2011年09月04日

《ヴィーナスとマルス》 解釈(1)

それぞれが誰なのか、改めて考えみます。

まず、分かりやすい画面右で寝ている男性です。彼はアレスでいいでしょう。この絵の中にはいろんな武器や防具が配置されています。彼は現在、ほとんど裸で、どれも身につけてはいないのですが、これらは彼のものだと考えていいでしょう。神話の中で武具を持った男性が出てくれば、彼は戦いの神アレス以外に考えられません。

彼がアレスだと決まれば、左の女性はアフロディーテだと分かります。アレスには他にも子供を作った女性がいくらでもいるのですが、やはり最初に思いつくアフロディーテで問題ないでしょう。アフロディーテはもともとはヘパイストス(Ἡφαιστος)の妻であったのですが、アレスに乗り換えてしまいます。この話はここでは詳しく書きませんが、ホメロスの『オデュッセイア』に詳しく書かれています。オウィディウスの『変身物語』にも、短いですがヘパイストス(ウルカヌス)による二人への罠の話が書かれています。

それでは、この二人の周りにいる子どもたちはいったいなんでしょう。アフロディーテのそばにいる子供といったら、翼のあるエロスのはずですが、違います。彼らの額には二本の角があり、足は山羊の足です。この姿からおそらく彼らはサテュロスでしょう。大人のサテュロスは、本能のままの野蛮な性欲のかたまりの姿で描かれる存在ですが、ここに描かれているのは、まだ無邪気なだけの子供です。

彼らはやはりエロスの代わりの存在でしょう。性愛を示すエロスという言葉の意味だけ考えれば、サテュロスは置き換え可能な存在といえるでしょう。そう思って、この絵を見てみると、画面の一番左にいるサテュロスは、まさにエロスを表していることが分かります。なぜなら彼は目隠しをして、尖ったものを何かに突き刺そうとしています。これは『プリマヴェーラ』で描かれているエロスの特徴そのものです。もしかすると、兜の下の顔には角がないかもしれません。背中の翼は角度のせいで見えてないのかもしれません。毛むくじゃらの足のように見えるものも何か別のものなのかもしれません。

では、左端がエロスだとして、残りの三人は誰でしょう。エロスの友達?それとも兄弟?おそらく兄弟ではないでしょうか。アレスとアフロディーテの間には三人の子供がいます。ヘシオドスの『神統記』によれば、アレスとアフロディテの子供として、フォボス(Φοβος)、デイモス(Δειμος)、ハルモニア(Ἁρμονια)の三人です。ハルモニアは女神で、のちにカドモス王と結婚することになりますが、晩年は王ともども蛇となる運命にあります。

エロスもアフロディーテとアレスとの間の子供だとする話もありますが、アレスと付き合う前からエロスがいる物語もあって、そこらへんは定まってはいないようです。この絵の子供たちの毛の色を見ると、エロスだけがアフロディーテの髪の色に近く、残りの三人がアレスの髪と近い色になっています。この色の区別はエロスはアレスの子供ではないとするものかもしれません。

そういうわけで、この絵に描かれている神々は、アフロディーテ、エロス、アレス、フォボス、デイモス、ハルモニアではないかと推測できます。つまり、アフロディーテがヘパイストスと別れた後の、アレスとアフロディテ夫妻のほのぼのとした休日の一家の様子を描いてるのではないでしょうか?

 

次回は、この推測をより確実なものにしていきます。





posted by takayan at 03:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヴィーナスとマルス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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