく、上方落語のみんなでこの場所をもり立てていくことをあらわしているシーン。それにしても鼻毛て。

若狭が妊娠していることが分かった。「寝床」の熊五郎が常打ち小屋のオープン向けに試作した弁当を食べている途中、若狭がウッときたのでひと騒動起きてしまった。病院で診てもらい若狭は菊江さんと草若邸に帰ってきた。待っていた草々や兄弟子たちに報告し、それから師匠の遺影にも報告した。このとき草々は子供の名前は落太郎か落ち子にするとか言ってたが、実際どんな名前になるんだろう。

若狭は電話で小浜の家族に妊娠したことを報告する。実家のみんなも盛り上がる。妄想のあと。すぐにお母ちゃんがやってくる。小浜と大阪だから、距離は十分あるはずだけど、いつものことだからもう慣れた。朝ドラではよくあること。ちりとてちんでもよくあった。それが、おかあちゃんがどんだけ喜代美のことを大切に思っているかを示す描写になるので、おかあちゃんが現れるだけでぐっと来る。自分の娘の元に飛んでいきたい気持ちがそのまま映像になる。

喜代美はとても幸せそう。お腹に手を当て、産まれてくる子のことを思っている。布団の中でいつのまにか寝てしまうが、その幸せな寝顔の喜代美をおかあちゃんが優しくなでてやる。言葉はないけれどこれだけで、どんな言葉よりもおかあちゃんの気持ちがほんとうによく伝わる。料理に手をつけないまま寝てしまったのでラップを掛けようとするとビリッと破く音かしてしまう。喜代美が起きてしまわないように静かにラップをカットしようとする仕草が、糸子さんらしくてたまらなくいい。

ドラマ当初、ビーコが小浜から旅立ってしまうと、糸子さんの出番が減ってしまうのではないかと、残念に思った。実際登場人物も増えて、糸子さんの出番も減ってしまったけれど、それでも糸子さんの場面はいつもいい。


posted by takayan at 13:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ちりとてちん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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