それから出番は少ないのだけど、レスターの台詞も皮肉が利いててツボにはまった。まあその棘のある言葉でリークは自尊心を傷つけられていたんだろうし、スティーブンもすっかり敵だと疑ってしまったわけなんだけど。
アビーとコナーの関係もキャロラインが間に入って、コナーの片思いという状況からちょっと立場が入れ替わってしまったり、変化があって面白かった。前回二人で歌を歌ったり、第3章はどうなるかまだ知らないけれど、二人の関係がいい雰囲気で続いていきそうでよかった。
ヘレンの悪女ぶりは、どこまで行くんだろう。未来のテクノロジーやクローン兵まで手に入れて、いったい何がしたいんだろう。もうそこまで行ったら、無敵になってしまうんじゃないかと。どんな世界に変えたいというのだろう。今回カッターが褒めるとその気になったり、やっぱりよりを戻したいんだろうか。
リークが死んだ後の、スティーブンとヘレンがニックと出会う場面からの展開がすごいと思う。スティーブンはヘレンから仲間はレスターのせいでみんな死んでしまっていると思い込まされていて、レスターを探して決着をつけると息巻いている。ヘレンはそれを思いとどまらせて、この場を早く逃れようとするがうまく説得できない。スティーブンが居もしないレスターを探しまわっている途中、二人は階段に座っているニックに出会う。ニックは死んだはずなのに。お互いへの複雑な感情をぶつけ合いながらも、人類が滅ぼされるかもしれないという究極の危機を前に共闘する三人の姿がいい。この動機付けを行うニックのリーダーらしさもいい。
餌をやるときに慣らしていたサイレンで生物たちをおびき寄せられるとヘレンがアイデアを出すと、ニックは生物と未来生物を一緒の部屋に閉じ込めて滅ぼし合わせる作戦を立てる。三人は柵のある部屋に来てサイレンのスイッチを押す。ヘレンが内側のボタンを押して扉を作動させてから入ろうとすると、ラプトルが追いかけてきて足首をかまれる。ヘレンは足はラプトル、体は閉じようとする扉に挟まれて身動きが取れなくなる。ニックは外側のスイッチを蹴り壊して扉が閉まるのを止め、スティーブンは拳銃でラプトルを黙らせる。もうスティーブンもヘレンが自分をだましているのが分かっているだろうに、二人で元凶であるヘレンを助けようとする構図も憎らしい演出だ。
ヘレンを助け出すことに成功するが、外側のボタンを壊したせいでドアが動かなくなってしまう。ドアを閉めるには残された内側のボタンを押す以外にない。誰かが閉じなければいけない状況になった。そこでニックが自分から名乗りをあげる。スティーブンは止めようとするが、ニックはレスターは敵じゃないと言ってドアに向かう。そのときスティーブンは確信したんだと思う。みんなのために躊躇なく命を投げ出せるこのニックはやはり自分が信頼していたニックだということを。そしてこのニックが犠牲になってはいけないと悟ったのだろう。
タイミングよくヘレンが待ってと呼びとめるとニックが振り返る。そこをスティーブンが殴りつける。ニックがよろめいている間に、スティーブンが素早く中に入りドアを閉める。ヘレンがニックを呼びとめたのは、スティーブンが身代わりをしそうな様子がうかがえたからかもしれない。ヘレンも正直なところやはりニックの方に生きていてほしいと願っていただろう。
閉まってしまったドアを懸命に叩き、ここをあけろと叫ぶニック。でもそれはできないと断るスティーブン。スティーブンは避けられない自分の死がもうすぐやってくるというのに、とても爽やかな表情を見せている。アビーとコナーに無茶をするなという言葉を残し、部屋の中央に向かう。スティーブンが生物たちにやられるシーンは映らないが、ドアの丸い窓から見ているニックの表情からスティーブンが死んでしまったことが分かる。最後の最後まで仲間思いのいいやつだったスティーブン。大切な友人の死にドアの前で泣き崩れるニック。それとは対照的にその場を静かに立ち去っていくヘレン。
スティーブンの埋葬のあと、ジェニーとニックが並んで帰っている場面。飲みに行かないかとジェニーが誘う。もうジェニーは婚約解消しているから、何も問題はないだろう。そこへレスターがやってきて、出動の要請をする。レスターは、邪魔をして悪いと妙に気を利かしたセリフを付け加える。ジェニーは先に向かうが、カッターはその場に立ち止まり振り向いて、こっそりもっていたクローディアと自分が二人で映っている小さな写真を手に取り、やぶり始める。そして細かくなった紙切れをその場に落とす。とても印象的な場面だ。先で待っているジェニーに呼びかけられて、それに応えて前に進んでいく姿も、ニックの決心が表われているいいシーンだ。今この墓地でスティーブンと別れたように、クローディアとも別れようと決意したのだと思う。
このニックの態度は、リークのアジトでのヘレンとの対話を踏まえているだろう。
ヘレン「世界は新しい方向に進化した。ジェニーを見ればわかるでしょう。亀裂を利用すれば、世界を作り変えられる。ぞくぞくしない?」
ニック「いや、私は世界を変えたいとは思えない。むしろあるがままで十分に美しいと思っている。時の流れに干渉すれば、全ては壊れる。分かっているだろう。」
ヘレン「未来は壊れたりしない。ただ変わるだけ。」
クローディアの写真を破る行動はニックのこの言葉の通りなのだと思う。ニックは世界が変わることの悲しさを知っている。偶然起きてしまった出来事はどうすることもできない。それを取り戻すために人為的にそれを起こして今の世界を壊すことはできない。ニックはこの墓地でクローディアへの想いとも決別したんだ。そう思う。
それにしてもスティーブンの死は残念だ。チームも今後は体力勝負担当がカッターだけでは大変になるだろう。今回のラストで4人で車に乗り込むとき、銃が下手なキャラとして印象付けられてきたコナーがガチャッと銃の準備をする場面は、頑張ってスティーブンの分まで補わなくてはいけないというコナーの意気込みや、今後の展開に対する不安の両方を示しているのだろう。
最後に、大勢の清掃員が出てきて、意味ありげなヘレンのニヤリとした顔で、第2章が終り、次の章へ続く。第1章のクリフハンガーには及ばないが、これも次の章を期待せずにはいられない終わり方だった。さあ、NHKはいつ続編をいつ放送してくれるのだろう。かなり期待して待とう。10話もあるから、今年の正月のような一挙放送は無理かもしれないけれど、来年の前半にはやってほしい。そして第4章と第5章もできるだけ早く。それから時間枠に入れるためにカットしなくてもいい時間帯でやっとほしい。
第3章の放送の時は第1章と第2章の再放送も必ずお願いしたい。できれば、インポッシブルピクチャーズの作った他の番組も特集放送してほしい。「プレヒストリックパーク」はちょっと飽きたから、せっかく古生物に興味を持ってくれた人もいるだろうから、「タイムスリップ!恐竜時代」や「前恐竜時代」などの再放送もやってほしい。ついでに「Walking with Beasts」は日本では放送されていなかったと思うので、この機会に是非日本版を作ってほしい。それと、イギリスドラマもちゃんと枠を作って放送を続けてほしい。