結局、僕の得ていた情報も、先人たちの研究が巡りめぐって断片化していた物に過ぎない。それを組み立てて元に戻して楽しんでいるだけだ。先入観がなかったせいで、僕はちょっと違うものを組み立ててしまったみたいだけど。
アビ・ヴァールブルクの研究を知らずに、この問題を語ってはいけない。今はとても反省している。ただこの本『サンドロ・ボッティチェッリの《ウェヌスの誕生》と《春》』の存在にたどり着くのはそう簡単ではなかった。この本に、これほど詳しい研究が載っているということは、本を開いてみるまで分からなかった。
頑張って翻訳していたイタリア語の文章も、この本でちゃんと日本語に翻訳されて引用されている。徒労感よりも感激の方が強い。いくつかの疑問はこれを手にしてすっきりした。ただ、これを読んでいても中央の人物についての自分の着想が間違っているとは思えない。