2012年03月05日

Windows 8 Consumer Preview のナレーターとキー操作

Windows 8 の Consumer Preview 版が公開されました。操作法が一新されるらしいという Windows 8 は、視覚障害者の方々にとって使いやすくなるのかとても興味があったので、実際に触れて試してみました。あらかじめ言っておきますが、ここに書いた情報は、視覚障害者のかたが単独で使うには、まだ不十分だと思います。とりあえず、現在触ってみて確かめられたものが書いてあります。

配布している場所は、Windows 8 Consumer Preview です。今回は実機ではなく、VirtualBox に入れてみました。試したのは32ビット版と64ビット版の両方です。

◆ Haruka 確認!

Windows 8 の Consumer Preview には、最初から Haruka Desktop という名前の合成音声が入っていました。何の追加インストールも無しに日本語音声で喋ってくれます。これは画期的なことです。実際に製品版ではどうなっているかわかりませんが、これは大いに期待できます。

Windows 8 にも Windows 7 と同様なコントロールパネルがあり、そしてやはり同じように、音声合成のプロパティがあって、音声合成タブがあります。そこを開くと選択できる音声として「Microsoft Haruka Desktop – Japanese」とあります。

speechproperties

以前作った aozoraVoice は Windows 8 でもどうやら動くようですが、これでも Haruka Desktop は音声として選択可能でした。aozoraVoice は Microsoft Speech Platform と SAPI5 両方の音声を利用できるようにしてあるので、念のためスクリプトをいじって確認してみると、ちゃんと、"Speech.SpVoice"ではなく、"SAPI.SpVoice"の音声として Haruka Desktop がありました。つまり、Haruka Desktop は SAPI5 の音声でした。

それから、Microsoft Speech Platform の Haruka も Windows 8 CPでも動きました。今までのWindowsと同じ方法でインストールできます。聞き比べてみるとすぐに分かりますが、同じ声でした。

◆ 新しいナレーター

Windows には以前から ナレーターという簡易的なスクリーンリーダーが入っていました。しかし、いままでは標準で日本語音声が入っていなかったため、誰でも簡単に利用できる状況ではありませんでした。今回のWindows 8  Consumer Preview  には Haruka Desktop が入っているので、即このナレーターを利用できます。さらに、ナレーターそのものもかなりの機能拡張が行われています。

・ナレーターの起動
ナレーターの起動はとても簡単です。Windowsキーを押しながら、エンターです。これでHarukaが喋り出します。なお、Windows 7 で起動させようとすると、 Windows + U のあと、ALT + N とする必要がありました。今回もこの方法は使えます。

・コマンドの実行
ナレーターは画面上の情報を読みあげてくれるのですが、どこを読むのか、どう読むのかは、利用者がキーの組み合わせで指示をします。これをコマンドと言います。Windows 8 CP では、基本的にコマンドはWindows キーとALTキーを同時に押しながら、文字キーという組み合わせになっています。たとえば、Windows+ALTを押しながら左右矢印キーで、項目を移動します。その項目に決められた動作を実行するには、Windows+ALTを押しながらスペースキーです。

Windows+ALTを押さえたままで操作するのも面倒なので、コマンドが連続するときは、ナレーターキーをロックして、文字キーだけで操作する方法も用意されています。このナレーターキーをロックするコマンドは、Windows+ALTとZキーです。この状態にしておくと、たとえば、左右の矢印だけで、項目を移動できるようになります。このナレーターキーのロックを解除するには、同じコマンド、つまりZキーを押します。

ナレーターには数多くのコマンドが用意されています。ナレーターの設定ウィンドウにあるコマンドのリストを書き出すと次のようになります。60もあって覚えるのが大変ですが、最初の20ぐらい覚えておけばいいでしょう。注意することは、空白がアクションの実行で、エンターが検索だということです。

読み上げを停止する Ctrl
1次的なアクションを実行する Windows+Alt+空白
次の項目に移動する Windows+Alt+→
前の項目に移動する Windows+Alt+←
含まれる領域に移動する Windows+Alt+↑
含まれる領域の最初の項目に移動する Windows+Alt+↓
コマンドの一覧を表示する Windows+Alt+F1
現在の項目のコマンドを表示する Windows+Alt+F2
検索モードを切り替える Windows+Alt+Enter
読み上げを開始する Windows+Alt+円記号
ナレーターを終了する Windows+Alt+Esc
ナレーターキーをロックする Windows+Alt+Z
キーをアプリケーションに渡す Windows+Alt+X
キーボード操作のアナウンスを切り替える Windows+Alt+F12
フレーズを繰り返す Windows+Alt+V
音声の音量を上げる Windows+Alt+PageUp
音声の音量を下げる Windows+Alt+PageDown
音声のスピードを速くする Windows+Alt++
音声のスピードを遅くする Windows+Alt+-
項目を読み上げる Windows+Alt+D
Read item advanced Windows+Alt+F
Read item spelled out Windows+Alt+S
ウィンドウを読み上げる Windows+Alt+W
含まれる領域のすべての項目を読み上げる Windows+Alt+R
マウスモードを切り替える Windows+Alt+NumLock
タッチモードを切り替える Windows+Alt+F11
ナビゲーションモードを切り替える Windows+Alt+A
含まれる領域の最後の項目に移動する Windows+Alt+Q
ナレーターカーソルをシステムカーソルに移動する Windows+Alt+G
ナレーターカーソルをポインターに移動する Windows+Alt+T
フォーカスを項目に設定する Windows+Alt+~(チルダ)
1項目に戻る Windows+Alt+BackSpace
リンク先項目にジャンプする Windows+Alt+Insert
現在の行ヘッダーを読み上げる Windows+Alt+F10
現在の列ヘッダーを読み上げる Windows+Alt+F9
現在の行を読み上げる Windows+Alt+F8
現在の列を読み上げる Windows+Alt+F7
ナレーターが存在する行と列を読み上げる Windows+Alt+F5
先頭からカーソルまでテキストを読み上げる Windows+Alt+]
テキスト属性を読み上げる Windows+Alt+0
ドキュメントを読み上げる Windows+Alt+H
現在のページを読み上げる Windows+Alt+U
次のページを読み上げる Windows+Alt+J
前のページを読み上げる Windows+Alt+N
現在の段落を読み上げる Windows+Alt+I
次の段落を読み上げる Windows+Alt+K
前の段落を読み上げる Windows+Alt+M
現在の行を読み上げる Windows+Alt+O
次の行を読み上げる Windows+Alt+L
前の行を読み上げる Windows+Alt+,
現在の単語を読み上げる Windows+Alt+P
次の単語を読み上げる Windows+Alt+;
前の単語を読み上げる Windows+Alt+.
現在の文字を読み上げる Windows+Alt+[
次の文字を読み上げる Windows+Alt+'
前の文字を読み上げる Windows+Alt+/
テキストの先頭に移動する Windows+Alt+Y
テキストの末尾に移動する Windows+Alt+B
ドキュメントの読み上げ中に巻き戻す Windows+Alt+Home
ドキュメントの読み上げ中に高速で早送りする Windows+Alt+End

これらのコマンドのキーの組み合わせ(キーボードショートカット)は、ナレーターの設定ウィンドウから変更することができます。他のソフトとキーボードショートカットが競合するときは、これで回避します。文字キーは必ず修飾キー(WindowsやCtrlキーなど)と組み合わせる必要がありますが、ファンクションキーとテンキーは単独でも指定可能です。

◆ Metro UI

ログインすると最初に現れる画面、タイル状のボタンでシンプルにデザインされたユーザーインターフェイスは、Metro UIと呼ばれています。

startscreen

画面上には、単色で塗られた正方形とその倍の幅の長方形のタイルが、グループごとに並んでいます。タイルの色は何種類かありますが、タイルに描かれているアイコンや文字などの情報はどれも白です。画像が描かれたタイルもありますが、基本はとてもシンプルなデザインです。

この四角のボタンをマウスでクリック、タッチパネルなら指で触れることで、そのボタンに結び付けられているアクションを実行します。では音声ガイドを聞きながら、キーボードだけで操作するにはどうすればいいのでしょうか。

上下左右の矢印キーを動かすと、この四角いボタンを上下左右に動いて選択してくれます。しかし、この四角いボタンの形は、正方形と長方形の二種類あるので、長方形の下に正方形が横に二つ並んでいる場合などは右側の存在に気付かずに移動してしまう可能性があります。

そのため、このボタンを選ぶときは、ナレーターコマンドのWindows+Alt+左右矢印キーで移動させます。この方法で動かすと、スタート画面のボタンを一つずつ進んでいきます。右矢印を押すと、右にボタンがある場合にはそれに、もう右に何もないときは、下の段の左のボタンに、下のボタンがなければ、次の行の一番上に移動します。とにかく、Windows+Alt+左右矢印キーですべてのボタンをたどることができます。そうやって、一つ一つのボタンを移動していきます。

ボタンの数が多くなると、左上から離れているボタンにたどり着くのに、かなりの打鍵数が必要になってしまいます。この場合は、ボタンのグループを作っておき、分類しておくと便利になります。しかし残念ながら、キーの操作だけで新しいグループを作ったり、タイルを移動する方法がわかりません。

◆ 新しいショートカットキー

ナレーター以外のWindows 8 Consumer Preview のWindowsを使った新しいショートカット キーは以下の通りです。この表は「[Win8CP] Windows 8 Consumer Preview のショートカット キーの機能」で公開されているものを加工して貼り付けました。Windows+というのは、Windowsキーを押しながらという意味で使っています。Windows+Enterは既に紹介しましたが、特に覚えておいた方がいいのが、Windows+Cでしょう。これを押すと画面の右端に[検索]、[共有]、[スタート]などの項目が並ぶので、その下に続くいくつかのショートカットを覚えなくても何とかなります。なおマウスの場合は、右上か右下にカーソルを持っていくだけでチャームが薄く表示されるので、それぞれのボタンの上にカーソルを移動させて、クリックします。

チャームと時計を表示する Windows+C
[設定] チャームを開く Windows+I
[デバイス] チャームを開く Windows+K
[共有] チャームを開く Windows+H
設定を選択して [検索] チャームを開く Windows+W
ファイルを選択して [検索] チャームを開く Windows+F
アプリを選択して [検索] チャームを開く Windows+Q
言語または入力方式を切り替える (複数の言語または入力が有効である場合) Windows+Space
現在のアプリケーションのコマンドまたはオプションを開く (アプリケーションで複数定義されている場合) Windows+Z
ナレーターを開く Windows+Enter
画面上の通知を切り替える Windows+V
マルチ モニター環境で [スタート] 画面を左のモニターに移動させる Windows+PageUp
マルチ モニター環境で [スタート] 画面を右のモニターに移動させる Windows+PageDown
画面の向きのロックのオン / オフを切り替える (PC に画面方向の切り替え機能がある場合) Windows+O
アプリケーションを片側にスナップするときに、画面上のアプリケーションのフォーカスを切り替える Windows+'(SHIFT+7)
アプリケーションを片側にスナップするときに、スプリットを右に移動させる Windows+.
アプリケーションを片側にスナップするときに、スプリットを左に移動させる Windows+Shift+.

他に便利なショートカットとして、Windows+Xでデスクトップでのコンテキストメニューが出ます。また、Ctrlと+/-でスタート画面のズームイン、ズームアウトができます。 これはキーボードだけでグループの名前を付けるときに利用します。

◆ ログイン画面

ログイン画面でも音声ガイドを有効にするには、次のようにします。

とにかくログインして、Windows+U でコンピュータの簡単操作ウィンドウを出します。

easiertouse

そして、左端にある、ログイン状態の設定をクリックして、「ログオン設定の変更」ウィンドウを開きます。

開いた「ログオン設定の変更」ウィンドウで、「支援技術」にある最初の項目「画面が読み上げられるのを聞く(ナレーター)」の右端にある「ログオン」のチェックボックスをチェックにします。このとき、「デスクトップ」のチェックボックスもチェックしておくと、ログインした後も、ナレーターが起動するようになります。その他の支援技術も必要に応じてチェックします。そしてOKで閉じます。

logon

 

◆ 終了方法

キー操作だけで、シャットダウンもしくは再起動する方法は次の通りです。
「Windows+I」 で、設定チャームを開いて、
「上矢印キー」で、電源ボタンに移動して、
「エンターキー」を押し、メニューを出します。
ここで「上矢印キー1回」だと再起動項目、「上矢印キー2回」だとシャットダウン項目に移動となり、
「エンター」で実行です。

 

◆ 感想

漢字変換がまだ読みあげに対応していません。これは是非とも製品版では実現してもらいたい機能です。NVDAを使ったり、発売日に合わせて出てくるだろう有料のスクリーンリーダーを使えばうまくいくでしょうが、これこそOSの機能としてそなえておくべきもののはずです。よろしくお願いします。

ナレーターのコマンドは、左右が項目の移動、上下が階層の移動となっています。これは今までスタートメニューやアプリのメニューバーで左右がメニューサブメニューの移動、上下が項目の移動となっていたものからの90度回転なので、意外に戸惑いました。体で覚えているせいか、なかなか切り替えができません。でもこれは慣れるしかないでしょう。

とりあえず使ってみた感想ですが、Windows 8 はかなり使いやすいものになりそうです。これは大いに期待できます。10年以上使ってきた方法と全く違う、スタート画面という新しいインターフェイスでの操作を覚えるのは、はっきり言って苦痛かもしれません。でもこの変化はとても良い変化だと思います。

そして、Windows 8の登場で、今後このOSの思想を取り入れたアクセシビリティに配慮のあるソフトが増えてくれることを望みます。おそらくそうなっていくでしょう。

 

コメント欄で a さんから教えてもらった情報をたどると、NVDA日本語版に関わっている西本さんが、既に Consumer Preview における Haruka Desktop の存在やNVDAやナレーターの動作についてツイートされていました。それからWindows 8 の64ビット版上ではNVDAでこの Haruka は使えないようです。こちらで確認したら、確かに使えませんでした。ただMSPのHarukaは使えるので、対応されるまではそちらを使えばいいでしょう。

 

◆ 参考にしたページ
Microsoft の新日本語合成エンジン? - 電脳スピーチ blog
アクセシビリティ対応 - Building Windows 8 - Site Home - MSDN Blogs
[Start] (スタート) 画面のデザイン - Building Windows 8 - Site Home - MSDN Blogs
[Win8CP] Windows 8 Consumer Preview のショートカット キーの機能
Windows 8 Consumer Preview のショートカット キー: 世の中は不思議なことだらけ
[Windows 8]シャットダウンはどこ? - Microsoft Officeのリボンのカスタマイズ情報が満載 - 初心者備忘録
など



posted by takayan at 02:36 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音声合成 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月20日

chmファイルを展開するスクリプト

全盲の方に chm形式のヘルプファイルが使い方が分からないと言われました。キーボードだけで、目次の領域から本文の領域へ移れないそうです。そこで調べてみました。

詳しく書かれていたのは次のページです。
アプリケーションソフトのヘルプ(chm形式)を読む情報ボランティアの会(八王子) 障害者支援部会

これをもとに確かめてみると、目次と本文は、F6キーを押すと切り替わります。よく使われている高知システム開発のスクリーンリーダーPC-Talkerでは、特別に専用のショートカットCtrl+Alt+Win+@で切り替えができます。ただしバージョンによっては対応していないものもあるようです。

chmの画面ではAlt+c で通常表示されている目次、Alt+nでキーワード、Alt+sで検索に切り替わります。それぞれの項目でエンターを押すと、対応する本文が表示されるので、F6キーなどで本文に移ります。本文そのものはIEを読むときのキー操作、Ctrlを押しながら下矢印だったりシフトキーだったりで、読ませます。

 

これだけでは物足りないので、そもそもオンラインヘルプが書かれているchmファイルというのは何なのかを調べてみました。結局、Wikipediaの記事 が詳しいです。

結論としては、chmファイルはLZXアルゴリズムという方式で圧縮されたHTMLファイル群でした。試しに、愛用の7-zipで展開してみると、簡単に構成ファイルを見ることができました。何の細工もせず、右クリックでコンテキストメニューを出して、7-zipの「展開」を選ぶだけです。

出てきたファイルを開いてみると、hhc拡張子のファイルが、オンラインヘルプの目次として表示されているものだと分かります。これも中身はHTMLファイルなので、Webブラウザで閲覧できそうなのですが、OBJECTタグを使って項目の情報を指定しているので、うまく表示できません。表示できれば、この目次を使って展開されたそれぞれの本文を閲覧できるはずです。

そこで、正規表現の置換を使って、簡単にこのhhcをhtmlに変換するJScriptのスクリプトを書いてみました。

indexchm.zip

上記のようにCHMファイルのままでもキー操作だけでスクリーンリーダーで読んでくれるので、わざわざこういうことをしなくてもいいのですが、とりあえず作ってみたので、ここに公開しておきます。

・indexchm.wsf がスクリプト本体です。これにchmファイルを与えると、展開し、index.htmlを作って、それがあるフォルダーを開きます。通常はchmと同じ場所に展開しますが、システムフォルダなど書き込み禁止になっているところだとデスクトップに展開します。展開は7zipではなく、hh.exeでデコンパイルしています。
・setup.wsf で送るメニューやデスクトップへのショートカットを登録します。 以前作ったあれと同じです。これでできたデスクトップのショートカットの上にchmファイルを落としたり、chmファイルを選択した状態で右クリックでメニューを出し、送るメニューからこれを選べば展開します。
・unsetup.wsf でsetup.wsf で登録したショートカットを削除します。

さらにテキストに自動変換すればテキストエディタで詳しく読めたり検索できたりできるでしょう。またこうやって構造さえ理解できれば、テキストDaisyへの自動変換や、もちろん合成音声も含めたデータも作れるでしょう。タブキーで目次と本文の移動ができる新しいビューアーの作成など可能性はあると思います。でもその必要性があるかどうか分からないので、今回はここまでにしておきます。



posted by takayan at 02:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | プログラミング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月27日

「カーネーション」もいよいよ最終週

この半年間楽しませてもらった「カーネーション」も残すところあと数回。夏木マリが演じている晩年の糸子に、ようやく慣れて来たのに、この物語が終わってしまうのが名残惜しい。

先週の25週は、糸子が人生を通じて打ち込んできた、ファッションの素晴らしさを描いた話が中心の週だった。最終週がどんな展開になるのか分からないけど、この物語を締めくくる前に、服の力を見事に見せつけるいい話だった。

病院の中でのファッションショーということで、妊婦さんや、長い夫の介護のあとの新しい人生を歩み出す杖をついたお婆さんや、子どもを残して先に死ななくてはならない末期がんの患者さんといった、それぞれの人生の節目に立つ女性たちがショーのモデルとなっていた。

末期がん患者役の中村優子の演技がとても素晴らしかった。よくぞ、この場面の主役に、こんなに相応しい女優さんを連れてきてくれたと思った。糸子がいままで服で飾ってきた一人一人の女性たちの象徴のような存在だったけれど、見事だった。今でも思い出すと涙ぐんでしまう。

弱っていく母に心を痛め近づくことに躊躇していた子どもたちが、自分たちからステージの上の母親へとかけ上っていく姿が印象的に描かれていた。きっとこの子たちは、きれいだったお母さんとの幸せな思い出として、この体験を覚えていてくれるんだろうな。

 

最終週のあらすじは、もったいないので読んでいないけれど、公式サイトに最近アップされた演出チーフと脚本家のインタビューは読んでみた。「カーネーション」を作った人たちの言葉は、最終週をむかえるのに、これまでの物語をいろいろ整理させてくれたので、前もって読めてほんと良かった。

演出チーフの田中健二さん
http://www9.nhk.or.jp/carnation/special/tanaka/index.html

脚本の渡辺あやさん
http://www9.nhk.or.jp/carnation/special/watanabe/index.html
http://www9.nhk.or.jp/carnation/special/watanabe/index_2.html

 

最終週の花言葉の花は、白いカーネーション。その言葉は「あなたの愛は生きています」。

インタビューの中にも「カーネーション」というタイトルについての話はあったけれど、糸子の人生を彩ってきた花々の、最後を飾るのが、あえて赤いカーネーションではなく、この言葉をもつ白い花というのも、本人の念願通りに朝ドラになったこの物語を見ている自分たちにもつながっているみたいに感じられて、最後らしくていい。



posted by takayan at 02:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする