丸一日休みだったので、図書館に調べものに行ってきた。昨日分からなかったロバイを調べるために。さっそく、書籍検索をしたら、山口吉郎兵衛著「うんすんかるた」(1961年刊)が書庫にあった。カルタの歴史を調べてみると必ず出てくる重要な研究書だ。現物を手にすることができるとは思っていなかった。
表紙を開くと圧倒される。天正カルタ、うんすんかるた、すんくんかるたなどの全てのカードを版木から刷ったものが折りたたまれて挟み込まれている。復元した色刷りの歌留多もある。たくさんの図版。いろいろな文献に現れるカルタについての記述など。日本におけるカルタの歴史を調べるならば是非とも目を通しておきたい本だ。そう思っていた一冊に、あっけなく出会うことができた。
うんすんかるたのスートや絵札の呼び名は、やはり天正カルタからの継承だった。当然そうだと思っていたが、資料を知らなかったのではっきり書けずにいた。典拠は1688年に書かれた黒川道祐著「雍州府志」にあるとわかった。
この本はタイトルにうんすんかるたとあるが、うんすんかるたを中心に書いてあるというわけでもなかったが、それでもうんすんかるたについてもいろいろと知ることができた。ただ目的のひとつだった竜札の呼び名「ロバイ」の由来については分からなかった。この本では竜とは別に、このカードをロハイや虫と呼ぶということがわかった。
次にポルトガル語辞書を使って調べることにした。オンライン辞書ではさんざん調べたが、紙の辞書だと前後の単語を見ることができるので、もしかするとみつかるかもしれないと淡い期待を抱きつつ。
辞書の棚に行くと、普通の辞書に混じって面白いものを見つけた。「ヴァチカン図書館蔵葡日辞書」。ポルトガル語が書いてあって、そのあとにポルトガル式のローマ字表記で当時の日本語の発音のまま日本語訳を書いてある。また本の後ろには難しいローマ字表記で書かれた日本語の索引があって、それを使うと日本語からもポルトガル語を調べることができる。全編ポルトガル式のアルファベットで、慣れないとどこに日本語が書いてあるのかも分からない。難しそうだが、これは使える。
さてこの辞書でいろいろ調べてみた。そしてさっき見つけた「虫」を調べてみた。虫の表記はこの辞書の方式だと、muxi と表記される。この表記に気付くのに時間がかかった。そしてこの索引から調べ当てたのが、ポルトガル語の lombriga である。
こんな綴りじゃ適当な入力で出てこないはずだ。でも lombriga を どうやれば、ロバイ、ロハイに訛るんだろうか。かといって、全然遠いというわけでもない。これは当たりかな!
lombrigaを普通の葡日辞書で調べてみる。白水社の「現代ポルトガル語辞典」。すると、結果は、
lombriga f.線形動物、回虫、ミミズ
当時と現代では意味が違ってるかもしれない。それでも、回虫?ミミズ?でも、やっぱりこれですね。竜だと教えられずに、この絵を見たら、まさしくミミズのようなにょろっとした虫ですね。それにしてもポルトガル人も本国のドラゴンカードを虫と呼んでいたんだろうか。日本人の模写があまりにもへたくそだったので、虫と揶揄したんだろうか。日本人が勝手に虫と名付けたのならポルトガル語なわけがない。いや、日本人があまりにも虫、虫いうんで虫のポルトガル語を教えてやったんだろうか。なぞはまだ残る。
※画像は私物のうんすんかるたのイスのロバイ。