GNOME Orca を少しいじって、Ubuntuに日本語スクリーンリーダーを導入する方法の続きです。前回「GNOME Orca で日本語を使う方法(Ubunt11.10向け) 準備」は準備だけでしたが、今回はいよいよ本番のインストールです。
前回、書き忘れていましたが、「端末の中に開く」は少なくともログアウトしないと有効になりません。
GNOME Orca には日本語を処理する部分がないので、これを以前作ったmbttsというマルチプラットフォームのPythonのモジュールを組み込んで使います。その改造を行い、新しい日本語対応のOrcaを組み立てるのが次のファイルのです。
ダウンロード→ orca-3.2.1-jp_scripts-003.tar.gz
なお、orca-jp 関連ファイルはしばらく orca-jp-alpha フォルダに置いておきますので、最新のものを使ってください。
上記のファイルをダウンロードします。どこに置いてもいいですが、今回はわかりやすいように「ドキュメント」に移動させます。
このファイルの上にマウスを持ってきて、右クリックしてコンテキストメニューを出し、その中の「ここに展開する」を選びます。
「orca-3.2.1-jp」というフォルダができるので、フォルダの中に入ります。中には4つのファイルがあるはずです。
・prepare.sh
・install.sh
・orca-3.2.1-003.patch
・ap_inst.sh
それぞれの役割は、次のようにしています。
・prepare.sh
ビルドやインストールに必要なファイルをダウンロードしたり、展開する手順が書いてあります。
・install.sh
日本語が使えるように修正し、ビルドしインストールします。前もってprepare.shを実行する必要があります。
・orca-3.2.1-003.patch
本来のorcaとの差分です。ほとんどは翻訳チームの方々が訳されていますが、台詞の部分は動作に支障を来すので意図的に訳されていません。そういう部分を訳しています。しかしその日本語訳がまだ未完です。少しずつ修正していく予定です。現在は003です。
・ap_inst.sh
Linux版AquesTalk2の体験版を利用できるようにするスクリプトです。アクエスト社のホームページに行って、Linux版の体験版をダウンロードして、先ほどのフォルダの中に入れたあと、このスクリプトを実行すると、mbttsの機能として、AquesTalk2の音声を使えるようになります。なお体験版は機能が制限され、発音できない文字があります。
なお、以前のスクリプトでは、管理者権限で実行するコマンドも他のものも一緒に記述していましたが、ログインパスワードを求めるコマンドを、動作を把握するのが面倒な長いスクリプトの中に入れるのは行儀が悪いと思いましたので、二つのファイルに分けることにしました。prepare.sh に記述されているスクリプトは管理者権限は必要ありません。一方 install.sh は内部でsudoを使って管理者権限で実行するコマンドが記述してありますが、コマンドの単純な羅列ですので、内容は把握しやすくしくなっています。
■ スクリプトの実行
まず、これは準備編に書くべきだったかもしれませんが、端末を開き、次のコマンドを入力し、エンターを押して実行してください。差分を使ってプログラムを修正できるようになります。
sudo apt-get install patch
次に、スクリプトに実行許可を与えます。現在のフォルダで端末を開いて「chomod a+x *.sh」でもいいですが、ここではマウスを使ってやってみます。
「.sh」で終わっている三つのファイルをコントロールキーを押しながら選択し、右クリックをしてメニューを出し、プロパティを選びます。
すると、プロパティのウィンドウが開きます。「基本」、「アクセス権」、「開き方」とタブが並んでいますが、その中の「アクセス権」を選びます。中程にある「プログラムとして実行可能」をチェックします。そして右下の「閉じる」ボタンを押して閉じます。
これで、スクリプトが実行可能になりました。
現在のフォルダの中でファイル上ではない余白の部分を右クリックして、メニューを出し、「端末の中に開く」を選びます。そして、
./prepare.sh
と入力しエンターします。すると、ダウンロードが始まります。残り時間を表示しながらダウンロードが数回行われます。展開の時は大量のメッセージが流れていきます。すべてが終わると、$の横で四角いカーソルが点滅します。
今度は、
./install.sh
を入力しエンターします。するとログインパスワードの入力が求められるので、入力してください。そのあと大量のメッセージが流れ出します。すべてが終わると、同じようにカーソルが点滅します。
これで、インストール完了です。
■ 初期設定
端末を開き、
orca -t
と入力しエンターします。初回起動ならば「orca」とだけ入力しても同じですが、テキストベースの設定はこのオプションをつけて起動させます。いくつかの質問が出されますので、それに答えていきます。
読み上げシステムを選択してください:
1.読み上げディスパッチャ
2.mbtts
番号を入力してください。
これに対しては、mbttsの方の「2」と答えます。絶対「1」と答えてはいけません。このシステムは日本語の文字列に対応していないので、最悪の場合、設定画面も開けず、終了時の「さようなら」がしゃべれなくて終了させることもできない状態になります。
そのほかの質問には次の解答をします。なおこの設定は後からいくらでも変更できます。
音声の種類を選択してください: 1
単語毎にエコーを返しますか?: y
キーエコーを返しますか?: y
アルファベットと数字、句読点のキーエコーを有効にしますか?: y
修飾キーのキーエコーを有効にしますか?: y
ロック・キーのキーエコーを有効にしますか?: y
ファンクション・キーのキーエコーを有効にしますか?: y
アクション・キーのキーエコーを有効にしますか?: y
キーボード・レイアウトの選択: 1
点字を有効にしますか?: n
点字モニタを有効にしますか?: n
最後にいったんログアウトしてください。
■ Orcaの実行
いよいよ実行です。
ALTキーを押しながらF2キーを押して、orcaと入力して、エンターします。
すると、白杖を持ったオルカのスプラッシュ画面が出てきて、四つのボタンの並んだ
横長の小さなウィンドウが現れます。
キーボードの左右矢印キーを動かすと、フォーカスがボタンを移動し、ボタンの名前を読み上げてくれるはずです。
とりあえず、今回は「終了」ボタンを押して、終了してください。このボタンを押すと終了するかどうかの確認ダイアログウィンドウが出ますので、終了を選んでください。
申し訳ありませんが、日本語のOrcaは不安定なので、もしかするとここで終了しても閉じないこともあります。しばらく待っても変化がないときは、お手数ですが、Ubuntuを再起動してください。
Orcaを起動中は左側のランチャーにもオルカのアイコンが出てきます。必要ならば、このアイコンの上で右クリックをして「ランチャーに常に表示」を選んで登録してください。
■ ログイン時に自動的に起動できるようにする
いろいろ使ってみて使えそうでしたら、ログイン時に自動的に起動できるように設定してみてください。
画面右上のボタンをクリックして、メニューを出し、一番上の「システム設定…」を選びクリックします。すると、次のウィンドウが出てきます。
その中の「ユニバーサルアクセス」をクリックすると次のウィンドウが出てきます。
このウィンドウの下段にある「スクリーンリーダー」のスライドスイッチを「オン」にします。設定が終わったら、左上の×印をクリックして、閉じます。
以後、ログインするとすぐにOrcaが起動するようになります。
■ 最後に
インストールの方法を詳しく書いてきましたが、はっきり言って、この日本語版はまだ動作が不安定なところがあります。問題が解決しないようでしたら、すぐに使用をやめてください。そういう状態です。
まだ日本語版は実用レベルには達してないように思います。改善すべき点はまだまだたくさんあります。少しずつ積み重ねて、よりよい環境ができればいいと思います。