披露宴がもっと前の週だったようにさえ思えるほど、この週も怒濤の展開。結婚後、薫子、西園寺先生、斉藤先生と、懐かしい人たちが、桜子の前に現れた。ただ顔を出すだけでなく、一人一人がその役柄らしい形で、桜子の夢の実現を応援していく。
桜子は死んでしまうのだろうか。以前冬吾が引用した槐多の詩。槐多は結核で命をすり減らしながらあの詩や他の輝くような作品を残し、死んでしまう。あの詩の引用は、桜子の人生の暗示としての意味合いもあったのだろうかと、今から考えるとそうも思えてしまう。最終週のタイトルは「いのち、輝いて」。次週予告の中にあった、桜子のセリフ。生まれてくる我が子に残した言葉のように聞こえてしまう。桜子が幼いときに亡くなった母マサが、桜子に音楽という宝物を残してくれて、その音楽への気持ちが桜子の人生を輝かせ続けてくれた。たとえ桜子が死んだとしても、生まれてくる子の人生もまた輝かせてくれる。そういうふうに話はなるのだろうか。桜子は病気に勝ったという結末であっても、そうしてくれたNHKさんに拍手を贈りますけどね。
桜子の演奏会は結局実現できなかった。でもこの演奏会への努力は決して無駄ではなかった。だって亨くんの人生に希望を与えてくれたから。そして偶然にも斉藤先生との再会を果たすことができたから。斉藤先生の目のつくところにチラシを置くために企画された演奏会と言っては変だけれど、斉藤先生が当時予言していたとおり、ひたむきに音楽への情熱を忘れなかったからこそ、達彦に桜子の曲のすばらしさに気付いてもらえ、西園寺先生を巻き込んで、演奏会が実現することができ、そしてそれを応援するためのチラシ配りが、結果的に斉藤先生との再会へと結びついたのだから。
斉藤先生の実家が破産しなければ、マロニエ荘の仲間には会えなかったかもしれないが、それはそれで音楽とともにある幸せな人生を桜子は歩めたかもしれない。でも、音楽を諦めずに生きてきた桜子は達彦と幸せな日々を過ごすことができた。マロニエ荘の仲間たちとの楽しい思い出もある。笛子も杏子も、桜子が東京に出て行ったことの影響があって、今の幸せな人生を送っている。人生はどうなるかわからないものだけれど、桜子がこの物語を通じて、みんなに支えられながら、ひたむきに愛する音楽を諦めなかったことが、桜子自身だけでなく、斉藤先生を含めみんなの人生に素敵なものを与えてくれたのだと思う。
今回斉藤先生とのエピソードを思い出すために、一気に4週目から6週目までを見直していたのだけれど、あの頃のひたむきにピアノに打ち込んでいる桜子の姿を見ていると、今回の演奏会だけはどうしても実現させてほしかったなあ。それから見ていて、宮崎あおいがほんと桜子の人生を生きているなと感心してしまった。どう見ても女学生に見えないこの頃の桜子が、いまはちゃんと女将さんらしくしているし、予告の中では母の顔をしている。たった数ヶ月の間に女優としてすごい成長をしているんだろうなと思った。