前回のプライミーバルでは未来の海生哺乳類がでてきたけれど、Wikipediaなどで現実の海生哺乳類を調べてちょっとまとめてみた。
アザラシやジュゴンとかいろいろいるのだけど、最近の分類で整理するとこんな感じになる。他の資料だとまた別の分類の流儀があるかもしれないが。
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ジュゴン目(海牛目) − アフリカ獣上目 近蹄類 テティス獣類
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クジラ目 − ローラシア獣上目 鯨偶蹄目 鯨反芻亜目 鯨凹歯類
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鰭脚類(アザラシ上科) − ローラシア獣上目 ネコ目 イヌ亜目 クマ下目
ジュゴン目に、ジュゴン科とマナティー科の2科があって、それぞれに
ジュゴン、そして
各地のマナティが属している。マナティは海域だけでなく淡水域にも生息している。テティス獣類というのは太古のテティス海周辺で進化し繁栄した種のグループ。
クジラ目は言わずと知れた水生哺乳類。たいていは海生だが淡水に棲むものもいる。ハクジラ亜目とヒゲクジラ亜目があり、ハクジラ亜目の中にはイルカやカワイルカの種類もいる。鰭脚類には、セイウチ、アザラシ、アシカ、トド、オットセイなどが含まれる。細かく分けると、鰭脚類にはセイウチ科、アザラシ科、アシカ科の3科があって、さらにアシカ科にはアシカ亜科とオットセイ亜科の2つある。トドはアシカ亜科に含まれる。
絶滅種ではアフリカ獣上目 近蹄類 テティス獣類に属する
束柱目がある。これには
パレオパラドキシアと
デスモスチルスが含まれる。1000万年以上前に絶滅したものだが、どちらも日本で化石が発掘されている。
また、海を生活の場としている個別の生物種として、
ホッキョクグマ(ローラシア獣上目 ネコ目 クマ下目 クマ上科 クマ科 クマ属)と
ラッコ (ローラシア獣上目 ネコ目 イヌ亜目 クマ下目 イタチ上科 イタチ科 カワウソ亜科 ラッコ属)がいる。
海生哺乳類の歴史については以下の項目で記述されている。
原クジラ亜目鰭脚類 # 鰭脚類の起源アシカ科 # 海生哺乳類の中での位置づけリンク先に書いて海生哺乳類の歴史を簡単にまとめると、海に君臨していた魚竜などの爬虫類が絶滅したあと、草食性のジュゴン類、肉食性ないし雑食性の祖先をもつ鯨偶蹄類のクジラ類がその生態的地位(ニッチ)を占めるようになった。クジラの祖先は当初沿岸で水陸両棲であったが、次第に海での生活に適応するものも現れた。やがて始新生と漸新世の境界における環境の激変で現在のクジラにつながるものを除いて死滅してしまった。この絶滅で空いた沿岸部における食肉性の生物のニッチに食肉目のクマに近縁な種が進出し鰭脚類へと発展し、現在に至る。
生物の生態を考えるときは、ニッチというのがかなり重要になってくる。その地域において限られた資源を生物が利用する場合、最終的に同種の生物がその資源を独占してしまう傾向がある。同じ場所で同じ資源を共有しているように見えるものも、タカやフクロウのように時間帯がずれていたり、よく見るとそれぞれが別々のニッチを占めていると分かることが多い。
以上が、海生哺乳類についてのまとめ。
以前、同じように動物種に関して興味を持って調べたことがある。
takayanの雑記帳: 「ゾウの祖先は水生動物」説 2007年03月09日
takayanの雑記帳: 地球ドラマチック「知られざるカバの世界」 2007年03月15日
この頃カバとクジラが近縁だと分かって、詳しいことを知ろうとWikipediaの記事を面白く読みまくっていたのだけれど、当時
鯨偶蹄目という用語は載っていなかったし、知りもしなかった。この鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)は偶蹄目とクジラ目の合成語。従来クジラ目と偶蹄目は姉妹目であると分類されていたが、近年の遺伝子による研究の結果としてクジラが偶蹄目のカバ
と近縁であることが明らかになったため、クジラ目を従来の偶蹄目の中のカバのそばに配置し全体を新たに鯨偶蹄目と呼ぶようになった。
たった二年前なのにこういう変化が起きている。気を抜くと、すぐに取り残されてしまう。
哺乳類 # 真獣類分類・系統研究の動向。
WikipediaのこのページではSINE法による解析で明らかになったと紹介されているが、そのSINE法による解析の概要は東工大岡田研究室の
クジラと偶蹄類の系統関係の解明で簡単に説明されている。
素人考えでは生命の設計図であるDNAを調べれば簡単にいきそうなのだけれど、SINE法を使わないとそう単純にはいかなかったことも書いてある。
絶滅種のデスモスチルスに関しては復元についての動画を見つけた。サイエンスチャンネルの
(7)絶滅哺乳類の復元〜デスモスチルスの謎〜。束柱目(デスモスチルス目)と海牛目(ジュゴン目)は同じテティス獣類として分類されているが、同じテティス獣類にはゾウ(長鼻目)も含まれる。
海生哺乳類からは離れるが、ゾウは「ゾウの祖先は水生動物」説のときに書いたけれど胎児の段階で水生生物と似た特徴が現れる。これがどれくらい前の祖先の特徴を反映したものかまでは分からない。関連する情報を探してみると、知恵袋に「
ゾウの精巣が脚の間ではなく背中の方にあるのはなぜですか?そこでも冷却されるは...」があった。質問者は水中生活に否定的で、ベストアンサーの回答者は水生に対して理解があるというちょっとしたねじれがあるけれど。回答の中には次の論文へのリンクが載っている。
WHY THE ELEPHANT HAS INTRA-ABDOMINAL TESTES(英語PDF)
別の回答者がハイラックスはどうなっているか比較対照になると書いてあるが、実際どうなっているかまでは書いてなかった。検索してみると、日本語での詳しい説明はなかったが、ブログ
NoteBook 動物園実習レポート〜第九日目〜に、ハイラックスの解剖を見せてもらったときハイラックスの精巣が腹腔の背中側についていたという記述がある。ハイラックス(岩狸目)はゾウと同じアフリカ獣上目 近蹄類には属しているが、テティス獣類には属してはいない。近蹄類は岩狸目の祖先が基本にあって、まず重脚目(絶滅種)が分化し、その後テティス獣類の長鼻目、海牛目、束柱目が分かれたと考えられている。そのハイラックスの精巣の位置がこの場所にあるということは、ゾウの精巣の位置だけでは原始のゾウの水生の根拠にはならないということになるだろう。ただもしハイラックスの他の臓器もゾウのように水生の痕跡があるのならば、テティス獣類と分化する前のハイラックスの祖先には水生の時代があって、そしてその子孫のテティス獣類は体の内部構造から水生の生活になじみやすかったのではないかと推測することができる。このくらい既に研究してそうだけど、ネット上には日本語で読めるものは見つからなかった。
不正確な情報もあるかもしれない Wikipedia で調べているので、正確な情報が必要な人はそれなりに裏を取ってください。
posted by takayan at 23:47
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