2008年02月12日

ラテンスート

ラテンスートについて詳しく説明していなかったので、まとめてみよう。

イタリア、スペインなどでは、僕たちが日常的に使っているものとは違う独特のスートのトランプが使われている。このスートはラテンスート(latin suits)、イタリア・スペインスート(italo-spanish suits)などと呼ばれる。

イタリアのカード
・北イタリア(ベルガモカード Carte bergamasche)
北部イタリアのカード

・スペイン風イタリアカード(シシリアカード Carte siciliane)
スペイン風のイタリアのカード


スペインのカード
スペインのカード
(全体を見なくても枠の線の切れ方でスートが分かるようになっている)


ラテンスートのカードは、14世紀頃までにヨーロッパに伝わってきた、エジプトあたりのマムルーク朝の人々が遊んでいたカード(通称マムルークカード)が元になっているとされる(マムルークカードについては後述)。このとき、当時のヨーロッパになじみの薄いポロスティックのスートだけ杖や棍棒に変化し、残りはそのまま使われた。

ラテンスートはイタリアスートとスペインスートに大きく分けられる。イタリアではさらに地方毎に細かな違いがある。また現在では残っていないポルトガルカードもこのラテンスートに分類される。

イタリアスートはイタリア北部地方で現在使われているもので、湾曲した剣、直線的な儀式用の杖、剣と杖は数字札では交差するといった特徴をもつ。基本的に1セット40枚ないしは52枚からなる。40枚のものは、1から7までの数を表す札と、従者、騎士、王の三種の絵札からなる。52枚のものは数札が1から10までとなる。

スペインスートはスペインやイタリア中・南部で使われているもので、抜き身の両刃直剣、丸みがあり葉もついたりする棍棒、数の札では剣と棍棒は交差せずに個別に並べてある。1セット48枚ないしは40枚。48枚のものは1から9までの数の札、従者、騎士、王の絵札からなる。40枚のものは数を表す札が1から7までとなる。イタリアにおいて北部とそれ以外で分かれるのは、南部がスペインの勢力下になっていたことに由来している。

ポルトガルカードは、現在廃れてしまっている。大きな特徴として、エースにドラゴンが描かれ、従者が女性の姿に描かれている。また王は腰をかけている。杖ではなく棍棒が描かれる点ではスペイン風だが、長物が交差している点で北部イタリア風である。ただしこの剣はイタリアのように曲線的ではなく直線的に描かれる。

それぞれの国での呼び名。イタリア語ではそれぞれのスートが、denari(貨幣)、coppe(杯)、spade(剣)、bastoni(棍棒)、絵札がfante(従者)、cavallo(馬)、re(王)と呼ばれる。スペイン語では、oros(金)、copas(杯)、espadas(剣)、bastos(棍棒)、また絵札はsota(従者)、caballo(馬)、rey(王)と呼ばれている。


関連資料:
ラテンスートのカードで遊ぶゲーム
Games played with Latin suited cards

日本語で書かれたイタリアカードの紹介
世界遊技博物館 イタリアカード

トランプの歴史についての関連ページ
International Playing-Card Society - Brief History of Playing-Cards
Playing-Cards FAQ - Playing-card History
Andy's Playing Cards - Introduction & History

ウィキペディア
トランプ
Playing card
Carta da gioco イタリア語。イタリア各地のカードの画像がある。



■マムルークカード
マムルークカードのスートは、貨幣、杯、剣、ポロスティック。各スートは数字を表す札が1から10までと人物を表す札が3種あり、合計で52枚(1セット56枚という資料もある)。数字札は記号そのものを並べてそのカードのランクを表している。剣とポロスティックの長物は交差させて描かれる。このとき剣は曲線的に、ポロスティックは直線的に描かれる。マムルークカードには現在の絵札に相当するカードがあるが、それには人は描かれず、カードの呼び名だけが人となる。人物カードは王、総督、副総督の三種(イスラム社会の用語でnaibの訳として総督が適切かは分からないが勝手にそう訳した)。

マムルークカードをさかのぼると、古い中国の紙のゲーム葉子戯に行き着くとされる。麻雀もさかのぼるとこのゲームにつながっている。麻雀もそうだが、中国のスートはすべて貨幣である(索子は竹ではなくひもを通した貨幣の束)。麻雀ではスートは3つだけだが、中国の古いカードには4番目のスートとして十の文字で表す十万のスートを持つものもあった。

これが直接マムルークカードのスートに変化したと考える説がある。この説では、筒子に相当するものはそのまま貨幣に、索子に相当するものがポロスティックになったとされる。さらに残りのスートは、萬子に相当するスートでは万の字がひっくり返り杯に、十のスートは十の字が柄のある剣に変化したのではないかとされている。

・関連ページ
Andy's Playing Cards - The Tarot And Other Early Cards - page V - the Mamlûk cards
Andy's Playing Cards - Introduction & History page3
Chinese Origin Of Playing Cards - University of Waterloo (1895年の古い論文)


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