2011年07月05日

「玄海原発周辺で白血病が増加」という情報に対する疑問

専門家でもないのに、原発問題にあまり口出ししてはいけないのでしょうが、もう一つ書かせてもらいます。玄海原発があるため周囲の白血病が高くなっているという情報が、いろいろ飛び交っているようです。唐津には親戚もいますし心配になってしまいました。

最近の拡散の元になっているのが、2011.6.9に書かれたこのブログの記事です。
中村隆市ブログ 「風の便り」- 玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍
拡散指示の書かれているので中村さんのこの記事がツイッターやブログへの転載などで、いろいろと拡散されていました。

全国平均の6倍という言葉がどこに掛かっているのか、内容を読まないと間違いかねないタイトルですが、この記事では玄海町の白血病の死亡者数が全国平均の6倍であり、その死亡者数の人口10万あたりの率が年々高くなっているという主張がされています。ドイツで原発周辺での小児白血病の増加をドイツ政府が公式に認めているという情報と絡めて書かれています。

この記事よりももっと前、唐津市議の共産党浦田関夫氏のサイトに2009.9.15に書かれた記事「玄海原子力周辺で白血病が多い」があります。これもよく引用されています。議員さんの一般質問の内容です。ここでは平成19年の統計を元に全国より11倍も多いことが報告されています。6倍ではなく、11倍とあるのは1年間のデータだけを基にしているからです。ここでもドイツ政府が「因果関係」を認めていることの指摘があります。

つまり、中村さんの記事は浦田さんの記事を補強している内容だと分かります。1年分のデータではなく10年分のデータを使ってデータを均したり、ドイツの報告を白血病ではなく、正確に小児白血病に直したりです。

それにしても、本当なら大変なことなのに、玄海町で白血病が多いことを問題視しネットに発信したり拡散している人たちが、素人ばかりで専門家がちっともいないことに疑問を感じました。それから、11倍や6倍という数字は、厚労省のデータから算出されたものですが、専門的な分析に裏付けられて出てきた数字ではありません。冷静に見てみれば、この数値が高齢化も人口減少も何も考慮していないただの計算に過ぎません。普通なら、そこで、よく考えて判断すべき情報だと気づくでしょう。実際、中村さんは疫学調査が必要だと言っている段階に過ぎません。

玄海町での白血病の問題を発信している人たちは、原発が原因だと疑っているからこそ発信しているわけです。そのためそれ以外の可能性を指摘することはありません。平常運転をしている原発の影響を危惧している人たちが、素人なりに計算してみると、原発の周囲でこんなに白血病で亡くなる人が増えているようで、とても心配していますという主張です。こういう立場で情報を発信しているのですから、原発以外に可能性のある理由を発信する必要はありません。

ジャーナリストや学者のように、なぜこの周辺で白血病が多いのかという疑問を探求する立場であるならば、九州に多いATL(成人T細胞白血病)が原因であるかどうかを考察しないのは、あきらかに偏向した行動になります。しかし原発の危険性を訴える人たちは、最初からそういう疑問を探求する立場にいない人たちなので、他の可能性があろうと、自分たちの主張を続けます。それは何もおかしいことではありません。

しかし、その文面を一般人が見れば、そこには原発が白血病死亡率を増やしているという主張しか見えないわけで、それが唯一の説明しうる理由として誤認されていきます。原発は危険だという否定しがたい認識は今の日本人は誰もが持っています。そこに、公的な記録から示されている原発の周囲で白血病死亡率が増えているという事実と、原発に近づくほど死亡率が増えている事実があれば、もう原発以外に白血病になる理由を考えることができなくなってしまいます。

他に理由となるものはないだろうかと考える余裕さえあれば、すぐに九州全体の白血病死亡率の高さに気がつくことでしょう(参照:「九州の54市町 全国比2倍超 03―07年の白血病死亡率 ATL多発 要因か 本紙集計 感染予防 地域で格差」西日本新聞2010年3月10日9日)。これはATL(成人T細胞白血病)というウィルス性の白血病が主な原因ではないかとされています。原発が近くに無いのに玄海町よりも高い死亡率のところも存在します。上記の西日本新聞の記事にある地図を見れば分かりますが、九州の白血病は離島や沿岸部に多い傾向があります。それはこの地域にも言えることで、そのことを踏まえれば、内陸部から玄海原発に近づくほど白血病死亡率が高くなることも説明できてしまいます。もちろん、原発が原因である可能性まで否定しているわけではありません。これだけの情報ではそこまで判断できません。

ところで、中村さんのページでは平成19年までの統計しかありませんが、佐賀県のホームページでは平成21年までの玄海町の人口動態調査のデータが既に公開されています(参照:佐賀県:保健統計情報 )。そしてそこで確認できる白血病死亡率は平成20年、平成21年ともに0人となっています。このデータを追加して、同じ計算法の5年区切りの平均をとってみれば、増加しているとは言えなくなります。亡くなられた方がいない状態がずっと続いてほしいものですが、統計というのは残酷なもので、これも一時的なことでしょう。人口が少なく値が変動しがちなのですから、早計な判断はしないほうがいいと思います。

■ 参考 
参考にしたページの大部分はこちらの投稿にあるものです。
玄海原発 真実の主張とウソ

次のページもその中で紹介されているもので、、例のドイツの統計に関しての詳しい検証がされています。
http://d.hatena.ne.jp/buvery/





posted by takayan at 03:00 | Comment(9) | TrackBack(0) | 情報・ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
九州に多いATL(成人T細胞白血病)というのが後付けだと思いますが
長崎に原爆落ちて、佐賀に玄海原発出来て何度も放射能漏れして…
放射線が遺伝子を傷つけ遺伝していくのは有名な話です
日本では原発村といって放射能(放射性核種)の危険性について明かすのはタブーみたいになってます。
実際、福島原発で体内被曝を日本国内で検査した人は大丈夫ですよと言われ海外に尿検査だした人達は内部被曝を指摘されてます

九州では放射能による遺伝子の傷の遺伝をATL(成人T細胞白血病)って呼ぶんですね
チェルノブイリのベラルーシにも白血病がずっと受け継がれてますが、その人達と九州の人達は同じなんでしょうね
なぜドイツの学者の言う事を信じないのか?
遺伝子の傷をウィルスとしてごまかす手口に唖然としました。
Posted by 真実を求める者 at 2011年07月09日 07:40
真実を求める者さん、貴重なご意見ありがとうございます。
九州は対馬から種子島まで白血病死亡率が多いのですが、あなたの言い分だと、九州全域の人間は放射線により遺伝子が傷ついており、それが遺伝病となり、そのために白血病が多くなっているということになりますね。
ここにあなたが書いてあることを真に受けてしまう人もいるかもしれないので、「放射線が遺伝子を傷つけ遺伝していく」の根拠を教えてください。
どう考えても、あなたの言っていることは、九州の人間に対する看過できない悪質な風評だと思います。
ATL陽性のお母さんが赤ちゃんに母乳を与えないことで母子感染を防いでるという報告から、ATLは遺伝によるものではないと考えているのですが、間違っていますか?
Posted by takayan at 2011年07月11日 01:41
ウイルスの説も、放射能による遺伝子損傷による白血病の説も合ってますよ。私は正しいと思います。
ATLウイルスは有名です。私は医療従事者ですがATLの問題は国試で必須です。
チェルノブイリでは甲状腺癌の子供が多数でましたが、この甲状腺癌は通常のものと違いました。通常の甲状腺癌は転移は少なく生存率も高いですが、チェルノブイリの子供達の甲状腺癌は転移も早く癌細胞も通常のものとは違いました

結論からいうと「白血病」も、ATLによるものか?ウイルス保有者ではない者の白血病なのか?詳しく調査しないと議論できません
玄海原発は過去に事故を起こしてます。ドイツでは周辺からプルトニウムが検出されました
玄海周辺も土壌調査をして土壌汚染が確認されたら、その地域の野菜は出荷しないことです

その野菜を食べて、玄海から流れてくる風を吸い込み
周辺の県民も内部被曝(食物・呼吸)し発病率を高めるわけですから
福岡なんて24時間風下でしょうしね

それから、ATLで母子感染を防ぐ話は医療では有名な話です。これだけ対策・教育が徹底されてATL保有者が少なくなってもおかしくないのに。増えているとしたらおかしな話です

最後に1点、ATL保有者が被曝をし続けると、発癌するのか?発病の因子として被曝が関連しているのか?
調査が必要です

Posted by 平山 at 2011年07月31日 08:50
平山さん、コメントありがとうございます。

> 結論からいうと「白血病」も、ATLによるものか?ウイルス保有者ではない者の白血病なのか?詳しく調査しないと議論できません
私もそう思います。
詳しく調べないと分からないのに、白血病が多いのは原発に近いからではないかという一方的な情報だけをネットにばら撒く人たちに違和感を覚えませんか?
私は覚えます。
九州に住んでいるせいで私はATLのことを以前から知っていたのですが、他の地域の一般の方はATLのことをほとんど知らない状況でしょう。
それなのに、活動家の方たちが九州のATLのことを併記せずに、すべて玄海原発のせいだと言わんばかりにこの情報を伝えています。
だから、この記事を書いたのです。

現在は Togetter に分かりやすい議論があります。
http://togetter.com/li/158508
http://togetter.com/li/158629
http://togetter.com/li/159021
これらのまとめが出る前、ツイッターで飛び交っていたこの問題の言説は一方的なものばかりで本当にひどいものでした。
私が書く前に、こういうまとめがあれば、この記事をわざわざ書かなかったと思います。

> チェルノブイリでは甲状腺癌の子供が多数でましたが、この甲状腺癌は通常のものと違いました。
よければ、これのよく分かる資料をお示しくださいませんか?
チェルノブイリ周辺での子供たちの甲状腺癌のことは、ほんとに悲しい出来事だと思います。
ただ転移が速いのは、尋常じゃない甲状腺の被曝量や、細胞分裂が活発な子供だからという理由では説明できないものでしょうか?

> 玄海原発は過去に事故を起こしてます。
そうですね、去年の年末プルサーマルの3号機はトラブルを起こしています。ただ公式記録によると一次冷却水の濃度の問題であって外部への放射能漏れはありません。
http://www.kyuden.co.jp/genkai_history_trouble.html
でも九電や佐賀県知事の明らかになってきたヤラセ問題をみてみると、信頼していいものか考えこんでしまいます。
疑り深い人は原発事故だっていろいろ隠しているんじゃないかって思っているかもしれません。
でも調べると、この事故の件に関してはひどいデマが出てますね。スリーマイルクラスの事故が起きて何も退避行動をさせないなんてありえないです。こういうデマをばら撒く人たちのせいで、何を信じていいのかさらに分からなくなっていきます。
http://togetter.com/li/79273

> ドイツでは周辺からプルトニウムが検出されました
これについては、ドイツのドキュメンタリー「Und keiner weiss warum...」で出たエルベ川流域の情報しか知りません。
他の場所についてでしょうか?分かりやすい報告書などあったらぜひ教えてください。
ただ、これと玄海原発の事故と並べて書く意味が分かりません。
玄海原発周辺での白血病が原発事故のせいだと思われているのでしたら、それがいつの事故だと思われているか教えてください。
上記のトラブルとは違うもののはずなので。

> 玄海周辺も土壌調査をして土壌汚染が確認されたら、その地域の野菜は出荷しないことです
確認されたら、ですね。
周囲の土壌の検査は賛成します。
唐津を含めた広範囲でやっていただけるとありがたいです。
もちろん、以前の大気圏内核実験や黄砂由来かどうかの区別もよろしくお願いします。

> 福岡なんて24時間風下でしょうしね
そういう根拠のないことをしれっと言わないでくださいね。ほんとに周囲の人に迷惑です。
偏西風が念頭にあるのかもしれませんが、万が一爆発でもしてて、かなり上空に上がらないと偏西風の影響は受けないと思います。
もしかしたら、立命館大学の人の卒論に書いてあった、爆発が起きてしまったときの影響だとか、いろいろな情報が頭の中でごちゃちゃになっていませんか。冷静に判断してください。
医療従事者という肩書きを出すだけでも、こういう専門外の発言までみんな信用しかねないのですから、正しく危険性を訴えてください。

> それから、ATLで母子感染を防ぐ話は医療では有名な話です。これだけ対策・教育が徹底されてATL保有者が少なくなってもおかしくないのに。増えているとしたらおかしな話です
「これだけ対策・教育が徹底されて」と言われていますが、
長崎以外で母子感染対策が積極的に行われるようになったのは最近ではないかと思います。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article4/20100309/20100309_0004.shtml
玄海周辺の白血病死亡者の正確な年齢分布は分かりませんが、全国と同じだとすれば年配の方の可能性が高いので、
死亡者数としてはこの対策の影響はまだまだ出てこないはずですね。
海外の原発の危険性を指摘するものは小児白血病が多いので、玄海周辺の白血病を無意識に小児白血病のことだと思い込んでいる人もいるかもしれませんが、小児白血病かどうかは上記の中村さんのブログにある統計には書かれていませんよ。

> 最後に1点、ATL保有者が被曝をし続けると、発癌するのか?発病の因子として被曝が関連しているのか?調査が必要です
私もこの点は興味があります。
ただこれについて統計をとるのは難しいでしょう。

今後も事実をもとに正しく危険性を訴えてください。医療従事者の方の発言はもっとあっていいと思いますので、よろしくお願いします。
Posted by takayan at 2011年08月01日 13:02
そもそもATLの位置づけはHIVとおなじです。ウィルス感染で、母乳を介しても、性交渉を介してもキャリアであればうつる可能性があります。
キャリアであっても発症しない場合もあります。
ATLによって起こるT細胞白血病とは、名の通りT細胞が白血化します。
なので、検査してウィルス保有者か、T細胞のCD4などを調べればすぐ診断がつきます。

白血病といわれるものは、急性、慢性に分けられ、細かく分類されます。
それも検査でわかります。

なのでATLによっておこる白血病は、ウィルスが原因であり、原発のせいなわけがありません。
平山さん、医療従事者との事ですが、看護婦さんかなにかでしょうか?
詳しいものの発言とは思えません。

急性、慢性の白血病は明らかな原因がわかっておらず、ウィルス節など様々言われますがアトラに関しては全く別物!!
ウィルス感染でしか起こりません!

原発周辺でアトラ以外の白血病が増えてるのであれば影響も考えられますが、アトラは容易に診断できるので、原発のせいと騒いでるのはおかしいです。
無知。

Posted by 田辺 at 2011年09月02日 13:48
ATL(我々アトラといってます)の人が被曝し続けたら…ですがその場合はT細胞の白血病ではなく、普通、の白血病になりますね…
HTLVの発症はエイズのHIVとおなじです。
Posted by 田辺 at 2011年09月02日 13:55
白血病になるとしたら↑ですが、

長々すみませんでした
Posted by 田辺 at 2011年09月02日 13:57
はじめまして。
前から不思議に思っているのですが、九州の土壌の放射能汚染について調査している方はいらっしゃらないのでしょうか? 玄海原発で放射能漏れがあったとか、それはスリーマイル島事故並みだったが九州電力が隠蔽しているとか。。。まずは玄海原発の近辺の土壌汚染を調べれば何か分かるはずです。関東では市民が自腹で土壌汚染の調査を行うのは、もはや常識です。 まあ、あの事故に対する行政の対応がああですから仕方が無いのですが。  
Posted by 教えてください at 2011年09月04日 20:50
田辺さん、教えてくださいさん、コメントありがとうございます。
玄海のこの問題に関しては、こんなブログの記事を書いておきながら、言及するのもうんざりしていました。申し訳ありません。

田辺さんへ、詳しい解説ありがとうございます。僕は医療の専門ではありませんから、こういう踏み込んだ説明を付け焼き刃で書いてはいけないので、助かりました。

教えてくださいさんへ、こういう憶測をまき散らした過激な反対派の人たちはおそらく計測していると思います。心配だったら当然行動しているはずです。しかし自分たちの望む結果が出なかったから公表していないのだと思います。
Posted by takayan at 2011年11月05日 01:09
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