ロバイを虫と呼ぶのは、ポルトガル語に頼らなくても日本語の蛇の表現だけでも十分可能だ。今の日本語ではムシやヘビという言葉は学術的な用法の影響で日常的な使用の場合においても意味が完全に分離してしまっている。でも日本で蛇のことを虫と呼んでいたのは事実だし、中国大陸でも漢字の蛇の字形どころか、虫という象形文字の成り立ちだって、虫の本来の概念の広さを示している。それだけでも十分だったけれど、この単語を見つけてしまったのだから、調べずにはおれなくなった。
それはそうと、古ノルド語や古英語の文章を引用までするのは、おおげさだと自分でも思った。結論だけ書けば済むことだ。でもこれはまた僕の別の趣味なので、興味が脇道にそれていくことを自分でも楽しんで書いた。wormの古い形はwyrmだということの例文ははっきりと提示できてわかりやすいと思うし、今のファンタジー用語とは違ってdracaとwyrmが八世紀頃の文章では、文学的な言い換えのできる語だということも分かったし、これもおもしろい発見だった。
最後にlombrigaの由来を調べてみたが、ラテン語に遡ってもミミズを表しているというのには、正直ちょっとがっかりした。少なくとも蛇ぐらい意味してほしかったな。現実はそう思い通りにはいかないものだ。
関連
・ロバイという虫(1)
・ロバイという虫(2)