冒頭から高座の若狭。ここは常打ち小屋の舞台だから、もう昨日の放送からそれだけ時間が進んだのか?
すると、舞台の袖から女の子が出てくる。昨日の若狭の妄想の中に出てきた娘(子供時代のビーコ役をやったのと同じ女の子)。
落語の途中なのに、その子はかまわず入ってくるが、若狭の方も落語を中断してそのまま話しこむ。若狭が叱ると女の子は泣き出してしまう。さらに舞台の脇から無精ひげを生やしてすさんだ草々も怒鳴りながら出てくる。なんかちょっと悲惨だな。これはきっと夢だ。昨日はビーコが眠りにつくところで終わったから、その夢の中だ、きっと。そう思ってみていると、場面が突然切り替わり、現実に戻る。徒然亭のみんなで話し合いの途中だった。夢ではなく妄想か!冒頭から何の前置きもなしに始まるとは。最終週らしく若狭の妄想は視聴者まで巻き込んでくれる。
舞台挨拶についての話し合いの途中、若狭は気分が悪くなる。つわりがひどそう。常打ち小屋の初日は無理じゃないかと心配して声を掛けられる。大丈夫だと振る舞う若狭。話し合いの中で若狭は今度の舞台で創作落語ではなく「愛宕山」をやってみたいという。愛宕山は若狭が最初に出会った、思い入れのある落語。若狭は、最近落語に対して感じる違和感を皆に話し、この落語をすることで落語にもう一度向き合いたいと言う。創作落語をするのか若狭に確認した四草は、若狭の落語に対する心の変化に気づいているのかもしれない。
場面は変わって、小浜の魚屋食堂。そこに小梅ちゃんが入ってくる。ビーコのおばあちゃん。製作所の和田夫妻が来ている。ドラマ当初は小梅ちゃんは製作所の秀臣をとても憎んでいたが、いまでは完全にそのわだかまりはとれている。こういう気さくな会話をちゃんと最後の週に入れてくるのは分かりやすくてとてもいい。和田製作所の息子はいろいろあって魚屋食堂の娘順子と結婚して食堂の跡取りとなっている。和田夫婦は息子の焼く魚を待っている様子。店の中には、順子と、その父もいる。その父が自分も秀臣のように隠居したいが跡取りの腕がまだまだと言うと、みんなに笑いが起きる。そこにうわさ話の好きな順子の母がやってきて、ビーコちゃんがおめでなんでしょと小梅ちゃんに話しかける。このお母さんの噂好きという特徴をそれも主人公の噂を運んでくるところがなかなか気の利いた展開だ。小梅ちゃんもうれしそうに認める。それを聞いて順子が何かを思う。これが魚屋食堂の最後のシーンなのだろう。小浜のみんなのことをこの一場面の中にきれいに描ききっているのがすごいな。
場面は草若邸。練習する若狭。つわりがひどそう。そこに小次郎おじちゃんが、おめでとうをいいに来た。話をしているうちにまたお金儲けのこと考えて入るんでしょうと若狭に指摘されると、小次郎がいつものようにふてくされる。それを見た若狭が急に妄想を始める。小次郎と同じようなふてくされた仕草をしている娘の姿。最近の妄想は、楽しいのは変わりないが、ちょっと悲観的な妄想ばかりだ。物語の最初の頃はそんなのばっかりだったと思うけれど、若狭の成長に伴い明るく楽しいものへと移っていったのにまた逆戻り。妄想が悲観的なのはつわりがひどく不安定な若狭の状況を表しているのだろうか。結局小次郎は練習が忙しいからと追い返されてしまう。主人公との小次郎との一対一の絡みはこれで終わりかな。何かまた一騒動あってもいいけれど、こういう感じシーンで終わるのもこの人らしくてありだけど。
今度は、糸子母さんがそばをもって若狭のところにやってくる。昨日の回で小浜から駆けつけてずっとこちらにいるのだろう。そばは栄養があるから食べなさいと忍者の携帯食だった話をする。喜代美はそばを食べきるが、そのあとこっそり台所で吐いてしまう。
夕方、若狭が草々に稽古をつけてもらう場面。そこにまた糸子がやってくる。そして糸子は草々に若狭を休めてやってくれと頼む。若狭は何ともないと否定するが、お母ちゃんにはそばを吐いたこともすべて気づかれていた。常打ち小屋は師匠の夢だからどうしても役に立ちたい、自分の体のことだから自分がよく分かると言い張るが、糸子はあんたは昔お母ちゃんのおなかの中におったんやからおかあちゃんには分かると言われる。草々も若狭とおなかの子が一番大事だからと糸子の提案を受け入れる。若狭は初日に出られなくなってしまった。
おそらく別の日。常打ち小屋の客席で若狭はひとり寂しく舞台を眺めている。そこへ順ちゃんがやってくる。もう二人は三十過ぎの設定だけど、若狭は昔のように甘えた声になって泣きながら順子に抱きついてしまう。
順ちゃんは若狭にとって救世主のような存在。昔から困ったときにはいつも相談にのってくれていた。奈津子とはまた別の支えになってくれる。同い年なのにとても達観していてきっぱりと言い放ってくれたり、未来を見通したような助言をしてくれたり、とても頼りになる友人だった。もう若狭も成長し順ちゃんの助言も必要なくなっていたが、最終週の主人公のピンチに、呼んだわけでもないのに、駆けつけてくれた。
部屋で、ビーコは順ちゃんに悩みを相談する。晴れの舞台に出られなくなった若狭の気持ちは一気に昔のダメな頃のビーコに戻ってしまった。いざというときに役に立たない脇役のビーコ。回想シーンとして学園祭の三味線の発表会。練習から逃げてしまいエーコにスポットライトを当てる裏方をしていた頃の映像が出る。順ちゃんも高校の学園祭がビーコにとってのトラウマだと十分に承知している。落ち込んでいるビーコに、順ちゃんは大丈夫やと言ってくれる。確信があるのか、ビーコを支えてやろうとはったりを言っているのか分からないが、順ちゃんは、今回は落語家としての13年の経験があるから同じ結果にはならないと言う。新しいものが見えてくるはずだ。ひさしぶりのそして史上最大の予言だとナレーション。
さて、残り三回でどうなるのだろう。こんな重大なときに、すんなり常打ち小屋のお披露目ができずに、昔のビーコになってしまうなんて、なかなか楽しませてくれる。そして順ちゃんの大予言とは。