2006年09月20日

サイエンスZERO「恐竜時代を生き抜け ほ乳類進化の秘密」

サイエンスZERO「恐竜時代を生き抜け ほ乳類進化の秘密」--- NHK公式サイト

以前ここで書いた「NHKスペシャル 恐竜vsほ乳類」に関連する内容なので久しぶりにこの番組を見てみた。NHKスペシャル「 恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い」を、ほ乳類の進化の部分を切り取ってわかりやすく解説しているといった内容。ナビゲータとして眞鍋かをりも出ている。

内容をまとめてみた。この番組を見た人にはそのまとめは意味がないと思う。後ろのほうにある、出てきた先生たちの情報は、役に立つかもしれない。

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あくまでも、この番組はいろいろな仮説をもとにこの番組としてまとめたもの。今後も新たな考え方が出るかもしれない。今後間違いが見つかるかもしれない。その点を心の何処かに留めてこういう番組を見たほうがいい。
こういう番組では、仮説であることを明言していたり、「考えられている」などの文末表現もちゃんと気にしないといけない。また微妙な表現を使って断言を避けていたりしているところもある。
ここでこういうふうに個人的にまとめるときは、たいていそういう微妙な部分が抜け落ちたりするので、正確な情報がほしいときは自分で調べるべき。

それから、補っている部分があるので、正確に番組の内容そのものといえないかも。

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◆内容。

ほ乳類の進化には、恐竜時代の出来事が深く関わっている。三つのテーマで番組は進んでいく。

1.地球最古のほ乳類

地球最古のほ乳類の頭の骨の化石。大きさ1.5cm。名前はアデロバシレウス(Adelobasileus cromptoni)。アメリカの二億年前の地層にあった糞の化石の中から見つかった。体長は10cmほどで、主に昆虫を食べていたらしい。それに対し最古の恐竜はほ乳類と同じ時代に誕生していた。既に体長は1mを越えていた。アデロバシレウスと同じ地層で見つかっている初期の恐竜の一種コエロフィシス(Coelophysis)。

1億5000万年前、恐竜はスーパーサウルス(SuperSaurus)に代表されるような全長33mの巨大なものまで現れるようになる。その頃ほ乳類は、未だに小さい体をしていた。代表的なのは体長15cmほどのラオレステス(Laolestes)。

そして6500万年前の恐竜時代の末期、代表的なのものは、恐竜では全長13mのティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)。それに対して当時のほ乳類は15cm程度のキモレステス(Cimolestes)。

上記の生物で世界の巨大恐竜博2006サイト内で紹介されているもの
アデロバシレウス
スーパーサウルス
ティラノサウルス


2・恐竜時代の生き残り戦術

ほ乳類は、は虫類の親戚から進化してきた。アデロバシレウスは卵を産み、卵で子孫を育てていたと考えられている。卵だと敵がやってきたり大雨に襲われたりすると、命をつなぐことができないという欠点がある。

2003年中国遼寧省である化石が見つかる。15cmほどの小さな化石。毛の跡など細かな部分がはっきり残っている。これは後にシノデルフィス(Sinodelphys)と命名される。歯や骨格などから、このシノデルフィスは1億2500万年前の有袋類の祖先だと考えられる。腰のあたりに数ミリの骨があり、これは現在の有袋類が持っている袋骨(epipubis)と同じものだと考えられている。

Sinodelphys szalayi - CMNH... シノデルフィスの解説(英語) Carnegie Museum of Natural History(カーネギー自然史博物館)

袋を持つことで天敵に襲われたときも親子で行動できる。これは進化の大革新である。そして現在袋のないほ乳類も袋のようなもので子育てをしていた時期ががあったという考えがある。

ほ乳類は三つのグループに分けることができる。有袋類(袋を持つ)、単孔類(卵を産む)、そして有胎盤類(胎盤を持つ)。人類も属している有胎盤類は全ほ乳類のほぼ九割を占めている。

有胎盤類は恐竜時代の後半(およそ1億年から6500万年前)には登場していただろうと考えられている。キモレステスもその一つ。体の柔らかい部分は化石としては残りにくいので、化石の骨と、現在の生物との骨の比較から胎盤があったことを推察している。キモレステスの顎の化石は、ネコの属するグループに近いと考えられるため、キモレステスには胎盤があったとみられている。


3.ほ乳類を救ったパートナー

1億2500年前の中国、羽毛恐竜が席巻していた頃、植物界に革命的な出来事が起きた。最初の花が誕生したと考えられている。現在見つかっている最古の花アーケフルクトゥス(Archaefructus)には花びらはなく、原始的な雄しべとめしべがあるだけの単純なものだった。その後、被子植物は6500万年前の恐竜時代の終わりには主要な植物群になっていた。そしてこの被子植物が、ほ乳類の進化に欠かせないパートナーとなった。

花の出現は、ほ乳類に多様性をもたらした。被子植物は昆虫の力を借りて子孫を残した。この関係が昆虫と花がお互いの進化に影響を与え、花と昆虫が多様化していった。そしてそれと同時にその昆虫を食すほ乳類も多様化していった。

昆虫の量が増え、また植物が果実をつけるようになって、ほ乳類の周りで高カロリーの食料が増えた。仮説であるが、そのため、ほ乳類は、おなかの中で長い間子どもを育てられるようになったのではないかと考えられている。

胎児は胎盤から伸びた<へその緒>でつながり、栄養や酸素を母胎からもらっている。このへその緒での酸素濃度は母体の三分の一ほどになっている。胎児への酸素供給は重要でわずかな酸素の濃度の変化で胎児に問題がおきてしまう。胎児は自分で外の空気が吸えないので母親からの酸素供給が必要不可欠だからである。しかし母体は自分自身の生存のために酸素を消費しなければならず、胎児が安定して育つためには大気中に豊富な酸素が必要になる。

しかし、恐竜時代は酸素濃度は大きく変動していた。恐竜時代の最初、アデロバシレウスのいた頃は、酸素濃度は10%ほどしかなく異常に酸素濃度が低い環境だった。その後、長い時間をかけて酸素濃度は上昇し、花が誕生した頃には15%程度になり、そして恐竜時代の終わりの頃は18%前後と現在の酸素濃度と同じくらいに上昇した。

大気中の酸素濃度の変化には、地殻変動や植物の増加など様々な原因が考えられるが、この恐竜時代後半の変化には、被子植物が関わっていたかもしれないという仮説がある。葉を多くつける裸子植物のほうが、裸子植物より酸素を供給するのに効率的である。酸素濃度は、恐竜時代に上下変動を繰り返していたが、恐竜時代最後の上昇のタイミングは被子植物の繁栄の時期と一致しているからである。



◆出てきた先生たちのことを調べてみた。


・羅哲西博士 (Zhe-Xi Luo) カーネギー自然史博物館

有袋類の先祖のところで出てきた先生。検索してみると、この先生たちが書いているシノデルフィスについての論文が見つかった。日本語タイトルは「白亜紀前期の三咬頭歯哺乳類と後獣類の進化」。以下Science紙サイトへのリンク。

An Early Cretaceous Tribosphenic mammal and metatherian evolution. Science 302:1934-1940
リンク先は概要が書かれている。無料の会員登録をすると、本文を見ることができる。


・ポール・ファルコウスキ博士(Paul G. Falkowski) ラトガース大学

酸素濃度の上昇と胎盤の進化について解説している先生。検索するとこの人の論文が出てきた。全文閲覧するのは有料みたいだが、概要のみは誰でも閲覧できる(英語)。

The Rise of Oxygen over the Past 205 Million Years and the Evolution of Large Placental Mammals( Science )
日本語タイトル「過去2億500万年にわたる酸素濃度の上昇と巨大な有胎盤類の進化の促進」


・ピーター・ウォード博士(Peter Douglas Ward) ワシントン大学

被子植物の出現が酸素濃度の上昇に影響したという仮説を説明をした先生。
この人は大衆向けの科学の啓蒙書をいろいろ書いている。日本でも『生きた化石と大量絶滅―メトセラの軌跡』という本が出版されている。
近々、『Out of Thin Air 』(アフィリリンク)という本を出版するらしい。タイトルからして、この番組で扱っていた酸素濃度の話題であるが、ほ乳類や被子植物についてまで語られているかは分からない。少なくとも鳥の「気嚢」システムと恐竜との関係とかそういう話らしい。もちろん英語。他にも十数冊、英語で本が出ているが、被子植物に関する本がどれかは分からなかった。


posted by takayan at 00:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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