この頃はみんなもいろいろブログにこのことを書いて(当時の「冥王星」の注目度の推移 - Yahoo! Japan ブログ検索)、昔天文少年だった僕も喜んでいくつか記事を書いたのだけど、悲しいことに、日本中で書かれたたくさんの記事に紛れてほとんど誰も読んでくれなかった。それが今頃になって、コメントをもらうなんて。ちょっとうれしい。
さて、この機会に、冥王星のことをちょっと調べなおしたら、6月11日の次の記事を見つけた。コメントしてくれたおかげだ。二週間以上も遅れた話題になるけど、次の引用は国立天文台が発行している「アストロ・トピック」というメールニュースの過去ログより
2006年夏の国際天文学連合 (IAU) 総会で、太陽系の惑星の定義が採択されました。実は、そのときに同時に、「太陽系外縁天体 (注1) で、なおかつ準惑星」という新しい天体の分類を作ることも採択されました。しかし、この分類を新しく作ること自体は採択されたのですが、残念ながら、英語名については合意には至りませんでした。
その後、日本国内では、日本学術会議 物理学委員会 IAU分科会の中に、「太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」 (委員長:海部宣男 (かいふのりお)IAU日本代表、前国立天文台長) が設置され、太陽系天体の英語名に対応する推奨和名を決定しました。dwarf planet には準惑星、trans-Neptunian objectには太陽系外縁天体という和名が付けられました。上記の新しい分類の天体については英語名すらIAUで決まっていませんでしたが、委員会では様々な観点からの議論を総合して、冥王星という長い間親しまれた天体に敬意を表する意味合いを込めて、「冥王星型天体」という和名を推奨することにし、IAUにもその趣旨にそった名前を決めて欲しいという要望を提出しました。
この要望を受けて、IAUで太陽系天体を扱う第三部会の中でも議論がすすみ、このたびノルウェーのオスロで開催されたIAU評議員会で、最終的に plutoidという英語名にすることが決定されました。冥王星の英語名である Pluto をもとにした、冥王星の仲間という意味での命名です。冥王星という名前を大事にする「冥王星型天体」という推奨和名とも相性のよい命名となりました。
太陽系天体の名称等に関する検討小委員会の委員でもあり、今回のIAU評議員会に出席した岡村定矩 (おかむらさだのり) ・東京大学副学長は、「冥王星という天体に敬意を表するという方向性で決まった日本の推奨和名と、ほぼ同じニュアンスを持つ英語名に決まったことは、たいへんよかったと思っています」と述べています。
つまり、海王星よりも外側を周っている準惑星の英語名を、冥王星Plutoからとって、Plutoidと呼ぶことに決まったという話。和名はすでに決めてあって、「冥王星型天体」。今のところ、冥王星型天体plutoidには、冥王星とエリスEris(2003UB313と呼ばれていたもの)が属している。
でも考えてみると、エリスは実は冥王星よりも大きい星なので(第二位の準惑星、冥王星)、もしかするとこのグループはerisoidと呼ばれることになったのかもしれない。でもそうはならなかった。その理由が「敬意を表して」ということなのだろう。これから、エリスのように大きな仲間が見つかって、冥王星の順位がどんどん下がっていったとしても、このグループは冥王星型天体と呼ばれ続ける。よかったね。プルート、君はこれからもグループを代表する天体だよ。
●用語の整理
海王星より外側にある天体を、太陽系外縁天体trans-Neptunian objectと呼ぶ。
準惑星の定義をみたす天体を、準惑星dwarf planetと呼ぶ。(定義は省略w)
ちなみに、現時点で準惑星と呼ばれる天体は、冥王星plutoとエリスErisとケレスCeres。
この二つの意味を合わせて、
つまり、太陽系外縁天体であり準惑星である天体のことを冥王星型天体plutoidと呼ぶ。
冥王星は、太陽系外縁天体であり、準惑星であり、その二つの条件を満たすことにより、冥王星型天体である。
同様に、エリスも太陽系外縁天体であり、準惑星であり、冥王星型天体である。
もちろん、海王星より内側にある準惑星は、冥王星型天体とは呼ばない。
そういうことで、ケレスは火星と木星の間にあるので、準惑星ではあるが、冥王星型天体ではない。
追記
冥王星族plutinoという用語もある。これは冥王星型天体plutoidとは別の分類で、冥王星の軌道ととてもよく似た特徴を持つ天体を指すものでである。これにはケレスもエリスも含まれない。
補足説明
太陽系外縁天体とは、海王星より外側の天体のことなのだけれど、冥王星は海王星より内側(太陽に近い位置)を回る期間がある。これは冥王星の軌道が偏った楕円であるために起きる現象。冥王星が惑星の一つだった頃、惑星の順序で並べて水金地火木土天海冥と呼ばれていたが、冥王星が海王星の軌道の内側に入り込んだおよそ二十年間、水金地火木土天冥海とも呼ばれていた。
太陽系外縁天体というのは、正確には、軌道長半径を比べて海王星よりも大きい天体のことらしい(上記引用のアストロトピックの脚注より)。この軌道長半径というのは、軌道の中心と一番その中心から離れている楕円上の点との距離のこと。