引用元:国文社刊『祭暦』高橋宏幸訳 p78
すでに、瓶を傾けた軽やかな酌人は沈みました。魚よ、おまえが次に天の馬車を迎えなさい。おまえたち兄弟、並んで輝く星座となったおまえたちは背中にお二方の神を背負ったと語られています。天の馬車というのは太陽のこと。このディオネはウェヌスを意味する。
その昔、ユピテルが武器をとったときのこと、恐るべきテュポンから逃れようと、ディオネ女神が小さなクピドを連れてエウプラテス川へとたどり着き、パレスティナの水の縁に座りました。川岸の堤の上はポプラと葦がおおっており、柳の木々を見ると、自分たちも身を隠せる、という希望が湧きました。
ところが、隠れていると、風で森が音を立てました。女神は青ざめます。敵の手が迫っているに違いないと思うのでした。息子を胸に抱くと、「ニンフたちよ、助けに来ておくれ。私たち二柱の神に援軍をよこしておくれ!」と言いました。
言うやたちまち、女神は川に飛び込みました。と、二尾の魚が助けに来ました。このことにふさわしい褒美として、魚たちはいま星座となっているのです。このために、気の小さいシリアの人たちはこの種のものを食卓にのせることを罪悪と考え、魚で口を汚すことをしません。
もう立派な訳があるので、自分の訳を示す必要はないのだけど、以前書いたものはこうなる。
今やアクエリアスの水瓶は斜めにゆっくりと沈んでしまった:
ピスキスよ、次はお前たちが天の馬たちを迎えよ。
お前とお前の兄弟が(一緒にきらめく印になって)
二人の神々を後ろで支えていたと言われている。
かつて女神は恐ろしいティフォンから逃げてきた、
ユピテルが天において武器をとったとき。
彼女はユーフラテスに小さなクピドと一緒に来て、
女神はパレスチナの川辺に身を屈めていた。
ポプラと葦が土手の上を占めていて、
隠してくれる柳は希望を与えていた。
彼女が潜んでいると、森が風で大きな音を立て、彼女は恐怖に青ざめる。
敵の手が近づいてきたようだ。
彼女は胸に息子を抱えて、
”ニンフたちよ、助けよ!
二人の神を助けよ!”と彼女は叫ぶ。
すぐさま彼女は飛び込んだ。
双子のピスキスは彼らをかくまった:
今では、選ばれて、星々がその名前をとどめている。
そのため、この種族を食事に置くことを罪だと考えているので、
シリア人たちは恐れ、魚を口にすることを禁じている。