2006年09月21日

純情きらり(148)

<内容>

亨(トオル)がいなくなったと笛子がやってきたところから。

桜子と笛子が山長からあわてて出てきて、手分けして捜し出す。笛子は冬吾と出くわすがまだ見つからない。辺りは暗く雷が鳴っている。桜子、神社の前にやってきて、道に落ちている紫の花を見つける。地面には雨粒が落ちはじめた。

どこかの石段。ずっと下まで続いている。足下は濡れている。そこをゆっくり確かめながら降りているトオル。とても危なげに降りている。あっとトオルは足を滑らせてしまう。でもさいわい尻餅だけですんだ。石段の上に桜子がやってきて、トオルを見つける。トオルのところまで降りていって、よかったと抱きしめる。

夜。明かりのついている山長。笛子が厳しくトオルになぜ一人で出かけたのと問いただす。お姉ちゃんのピアノが聞きたかったと答える。桜子は私がいつでもおいでと言ってしまったからだと言う。どうしてそんなことを言うのと笛子は桜子を責める。ごめんなさいと桜子は謝る。私がどれだけ心配して育てているかと笛子。トオルをしっかりと抱きしめて、絶対ひとりじゃ外へ出ちゃいかんよと言い聞かせる笛子。すると冬吾が、いつかはトオルは一人で外を歩かないといけない。いまから練習しといたほうがいい。そしてトオルに「明日からお父さんと訓練すべ。」と誘う。桜子はピアノを聞いていかないとトオルに聞く。母の顔色をうかがうトオル。笛子にもそうさせてと聞く。

ピアノの部屋。桜子が「亨のテーマ」を弾いている。トオルは後ろの椅子に座って聞いている。曲が終わる頃には、トオルはいつの間にか寝てしまっていた。桜子はトオルの顔をのぞき込んでいる。達彦がドアから入ってくる。トオルが寝ているので、桜子は静かにするように合図する。二人でトオルの寝顔を覗き込んで、かわいいなと言う。おれたちもそのうちと達彦が言いかけるが途中でやめる。桜子は途中でやめでていいよ、私もほしいよ。トオルちゃんみたいな可愛い子。と桜子。

食卓。桜子、達彦、笛子、冬吾の四人が食事をしている。達彦が、今日はほんとに申し訳なかったと謝る。笛子が、私もついついトオルをかばってしまい。それが臆病にしてしまっているのかもと反省する。そういう笛子に対して、冬吾が、それそうやってくよくよするからといつもの口調で注意する。するとピアノの部屋からたどたどしいがさっきと同じメロディが聞こえてくる。もしやと思ってみんなが駆け付けると、トオルがピアノを弾いている。何でも覚えておけとお姉ちゃんが言っていたからとトオル。桜子の手を見て覚えたと言う。桜子が「ほいでも、よく覚えたね。」と褒めてやる。トオルが「もう一回弾いてもいい。」と聞くと、「いいよ」と答える。再びピアノのメロディ。みんなが優しい顔でトオルの演奏を見守っている。

夜の道。冬吾がトオルを負ぶって、笛子と有森家に戻る途中。冬吾が言う。「神様はトオルにいい耳をくれたんだな。誰にもでも得手不得手があるはんで。トオルは見るのは苦手でも、音を聞くのは得意なんだな。」

カフェマルセイユ。桜子がトオルと一緒に入ってくる。お客用のコーヒーを分けてもらいに来た。代わりに味噌をもってきて。マスター・ヒロが「小さなお客様だね」とトオルを歓迎する。トオルはこんにちはととてもいい返事をする。桜子とヒロがカウンターに行くと、トオルは一人でピアノのほうに向かう。その様子を見て、ピアノに興味があるみたいだねとヒロ。そしてトオルに「弾いていいですよ」と声をかける。とてもうれしそうにトオルがあのメロディを弾き始める。
ヒロがどこかからハモニカを引っ張り出して吹き始める。「聖者が町にやってきた」。それに気付いてトオルがヒロの方を向く。ヒロはトオルにハモニカを渡す。トオルはとてもうれしがる。それだとどこでも吹けるでしょうとヒロ。元気にありがとうとトオル。桜子が礼を言うと、小さな頃父親からもらったハモニカで、子どもの頃ハモニカが友達だったとヒロが自分のことを話し出す。父親が音楽学校の声楽の教師だったこと。母はそこの生徒で。学校を追い出されて。結局二人は離婚しちゃったけれど。そのとき父親がハモニカを渡して、父親として何も残してやれないけれど、手に職をつけろと言ってくれた。できたら音楽をと。そんな大切なものを桜子が言うと、ヒロは、俺には友達がいっぱいいるから、もうハモニカは要らないと満足そうに言う。

トオルは来る日も来る日もハモニカの練習をした。空き地で「ふるさと」を吹いているトオル。そこに元気の良さそうな虫取り編みを持った三人の少年がやってくる。トオルの前で立ち止まり曲が終わるまで聞いている。終わると「うまいじゃんか。なんか吹いてよ。」と話しかけてくる。トオルはいいよと、今度は「赤とんぼ」を吹き始める。

山長のピアノの部屋。桜子は初めての演奏会に向けての懸命の練習をしている。葉書を持って達彦が入ってくる。葉書は以前学童疎開で岡崎に来ていた良太からだった。良太は両親が死に東京のおじのところに引き取られた。妹と頑張っていること、ラジオでジャズを聴いて元気が出たことが書いてあった。子どもたちとの思い出を語る桜子に対して、達彦は子どもたちにも招待状を出したらどうだろうと提案する。
練習を再開しようと桜子が立ち上がると、桜子はよろめいてしまう。額をおさえて座り込む。桜子が今日は涼しいねというが、達彦はそうでもないという。練習のしすぎで疲れたのだろうと達彦は桜子の体を心配する。練習はそれまでになる。二人は電気を消してその部屋を出る。ナレーション「それがただの疲れなどではないことを、桜子もまた達彦も気がついてはいませんでした。」

二人の寝室。桜子は夢を見る。白い服を着て病院のベッドらしきものに寝ている桜子。気がつくと、母マサがその脇に座り、桜子の手に自分の手を重ねている。現実の桜子は、眠りながら達彦と手をつなぐ。目が覚めていた達彦は、桜子の寝顔を見つめて、やさしく手を握り返す。ナレーション「幸せな日々の中、桜子の体に変化が起きようとしていました。」

つづく。


posted by takayan at 12:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 純情きらり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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