そうか、これは竜だったんだ。
DUNEは遠い未来の、砂漠の惑星アラキスを舞台にした物語。DUNEを読み始めたのは、それが『風の谷のナウシカ』に影響を与えた作品だと知ったからで、結局フランク・ハーバートの書いたこのシリーズ全巻読むことになった。ナウシカに出てくる王蟲はまさに読みからしてこのDUNEのsandwormの公然としたオマージュだ。巨大な芋虫と巨大なワラジムシの違いはあるけれど、同じ役割を演じている。王蟲は当て字によって意味をずらしているが、厳密に言うとwormに由来している言葉なのに本来のwormが意味する範疇の外にある。「worm=虫」という日本語翻訳の単純な図式が元になっているがゆえの連想。
DUNEシリーズの英語版の表紙など、sandwormは巨大な芋虫かミミズのようなたくさんの節のある巨大な円筒形の姿で描かれている。まさしくworm。でもこれはwormの竜としての意味を知らない画家が間違って描いたわけではない。物語の中でちゃんとそのように描写されている。頭に顔はなく、巨大な口だけがある。デヴィッド・リンチDavid Lynchの映画では先が三つに開いて口が見えてくるが、原作では、口は内側の縁にぎっしりと歯の付いた大きな穴としてだけ描かれている。
このような姿に描かれるsandwormも、wormの古い意味を思って見てみると、物語の役割からも、その名にふさわしくまさしく竜と思えてくる。これは英雄と竜、皇帝と魔女、貴族とずるがしこい商人の出てくる中世的な復讐劇として見ることができる。この物語では、wormは退治すべき悪の化身としては描かれない。英雄は、死者の水分まで共有物として搾り取る砂漠の民とともに、このwormと共存し、自分の強力な味方としていく。やがてこのシリーズは英雄の一族とwormとの密接な関わりを描いていき、未来の人類の成熟した精神像さえも描き出してくれる。
容赦なく人の命を奪いさる巨大な存在は、砂漠の民フレーメンにとっては畏敬の対象となる。フレーメンの生活はsandwormとともにある。彼らはsandwormの背に乗って長距離を移動する。sandwormは人類の求めてやまない長寿薬メランジと深く関わっている。このメランジもフレーメンの生活に欠かすことのできない重要なスパイスだ。wormは砂漠に包まれた厳しい環境を象徴した存在でもある。sandwormの重要な特徴として、水と関わり深い本来の竜の属性とは逆に、砂漠に住むこの無敵な存在は水によって死ぬ。
■関連リンク集
・DUNE 公式サイト(英語)
DUNEシリーズは、原作者Frank Herbertの死後も、息子のBrian HerbertとKevin J. Andersonによって、その世界観を踏まえた物語が作られ続けている。最新刊は、『SANDWORMS OF DUNE』で、英語原書版だがもうすぐ発売になるらしい。だけど僕は彼らの作品をまだどれも読んでいない。
en.Wikipedia
・Dune(novel)
・Category:Dune
英語版のWikipediaには『DUNE』について莫大な量の記事が書かれている。DUNEにインスパイアされた物語のリストもある。