植木鉢のミカンの木を覗いてみると、何か動くものが見えた。さっと葉の裏側に隠れてしまった。近付いてよく見ると、小さなカマキリだった。まだ羽根が生えていないので腹がむき出しで見える三センチぐらいの小さなやつだ。この大きさでは緑色になったアゲハの幼虫には刃が立たないだろう。
とても臆病で、のぞき込むとすぐに反対側に回り込む。大人になると、人間相手だろうと、逆に鎌をもたげて威嚇してくる種族なのに、今は必死に身を隠して生き延びようとしている。もう兄弟たちのほとんどは誰かのえさになってしまっているのだろう。
とりあえずちょっと離れて写真にその姿を収めた。そしてつかんで草むらに放り込もうとした。でももがくものだから、するっと手からこぼれて、下に落ち、そのまま草むらに駆け込んでいった。
今この鉢には五センチくらいのまるまると太った幼虫がいる。もうそろそろ最後の脱皮をしそうだ。