2007年06月03日

電脳コイル

NHK教育で土曜午後6時30分からやっている『電脳コイル』を先週から見ている。今日はその第四話『大黒市黒客クラブ』。見ようと思ってずっと見ていなかった。前回の途中でやってるのを思い出して見た。今日もタイマーを仕掛けといたつもりでいたのに、やっぱり途中から。だから内容を把握できない。でも面白そう。

時は202X年。舞台はフシギ都市大黒市。

舞台は由緒ある神社仏閣が立ち並ぶ古都でありながら、最新の電脳インフラを擁する地方都市「大黒市」。


この物語の主人公である子供たちはみんな特別な眼鏡をかけている。その名も電脳メガネ。これをかけると日常の物理空間に電脳空間の映像も重なって見えてくる。電脳メガネは、メガネの内側がディスプレイになっている、今の携帯電話とかパソコンのような存在。もちろんネットにつながって、情報をやりとりしている。映画「マトリクス」の現実空間と電脳空間は天国と地獄のように乖離していたけれど、この町ではそれがお互いを補うように重ねられた形で存在している。この電脳メガネを通してそれを同時に知覚できる。

NHKの番組サイトのトップ絵をよく見てみるとわかる(NHKアニメワールド:電脳コイル)。画像の中央の丸い輪っかは、誰かの手に持たれたメガネのレンズ。正面には物語の中心となる子供たちがいる。その中の小さな女の子が犬の耳を引っ張って持ち上げて、その犬が目を見開いて怯えた表情をしている。まさに動物虐第。でもこの犬の足をよく見ていると、後ろ足がない。メガネを通して見えている部分には犬がいて、メガネを通さない部分には何もない。実はこの犬は電脳ペットの「デンスケ」。実在しなくて電脳空間にのみ存在している。犬の横にも毛の生えた何か奇妙な生き物も映っているがこれもメガネの端で切れている。これも電脳ペットの「おやじ」。漂うようななかなかいい動きをするやつ。

この大黒市に二人のユウコが引っ越してきた。二人は小学六年生。区別のためにその漢字から「ヤサコ」「イサコ」と呼ばれる。この二人を中心に物語が展開していく。普通の女の子のヤサコと、謎の多いクールで高度な電脳空間の知識を持つイサコ。それとヤサコの友達になったフミエも重要な役。イサコには敵わないまでも彼女もなかなか凄腕だというのは今回の断片だけ見てもわかった。まだ部分的にしか見れていないけれど、舞台は恐ろしくサイバーなんだけれど、実際は普遍的な子供時代の成長を描こうとしているんだろうし、僕もそういう物語を期待している。

この町の電脳空間というのは、いわゆるRPGとかネトゲーとかの町が、この現実の町の座標と一対一に対応しているという感じなんだろう。だから電脳メガネをかけて、その場所を見ると、そこに対応する電脳空間の情報がメガネに映しだされるという仕組みのなんだろう。でもどうやってその対応を実現するんだろうか。メガネが携帯電話や無線ランのようにサーバーにつながっていて、GPSとか無線基地からの電波を使って極めて正確な座標情報をもっているとかなんだろうな。

深く考えると難しい。電脳空間はリアルタイムで現実空間の情報を反映している。まあそうじゃないと話が成り立たないのだけれど。ということは、その現実空間の情報は誰かがかけているメガネからその電脳空間に伝えられるということだろう。つまり誰も電脳メガネを使って見ていないものは、電脳空間には反映されえないということだろう。もちろん見ているというのは単にカメラが仕込まれているだろうメガネをそちらに向けているということでないといけないけれど。例えば、電脳ペットが飼い主のいないところを歩くように指示されていれば、電脳空間上をその電脳ペットはちゃんと歩いているのだろうが、その経路を遮るような物を電脳メガネをかけていない人が置いたりしても、その電脳ペットはその障害物の存在を知らないのでそれを無いものとして歩いていくのだろう。電脳ペット自体は物理空間を直接見ることができないのだから。ただそこに一人でも電脳メガネをしている者がいれば、その電脳ペットはその障害物の情報を獲得してしまうので、その障害物を回避するように動くということになるだろう。なんか考え出したらややこしくなるな。

こんなハイテクなメガネをかけていても、それなのにかえって僕たちの子供時代のような雰囲気さえ感じさせる。テレビゲームや携帯ゲーム機に拘束されていなくて、メガネをかければこの町自体が無限の遊び場になるからじゃないかなと思う。男子はこの時代も単純すぎる。まあ事実そうなんだからしかたがない。駄菓子屋のばあちゃんも出てくる。ただそこに売っているのが昔も今も扱っていない電脳空間で使うための小銭で買えるアイテムだという違いはあるけれど。

この物語に一つ心配なことがある。それは本来の視聴対象の子供たちに理解できるだろうか。大人でも理解できないような高度な設定だから、混乱して、わけわからんから見ないってなりやしないだろうか。でも子供だから分かるということもあるかもしれない。深く考えない方が見ていられるということもあるだろう。今日の回なんて雰囲気最高。理屈抜きになにかすごい電脳バトルやってて、かっこよかった。子供たちにも、うけたかな。

残念なのは第一話から見ていなかったことだけど、いい情報を見つけた。NHKのページには、「6月16日(土) 午後3:00〜5:00 教育テレビ にて「電脳コイル」の1〜5話を一挙に放送する予定」とある。よかった。

ノベライズもされていて、現在すでに第一巻が発売中。著者は脚本家の方の宮村優子。「六番目の小夜子」の脚本の人。

関係ページ

■NHK教育
NHKアニメワールド:電脳コイル

■オフィシャルページ
電脳コイル


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2007年06月13日

電脳コイル 第五話

いまさら三日前のテレビのことを書くのも何だけれど、疑問点とか考えたことをいくつか。

今回初めて最初から終わりまで見た。
今回は子供たちの人間関係を紹介するような話。
この回の重要な展開は:
・イサコが男子たちをてなづけて大黒ヘイクー倶楽部のリーダーに就任する。
・それまでのリーダーのダイチはフミエを昔から意識して、スカートめくりとかちょっかい出していた。でもフミエは鈍くて気付かない。その二人の対立がフミエのハッキング能力を高めさせた。
・生物部部長のハラケンが頼りなさそうで意外に頼りになるかなというところで終わる。


メタバグという、特殊な存在が話の中心になるんだけれど、これがいまいちよく分からない。宝石のような形をしていて、指先でつまんで持つことができる。ちょうどそのくらいの大きさ。もちろん電脳空間にのみ存在するもの。ネット上で取引価格を検索することができる。子供たちのいい小遣い稼ぎになってるらしい。電脳空間のイレギュラーな存在で、もう取り尽くされているようで滅多に見つからないが、まだ鉱山のようにメタバグが一杯埋まっているところもある。衝撃で電脳空間に爆発を起こしてしまうものもある。


電脳空間が不安定なときは、電脳霧が出る。メタバグを探しに来たところがそうなっている。オープニングは初めて見たけれど、冒頭の靄は、朝靄という現実と、この不安定な電脳空間の両方の意味があるのだろう。そして朝日が差し始める前のその世界が、主人公たちの今の内面を表すものでもあるのだろう。


電波状況が悪くなってくると体にノイズが入り出す。デジタルビデオに出るブロックノイズのような感じ。これは電脳空間に入り込んでいる本人の身体ということになるのだろう。この電脳空間の身体は、どうやって現実の身体と連動するんだろうか。誰かのメガネで見ていることによって反映されるのだろうか。やっぱり見えている部分しか電脳空間で動かせないのだろうか。このノイズがひどくなって、電脳空間の身体の映像がなくなれば、電脳空間への影響力を失ってしまうのだろう。その空間の物を動かせなくなったり、見ることができなくなるのだろう。


それから気になったのが、電脳ペットのおやじがスパイをしていたこと。こういう場面は今までもあった。これはあり得るのかな。電脳ペット自体は電脳空間しか見ることができないはずだと思うのだが。ということは電脳ペットそのものが誰かの視界に入っていなくてもいいわけか。考えてみればそうじゃないといけないように思う。

電脳メガネをかければ、その人の言動が全て電脳空間で行われていることになってしまうわけか。近くまでいけば、他の誰かのペットでもその空間の様子を見ることも聞くことができるということか。電脳空間なら距離なんか関係なさそうだけれど、近くまでいかないと聴けないという物理空間のようなルールがあるのだろう。

ということは、この電脳空間は密談ができないようにできているわけだ。子供たちが電脳空間で本当の悪さをしないように電脳空間は一切が隠し事ができない公的な空間になっているんではないだろうか。そのかわりに、物理空間のような情報伝達に距離の限界があるのだろう。本当に誰にも知られたくない密談をするならば、電脳メガネを外してすればいいはずだ。みんなそうすればいいのに。


■番組情報
電脳コイル第五話『メタバグ争奪バスツアー』
NHK教育2007年6月9日午後18:30

今週末に第一話から五話までの特別再放送。
6月16日(土) 午後3:00〜5:00

■関連当ブログ記事
電脳コイル


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2007年06月17日

電脳コイル 〜6赤いオートマトン

異例のアンコールスペシャル放送。見られなかった回を見ることができて、NHKに感謝。
一つ一つのシーン、一つ一つセリフが、この世界を説明する大切な情報で、かなり緻密に世界設定をしているのがわかる。突き詰めると破綻するものも見つかるかもしれないけれど、この世界はかなり楽しめる。それが最初から明らかにされているんじゃなくて、物語が進むにつれて次第次第に明らかになっていくのが楽しい。今回見たことで、ちょっと僕が考えていたものも修正しないといけない。

物語を楽しみたいならば、以下はかえって読まない方がいいかもしれない。

第六話の重要な展開は:
ハラケンのおばさん登場。実はヤサコの父親のあつかいにくい部下。
黒ずくめのバイク乗りの姿で今までも画面の端に映っていた。おそらく同一人物。きっとMatrixのトリニティへのオマージュ。
ハラケンがサッチーにできる命令は、待て、お手、お座り。これは、サッチーの導入に関わっているおばさんが、ハラケンの「イリーガル」研究のために特別に使えるようにしてくれた命令。サッチーは不純な電脳物質を見境なく初期化してしまうので、この命令はイリーガル研究にはなくてはならない。ハラケンがイリーガルを研究するのは、一緒に研究していた女の子の死の真相を探るという目的もあるのだろう。
この世界では車は電脳ナビで自動運転。そのときは絶対事故は起こらない。それなのにハラケンと一緒に研究をしていた女の子カンナは交通事故にあって、死んでしまった。ハラケンを幼い頃から知っている花屋のおばちゃんがいうには、この事故の後ハラケンはあまり笑わなくなった。
いろいろ面白い場面があったけれど、サッチーの能力を研究するためにイサコとフミエは神社に潜んで、目の前の道の電脳空間をわざと壊して、サッチーの検知能力を測っているところは地味にいい。
今日はいろいろ世界設定が公開された。神社や学校にサッチーが入ってこられないのは、縦割り行政のせいだというのは、いいセンス。サッチーは郵政局に所属するので、管轄の違う文部局の学校や、文化局の神社には入ってこられない。別に家の中はホームドメインでサッチーは入れない。サッチーの行動できるのはオンロードドメイン。
何もかも指さしてうんちと叫ぶのがマイブームだったヤサコの幼い妹キョウコは、ハラケンのおばさんに会ったおかげで、バイクにまたがったまねをしてブーンブーンと言うのが新しいマイブームになった。

後は一話から五話までのアンコール放送を見て気になったこと:

第一話オープニングの直後に、大黒市がもやに包まれている様子が映って、それに対してヤサコが理由を説明しているのは、明確なオープニングの解説だな。

子供たちの噂する都市伝説や、ヤサコの幼い頃の思い出せない記憶、ハラケンの死んだ友達。そういう謎が、イサコの探している何かと結びついていくんだろうな。どの話にも今後の展開に欠かせない重要な出来事が描かれているみたいだ。ほんとアンコール放送見れてよかった。

第一話でヤサコの電脳ペットのデンスケが古い電脳空間に迷い込んでしまう。この古い電脳空間というのが今後また重要な役割を果たすのではないかと思う。ヤサコの不思議な幼い頃の断片的な記憶、鳥居の並んだ階段のことをこの町で生まれ育ったフミエが知らないというのは、その場所が普通では行けない場所にあることを意味しているのではないかと思う。ヤサコが古い電脳空間にいるデンスケの場所が漠然と分かったのも、そのことと何か関わりがあるのだろう。でもこれはかなりの特殊能力だろう。電脳コイルのことを最初にここに書いたときこの世界と電脳空間が一対一に対応していると書いたが、実はそうではないということかもしれない。第三話で現れた鍵穴は、そういう別の世界に入るための鍵穴かもしれない。

イサコは手を動かさずに電脳メガネを操作するイマーゴと呼ばれる技が使える。これは封印されたメガネの隠し機能らしい。イサコの目が赤く光ってカチカチっとするのは、サッチー同志が通信するときのカチカチと同じな描写なのは、意図的なのだろう。こういうのは展開が進んでいくと、他の子供たちも使えるようになっていくんだろうか。ラストの26話付近でなんか壮絶な電脳バトルを期待してしまう。

全部通してみると、メガネをおでこに上げているときと普通にかけているときとが区別されて描写されている。これももっと気をつけて見ていくと、その区別の設定がわかるのだろう。メガネの電源を滅多に切らないらしいけど、おでこにメガネを上げているときも電源は入っているのか。普通にかけてないときも指電話ができるのはそういうわけか。でも手の指で電話の形をするのは、必ずしないといけないのかな。あの位置では自分のメガネでは映っていないはずだから、僕の考えている理屈では、手の動きが電脳空間に反映できないので説明できない。

それにしてもメガビーいい。あの額にピースをあててやるおデコビーム。


ところで、DVDが予約可能になってた。今日のアンコール放送見逃して乗り遅れた人は、DVDでどうぞ。

以前説明した画像とは違うけれど、このDVDの表紙は、電脳メガネ越しとそうでない部分が描かれた画像。ヤサコとイサコが並んで立っていて、その間にサッチーの一部分が見える。デンスケも見える。でもそんなに近くにいてサッチーは攻撃してこないのかな。

■amazon.co.jp
限定版と通常版がある。限定版には絵コンテ集等が入ってる。通常版にも初回封入や毎回封入の特典がある。
品名にマウスを重ねると商品プレビュー。



電脳コイル (1) 限定版
1話〜2話収録

電脳コイル (2) 限定版
3話-5話収録

電脳コイル (1) 通常版

電脳コイル (2) 通常版


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2007年08月04日

デンスケブログパーツ

「電脳コイル」毎回見てる。

公式サイトで、電脳ペットのデンスケのブログパーツについてのニュース(7/24)があったので、リンク先にいってみた。そして張ってみた。CCレモンやデンスケをクリックすると動き出す。訪問回数によって、動作が違うみたい。

配布先:C.C.レモン デンスケブログパーツ


※追記
デンスケブログパーツは 2007/12/27で終了してしまった。
在りし日のデンスケの勇姿はこちら
さよなら、デンスケ


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2007年08月07日

電脳コイル#13「最後の首長竜」など

実はいつも電脳コイルを見たあとは、理解するためにいろいろ疑問点や気付いたことを整理している。でもいつもまとまりがなくなってしまって、結局ここに投稿できなくなる。けれど物語も中間点にたどり着いたことだし、今回はいつもよりちょっと努力してまとまりをつけてみた。

なぜか、今回は見る前からのび太を思い出してしまうタイトル。今回の主役はデンパ。いつもダイチにくっついているのに、今回はダイチは出てこない。先の二回でダイチは土下座したり、発毛したり忙しかったから、今回は休みでいいや。でも、いないと話の雰囲気ががらっと変わる。今回の話は、優しい性格のデンパが、ダイチにも秘密に育てているイリーガルの首長竜の話。とても切ない物語。

「クビナガ」は古い空間の空き地に住んでいる。長い首だけを水面から出した恐竜のような、まるでネッシーみたいな姿をしている。地面の黒い部分を水面のように変化させて移動する。白い部分や日の光があたるところには入っていけない。このような古い空間がいままで残ってきたのは、サッチーが入ってこれないドメインの領域だったから。

デンパがこの場所を見つけたときには、まだこのイリーガルは何匹もいたのだけど、いつのまにか一匹だけになってしまった。誰にも秘密にしていたけれど、ハラケンとヤサコが例の日記が示す古い空間を探しに偶然この場所にやってきて知ることになった。

空き地で建設工事が始まることになり、首長竜をどこか安全な場所に移動させなくてはならなくなる。そこで、ヤサコ、フミエ、ハラケン、デンパが、新しい居場所へと「クビナガ」を連れて行こうとするが。。。



今週までの三回「沈没! 大黒市」「ダイチ、発毛ス」「最後の首長竜」は作品の流れを一休みして、イリーガルたちを中心においた話が続いた。最初の二回は。重大な事件なのだけどコミカルで楽しい雰囲気。今回も笑えるところはあるけれど、イリーガルに寄り添った視点からの、彼らが置かれている悲しい立場を描いている。

この三回は興味深いイリーガルが現れ、自然な形で子ども達がそれを観察していく。そうやって、視聴者も少しずつだけれどイリーガルというものへの理解がだんだん深まっていく話の作り。ついでにこの電脳空間の細かな設定も描写され、世界の理解も助けてくれる。

「沈没! 大黒市」。これに出てきた魚のイリーガルは、原始的な命としての特徴を持っていた。古い空間からダイチが釣り上げたイリーガルは、最初は見落としそうなくらい小さなものだったが、ダイチが電脳空間のテクスチャーを集めてきて食べさせるとどんどん大きくなっていく。

エサをやると大きくなるだけの単純なペット育成ゲームのよう。イリーガルは古い空間の中でしか生きられないけれど、この黒い「キンギョ」は自分の周りに水のような古い空間を作ることができ、その空間を泳ぐように動いている。

食べると段階的に空間も自分の大きさも成長させていく。やがて部屋に入りきれないぐらいに巨大化し、大黒市を埋め尽くすかの勢いで、古い空間を広げていく。これはぜったい巨大な人型兵器か宇宙人に解決してもらわないといけないような、人間の力では手に負えないような展開。我らがサッチーも出動するが、何の戦果もあげられず、あえなく巨大化したイリーガルに食い散らかされてしまう。結局はメガばあのワクチンソフトで難を逃れた。

「ダイチ、発毛ス」。これはダイチに生えた伝染性の「ヒゲ」の話。神社の軒下でダイチが文字化けした空間に指をつっこんで感染したらしい。実際の顔の皮膚に生えるのではなく、電脳空間上の身体の顔の部分に生えている。だからメガネで見ないと何も見えない。

女の子だろうと構わずに、次々にヒゲは人の顔に伝染し、町中大変なことになっていく。このヒゲは群棲型のイリーガルで、言葉を話し、知性を持っている。このイリーガルは顔の上で文明を発展させていく。メガバーが彼らの言語を翻訳するソフトを開発すると、ヤサコたちはヒゲに対して神の声としてコミュニケーションできるようになる。まるで文明育成ゲーム。

文明が発達すると、ヒゲ達はヒゲ同志で戦争を始めてしまう。核兵器まで作り上げる。ひとまず核兵器の撃ち合いが終わったかと思うと、今度は他の顔の上で生息しているヒゲ達と星間戦争を始めてしまう。自分たちの顔の上で際限なく続く戦争の中、ヤサコ達は戦争の虚しさを肌身を通して感じとる。

やがてヒゲ達も戦いの虚しさを感じて、神との対話を試みる。そこでヒゲ達から神達へ鋭い問いかけが投げかけられる。前回土下座までさせていた仲の悪いダイチとフミエにその言葉が突き刺さる。ヤサコはヒゲ達のための絶好の新天地を用意するが、やがて自分たちの居場所を求めて旅立ってしまう。

そして今回の首長竜。イリーガルは心を持っているかのように振る舞う。痛みを感じ、自分だけ生き残った孤独の中で寂しそうに生きている。そして最期のシーン。時間内に目的地にたどり着けず絶望的な状況の中で、「クビナガ」は仲間達の幻を見てしまう。そして痛みも忘れて暴走し、朝日の中で絶叫しながら溶けてしまう。この最期は壮絶過ぎる。その溶けていく姿と叫びを間近で見なければならなかったデンパがかわいそうすぎる。

この件にずっと距離を取りながら関わっていたフミエは、感情移入なんかしたら損なだけだと言いながら、声をあげて泣いていた。子ども達にとっては、イリーガルは命として認識可能な存在となってくる。今回の話は、今後このような特徴を持った別のイリーガル出現への布石になるんじゃないかと思う。

今回の子ども達の行動は、大人の知恵があれば何とかなったかもしれない。いままでずっとメガばあになんとかしてもらったから、今回もそうしてもらえれば、助かったかもしれない。ハラケンは大人びているし、フミエも高度なハッキング技術を持っている。けれど、彼らはやっぱり子どもなんだと思い知らされるような話だった。

大人ならばあらゆる想定をしてうまくいかないときの対処も考えて行動するだろう。でも子どもはうまくいくことだけを考えて行動してしまう。彼らは彼らなりに十分に考えて行動し、臨機応変に解決しようとした。けれど少年の日のどうすることもできない無力さを感じる切ない話。大人ならそう感じるだろう。


このようにこの一連の話でイリーガルの人工生命として特徴が描かれてきた。イリーガルが何者なのか、まだよくは分からない。偶然産まれたものなのか、人為的に作られたものなのか分からない。ただ想像を絶する多様を持っているのは確かだろう。成長し、文明も持ちうるし、痛みを感じる心もある、そのような命としての側面を持つことが分かってきた。

イリーガルは電脳空間の情報として存在であり、電脳メガネを通してしかその存在を知ることができない。純粋な情報としての存在なのに、知性やまるで心があるかのように振る舞う。なにかとてつもない謎を秘めているのは確かなんだけど、まだよくわからない。

デンパの持っていたイリーガルに対する優しさを、今回のことでヤサコたちも同じように持つようになっただろう。そこで今後イサコたちとイリーガルへの対応で対立が起きるのではないかと思う。なぜならイサコはイリーガルを下等生物と言い放っている。また争いの虚しさという経験ものちのち、役に立つことになるのだろう。


夏休みに起きたこのイリーガルにまつわる出来事は、本編からは逸れていたかもしれないけれど、子ども達の心の成長を描く大切な話になったのだと思う。



この三回で、その他、気付いたこと、気になったこと

・キョウコはヤサコと同じように古い空間を感じる能力がある。
・メガネで、空間のバージョンを調べることができる。
・新しい空間は5秒おきに更新され、古い空間は1分おきに更新される。その差を利用してテクスチャを剥がすことができる。
・ダイチの部屋のカレンダーは2026年のもの。
・ハラケンたちは、電脳空間ナビに接続していたイリーガルがいたかもしれないと、探している。
・イサコはイリーガルを下等生物と呼ぶ。
・イリーガルには、メタバグを食べて濃縮する性質のものや、今回のようにテクスチャーを食べるものもある。イサコが探しているのは前者。
・ハラケンのオバちゃん、原川玉子は、コイル探偵局会員番号二番。メガばあのこたつでしょんべん漏らした過去がある。
・オバちゃんは、メガばあをばばあと呼ぶ。二人の間には4年前に何か大きな因縁がある。
・メガばあに過去はない。未来に生きる女。(フミエ談)

・イリーガルは古い空間で、誤差の出やすい場所に出やすい(ダイチ談)
・ダイチはまだ生えていない。
・ダイチのファーストキスはキョウコに奪われた。おそらくデンパも。
・夏休みの登校日。新校舎に移転という張り紙がある。

・フミエは学習塾の夏期講習に通っている。
・フミエはドリンク剤飲んでる。
・ハラケンは病院に通っている。
・デンパは片側に補助輪のある自転車に乗っている。
・(クビナガやサカナのイリーガルについて)大きさを制御するプログラムがバグっている。(ハラケン談)
・大きくなりすぎた電脳物質は壊れやすくなる(フミエ談)大きいとそれだけサーバの負荷も大きし、イリーガルは違法にサーバを占有しているから、しょっちゅう小刻みに体を削除されているはず。ペットも体を細分化されて、あちこちで並列処理されている。どこのサーバもイリーガルの部品を見つけたら、すぐに削除する。
・オバちゃんは清純女学院の生徒。学生服の時はいつものメガネは付けていない。
・道路には街頭カメラがある。




次回は8/25「電脳コイル自由研究」
タイトルから、前半の総集編か、電脳世界の解説じゃないかと思う。
間が空くのは、高校野球中継があるからだろう。


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