布団に気力なく横になっている桜子。達彦が現れ声をかけるが向こうとしない。食事もとっていない。そこに野木山がお客さんですとやってくる。やってきたのは、笛子と杏子と、東京から駆けつけた磯叔母さん。桜子は起き上がって出迎える。「大丈夫か、さくらちゃん」と磯が桜子の顔にくっつくぐらいに近寄って話しかける。赤ちゃんのこときついね。でも自分のためだもんね。今より病気が重くなったら大変。若いからこれっきりじゃないと慰める。桜子も自分に言い聞かせるように。自分の体のためだもんねと言う。
別の部屋。達彦に向かいあう磯と笛子と杏子。笛子が、達彦の判断が正しいと言う。桜子の命が何よりも大事。でも今日の桜子の様子。子どものこと後悔して病気が重くなってしまいかねないと杏子。磯が、子どもができたら是非とも産みたいのが女だもの。自分は周りから反対されてそれでも息子を産んで、よかったと思った。この子のためだったら死ねると思った。理屈ではない。女という生き物は子どもを産んでうれしいんだ。それが好きな人の子どもだったらなおさら。そういう磯の言葉をききながら達彦は考える。
布団で虚しく天井を見ている桜子。達彦は廊下で立ち止まり、それから部屋に入って、桜子の横に座り込む。そして話をきりだす。どうしても子どもが産みたいか。産んでもいいのと桜子。体を起こす。達彦さんがいいちゅうなら、私は産みたい。達彦さんと私の、この命を捨てきれんの。守りたい。桜子の気持ちを聞き、明日先生と話し合おうと達彦。ありがとう達彦さん。達彦は首を少し振って、それからゆっくりうなずく。
病院診察室。医者と桜子が椅子に座り、向かいあって話をしている。出産は体力を消耗するので、病状を悪くしてしまうと医者は否定的な意見。桜子が医者に尋ねる。私は治るんですか。私は子どもを諦めれば治るんですか。医者はどちらとも言えないという。だったら子どもを産みたいと桜子。死ぬ覚悟でちゅうことかねと医者。桜子はきっぱりと私は死にません。子どものために生きたいと言う。ご飯もよく食べて、安静にして養生します。医者は頭をかく。桜子は、自分の後ろに立っている達彦に話しかける。昨日話し合おうと言ってくれてから、自分は元気になれた。おなかの赤ちゃんが私を元気にしてくれているんよ。医者は桜子の決意に動かされ、最終的に決めるのは本人と旦那さんだからと産むことを認める。そして入院して経過を見守らないといけないと入院を勧める。
山長。野木山さんと仙吉さんを呼んで、達彦が話をしている。入院することにした。自分も付きっきりになるので、店のこと迷惑をかけると二人に告げる。そんなこと構わない、店は任せてくれと二人。ありがとうと達彦。
山長の店の前。桜子と達彦が出てくると、あとから店のみんなも出てくる。仙吉が代表して行ってらっしゃいと見送る。
「こうして全力で療養に努めるべく入院した」。達彦、布団を持って病室に入ってくる。ここで寝るのとベッドで寝ている桜子。おまえのそばにおりたいと言いながら、その布団をベッドの横の床に敷く。二人は東京で音楽の勉強に行った最初の日のことを思い出す。最初の日同じ部屋で泊まることになり、覗かないでと真ん中に風呂敷でしきりを作ったことを懐かしがる。夜。桜子がベッドから、床に寝ている達彦の寝顔を幸せそうに覗き込むシーン。昼、桜子はベッドの上でとても幸せそうな顔をして譜面に音符を書き込んでいるシーン。ナレーション「それから桜子は目に見えて活力を取り戻しました」。
そして10月。有森家への一時帰宅が許された。玄関。桜ちゃんお帰り、元気そうじゃないとみんな。ただいまと桜子。そのあと食卓の場面。笛子姉ちゃんの漬け物はおいしいと桜子。桜子は病人には見えないと言われる。達彦はうれしそうに、元気すぎて困るくらいだともらす。笑いのたえない食卓。桜子は杏子におなかに触ってくれと言う。杏子が触ると元気な赤ちゃんになる気がする。桜ちゃんの赤ちゃん、杏姉ちゃんですよとおなかをさすりながら杏子。笛子も自分の席から大声で赤ちゃんに声をかける。すると磯がうるさいおばさんが一杯いますよと。笑いに包まれる。子どもたちがその様子を覗き込む。サチ。カズコ。トオル。それに気づき、ごめんねと桜子。お姉ちゃんのそばに来ると病気がうつるから、病気が治ったら遊ばまいね。子どもたちは仕方なく二階への階段に並んで腰をかけている。二階にいるように言い聞かせていたけれど、桜子の声を聞いたら降りてきてしまった。病院にいたほうが迷惑かからなくてよかったのにと桜子が言うと、みんなは会うの楽しみにしとったからかまわないと。
有森家の庭。冬吾がさびしそうに葉っぱを見ている。桜子がそれに気づき縁側に腰掛けて、展覧会大盛況なんだってと冬吾に声をかける。しかし冬吾は、うかない顔で答える。戦争中明日の命がわからない頃のほうが今よりいい絵が描けてた。今の自分は絞っても水の出てこないぞうきんになった気分だと。弱気にならんで冬吾さんと桜子。冬吾は大きな海みたいな人。潮が満ちるみたいに何かが溢れて、また絵がかきたくなるよと元気づける。すると二階からハモニカのメロディと女の子たちの歌声が聞こえてくる。「うさぎ追いし...」。桜ちゃんに聞かせたいんだな。桜子は二階を笑顔で見つめている。有森家の人たちも次々に顔を出し、子どもたちの「ふるさと」を聞いている。桜子は家族と音楽に包まれる歓びを改めて感じていましたとナレーション。
つづく。
最後の有森家のみんなが顔を出す場面は、先週末「次週予告」で最後に映った場面。予告で順番を変えて場面紹介をするのはよくあること。予告の最後になるくらいだし、とても印象深い場面。