それでは再開です。見切り発車で書き始めた話題ですが、とりあえず内容の確認が終わりました。でもまとめるのがちょっと大変そうです。まだ一割しか公開してないのですが、このままギリシア語の文法や単語の意味を持ち出して、細かく説明を書いていくと、いつ終わるか分かりません。そこで方針を変更します。結論を書いてしまって、その理由をあとからゆっくり書いていきます。読む方も、役に立たない難しい文法の説明がダラダラ続くよりもその方が分かりやすいでしょう。
なお、遅くなりましたが、対象が性愛の女神アフロディーテなので、どうしても性的な表現が出てきます。避ける必要がある人は避けてください。
さて、この文章を元にボッティチェリが《ヴィーナスの誕生》を描いたのは確かなことだと分かりました。以前紹介したルキアノスの文章とともにこの絵の描写を作り上げています。
根拠となるのは、『アフロディーテ讃歌』から導き出せる次の事柄です。
・この絵で金色の描写が多用されているのは、この文章にχρυσός(黄金)やその合成語が多用されているから。
・ゼピュロスと一緒に飛んでいるのは有翼の勝利の女神ニケ。
・複数主格で記述されているホーラを文法的に与格単数とみなすことで一人にしている。
・曲がった白い波は精液(泡)を表している。
・アフロディーテの貝の下にある荒波が、アフロディーテを運んだ泡として描かれている。
・ゼピュロスとニケが息を出している描写は歌の喩えでもある。
・赤いローブには酔仙翁(Silene coronaria)が描かれている。
・赤いローブは金とオリハルコンで刺繍がされている。
・ホーラの服にはスミレ色の王冠が描かれている。
・ガマの穂と解釈できる言葉がある。
・アフロディーテの髪を束ねている白銀色の髪飾りについての記述がある。
以後投稿では、素直に読んでも出てこない、これらの事柄をどうやって『アフロディーテ讃歌』から導き出したのかを詳しく説明していきます。それにしても、いままでいろいろ考えてきましたがゼピュロスの隣の女神がニケだとは思いもよりませんでした。