2008年10月10日

七瀬ふたたび 第1回「そして扉がひらく」

七月のアニメ「時をかける少女」のときに筒井康隆のことを調べていたら、偶然このドラマが10月から放送されることを知った。それ以来、かなり楽しみに待っていた。何度目かのドラマ化。小学生の時見てました。NHKの多岐川裕美主演のを。

基本的な設定は踏襲しているようだけれど、現代風に大胆に物語が書き換わっている。

去年ミステリチャンネルでやっていた多岐川裕美版「七瀬ふたたび」の放送も見てた。ここに書こうと思ったけれど、結局書かずに一人で懐かしがっていた。漠然とした記憶の中にあるものよりも、セットも演出も衣装も化粧も音楽も古すぎて、第一話はちょっと驚いた。でもすぐに昔の気持ちに戻ることができて楽しめた。子どもの頃見たときの追い詰められていく怖い感じも思い出してきた。その頃はこの物語を少年ノリオと七瀬との関係で理解していたんだ。他の人間関係は見えてなかった。少年ドラマ枠だったのに、主人公がホステスとか、カジノに行くとか、今考えると少年向けとしては妙な展開だったけれど、それはそれで当時は自然に受け入れていた。

昔見たとき、「ふたたび」ってなんだ?前作があるんだろうか?と思っていたが、その頃は結局謎のままだった。今は三部作の二番目の作品だということを知っている。前後の原作は読んではいないけど。

今回のドラマは、前作にあたる「家族八景」の部分を無かったことにしている。子どもの頃から能力は持っていたらしいが、本人が自分の能力について自覚のないままずっと封印されていた。そして母の危篤という出来事によって封印されていた能力が再び発現される。

小説や以前のドラマの七瀬は、生まれながらの能力のために他人の心の暗部に晒され続け、影のある女性という感じだった。でも今回は、明るく健気な普通の女の子が突然テレパス能力に目覚め、混乱してしまうまさにそういうところから描かれていく。

ただ、母の葬式の最中に自分の心労を察してくれる声とか、自分を心の声で応援してくれる老人の存在とか、口にする言葉と心の声が一緒の幼なじみの存在とか、第一話からちゃんと人の醜くない部分も描いているというのも、いい感じだった。この物語の今後の方向性を示すものなのかもしれない。

力の発現から、それほど日も経たないうちに心を許せる仲間に邂逅してしまうというのも、前作とは大きく違うだろう。前作の、邂逅までの七瀬の孤独な人生は、もう想像するだけで居たたまれなくなってしまうが。こういうところで、前作と主人公のキャラやストーリー展開が大きく変わってくるだろう。

「家族八景」の部分を前提としていない物語なのに、「ふたたび」というのは、なんかおかしいような気がする。原作が「七瀬ふたたび」なんだから、まあそう呼ぶ以外無いのかもしれないけれど。せっかくだから、「ふたたび」という言葉に別の意味を与えて、タイトルを納得させてくれる展開だと面白いな。今回の発現が「ふたたび」ということかな。
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2008年10月25日

七瀬ふたたび 第3回「悪魔のまなざし」

第2回「危険な力」の内容は簡単にまとめるとこんな感じ。前回の崖崩れを前もって知っていたことで刑事(亀治郎)に怪しまれる。警察が職場にやってきたことで、七瀬はヘルパーの仕事を辞めざるをえなくなる。父の研究メモが見つかりそれを藤子(水野美紀)に渡す。七瀬、そしてアキラは、七瀬の友達瑠璃(柳原可奈子)の部屋に転がり込む。他人の心の声で苦しまなくて済むように、アキラが心の窓の閉め方を教えてくれる。通り魔事件が七瀬の活躍により解決し、刑事から取り調べを受けていた恒介(塩谷瞬)の疑いが晴れる。未知能力者三人は仲間になる。七瀬は恒介と一緒のマジックバーで働くようになる。透視能力のある謎の人物が店に現れる。こんな内容。

第3回「悪魔のまなざし」はというと、悪の透視能力者、西尾(今井朋彦)の話。演じているこの人は「新選組!」の慶喜役の人。消臭CMの殿様と言えばわかるかも。西尾は昔超能力少年としてメディアでチヤホヤされていたときに、期待にこたえようとズルをしたら、それがばれて世間から激しいバッシングを受け、そのせいで世の中すべての人に悪意を向けるようになったという過去を持つ。性格がゆがんでしまって、幸せそうにしているというそれだけで、マジックバーの店長夫婦がターゲットにされる。西尾は透視能力を使って、狡猾に人に取り入っていく。西尾の考えていることが分かる七瀬は、どうにかしてそれを阻止しようと奔走する。西尾にキスを奪われそうになる。その場面を予知してしまった恒介も走る。いろいろあって、結局、店長夫婦はだまされず、店を手放すこともなく解決するが、自分の仲間になることを拒んだ七瀬を苦しめるため、西尾は七瀬の親友瑠璃にとりいってしまう。そして次回へと続く。西尾との対決へ。

原作ではタイムトラベラーだったのに、漁藤子が能力者ではなく七瀬の父親の研究を知っている大学の研究員というのも今回の作品で違うところ。 でも、第一話、研究室での同僚との会話の中で、時間がいつの間にか経っていることがあるという話をしている。これは時間跳躍能力を藤子が獲得するという布石かもしれない。原作を知ってる視聴者をニヤリとさせるためだけの台詞かもしれないけれど。今回、タイムリープをするとすれば、やっぱり七瀬の父が失踪した時期だろうな。


関連リンク:
NHK「七瀬ふたたび」公式ページ。あらすじが写真入りで紹介されている。原作者筒井康隆からのメッセージもある。
七瀬ふたたび | NHKドラマ8

去年放送されたミステリチャンネルの「七瀬ふたたび」番組ページ。各話の概要が書いてある。
http://www.mystery.co.jp/program/NanaseFutatabi.html


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2008年12月03日

七瀬ふたたび、いよいよ残り二話

木曜日 BS-hi 午後六時、NHK総合 午後八時からやっている「七瀬ふたたび」
独自展開になって、あと残り二話でどう終わらせるのか、楽しみ。

以下、疑問とかいろいろ。

ここまで、以前のドラマとストーリーや設定を変えてきたら、ラストも変えてくるんだろうか。昔だったら迫害されるマイノリティの悲哀を描いてもドラマとして成立したけれど、今は時代的に、未知能力を持ったマイノリティでも幸せに生きられる世界を描いてみせる、とかになってしまわないだろうか。

恒介の予知は変えられない。彼自身それは分かっている。それでも自分の予知した未来の悲劇を変えようと恒介は走り続ける。ドラマの最初の方から、視聴者に印象づけられたこの伏線はラストではどのように展開するのだろうか。終盤にきっとあるだろう最後の不幸な予知を恒介は自身の力で変えることができるのだろうか。そして行動によって七瀬への深い愛を表現してこそ恒夫(恒介)なんだけれど、今回はそこまでのドラマができるだろうか。

それにしても、七瀬が心を読まないという態度は、原作や多岐川版ドラマに親しんだ人間にとって違和感がありまくる。蓮佛七瀬は、能力を手に入れたばかりで慣れていない、能力に否定的であり、無くしたいとさえ思っている、心の扉を閉める方法を獲得してしまっている(酒に酔ってても自制できるくらい)、父のことで心が不安定である、さらにAT能力者だと知って自分の力を悪魔の力だとさえ思っている、そんないろいろな理由で、今回の七瀬は悩める七瀬となってしまって、そのために能力を積極的に使っていない。今までの作品の七瀬らしくなくて肩すかしをくらってしまう。飲み会で相手の心を読まないようにしてしまったために男の下心を見抜けない七瀬。そういう絶体絶命の窮地に追い詰められたからこそ、新しい能力を発揮できたのだけれど、七瀬にこの展開はちょっとない。昔の作品の七瀬ならばどんなときだって、ここは心を読むべき所だってところでちゃんと相手の心を読んでいるのが当たり前なので、見てて今の態度がもどかしくてしょうがない。

相手の心の声が響いていない描写のときは、七瀬は心を読んでいない。これがお約束。佐倉に対して父を殺したのはあなたと問い質したときも、七瀬は力によって分かったのではなく会話からの推察だけで判断しているようにみえる。七瀬が佐倉の心を覗こうとした態度も見られないし、おそらく自分の力に怯えて力を使おうという意志すらなくなっている。

終盤なので、謎の団体パクス・シエンティアの実像があきらかになるだろう。敵の能力者は活躍するのだろうか。ただ未知能力を悪用するために集められた被害者として扱われるのか。少しでいいから超能力バトルが見たいな。パクス・シエンティアに入ったナルセとユリコの二人の能力は何なのだろう。てこずるような能力者なのか。まあ、ここまで伏線がないのだから、取るに足りないものじゃないとルール違反だろう。父に会いに行く前の頃マジックバーに七瀬が一人いると、ユリコが恒介を訪ねてきた。この目的はなんだったのだろう。ただの勧誘か?だから次回の展開になるのか?彼女の能力は何なのだろう。彼女がテレパスなら、ボーッと父に会いに行くことばかり考えてた七瀬はあのとき心を読まれてるぞ。それと主婦になってるテレパスのサヤカや、あのテレキネシスが使えたけれど今は使えないと言っていたタケシはもう話に関わらないのだろうか。彼らにもパクス・シエンティアへの勧誘に誰かが来てるだろうに。そして、もう一人の予知能力者ユウジは自分たちの組織の未来について何も予知はしていないのだろうか。

それはそうとボーッとしている七瀬で思い出したけれど、父の生存を知った後、心ここにあらずの七瀬の心をアキラが読んでいたとき、アキラは七瀬の心が全開という言葉を使っていた。これって逆に言うと七瀬が人の心が自分の中に入り込んでこないように心を閉ざしているときは、アキラからも心を読みにくい状態になっていることなのか。心が全開なのに他人の心が入り込んでこない状況はありえるのか。そういう設定にして問題ないのか。

それにしても、後残り二話で収まりきれるのか。まあ、AT能力者の七瀬が本気になれば、無敵ですから、残り二話でもなんとかなるだろう。でも本気になれるかですよ。瑠璃が撃たれて、次回予告では七瀬の怒りの矛先は敵ではなく恒介に向かっているような描写だったし、終盤なのにそんな状態でどうするんだ。遅くとも次回が終わるまでには七瀬が自分の能力や運命を引き受けて本気にならないと、まとまらないんじゃないだろうか。

ここまで七瀬が能力を使わないせいでストレスを与えてきたのだから、最終話は父が残してくれたものを受け取った七瀬が自分の能力を小気味よく駆使して敵組織壊滅という爽快な展開を切に望む。とはいっても、父の最期で銃を向けたのは佐倉でも、実はお父さんは自殺なわけで、本気の七瀬に仇討ちされる展開だと佐倉もいい迷惑だろうな。残り二回でどうなるんだろう。そして物語のラストはどうなるんだろう。


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2008年12月11日

七瀬ふたたび 最終回「祈り」

今回で最終回。多少期待しすぎな見方をしたせいか、能力を活かしきれない七瀬の行動がいらついたけど、僕の中の評価では最終回でなんとか持ち直した感じ。
原作をある程度なぞりながらも、決して絶望ではない終わりがよかった。

原作や昔のドラマでは七瀬たちが死んでしまって、敵の組織もそのまま残るという不条理のまま終わってしまう。今回も七瀬は死んでしまうけれど、敵組織パクスシエンティアの正体が全世界に明らかとなり大きな打撃を受けるだろう。生き残ったアキラがきっと七瀬の意志を受け継いでくれるだろう。そういう希望を残してドラマは終わる。

これからのアキラは決して幸せな人生は送れないだろうけど、それでも、七瀬達の心を受け取ったアキラは決して西尾のような生き方はしなくてすむだろう。いやそんな生き方をさせてはいけない。

劇中では七瀬の録画されたメッセージは冒頭だけしか映されなかった。パクスシエンティアの正体を暴く言葉の他にも、きっと未知能力者の存在の意義についても語っていたのだと思う。アクティブテレパスの力によって全員に伝わった七瀬の最後のメッセージのように。その映像を見た人たちにも七瀬の願いは届くのだろう。残されたアキラが苦しまないですむような、人と人とが心から信頼できる世界を作れたら、どんなに素晴らしいだろう。

ドラマ公式ページ:
七瀬ふたたび | NHKドラマ8


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2008年12月12日

七瀬ふたたび 最終回2

前回の投稿のあと、いろいろ書き足りないと思ったので、付け足そうと思う。

この一週間は、最終回を待つばかりということだったので、多岐川さんの「七瀬ふたたび」をしっかり見直していた。そしたら、小説の記憶も混じっているし思い違いもあって、いままで嘘書いているのがいろいろ分かって恥ずかしくなった。

昔の作品を見たことを踏まえて、今回のドラマ化で再現することに問題があってできなかっただろうことを書き出してみると:
・子どもを親から引き離して連れ回す
・ヒロインが夜の商売で生活費をかせぐ
・アイヌ民族を連想させてしまう北海道を舞台にする
・ヒロインが海外の賭博で資金調達
・黒人が自分はヒロインの召使いだと言う
・ヒロインが黒人に命じて人殺しをさせる
・念動力で人の頭を砕く
・念動力で商店から品物を持ち出す
・白塗りのゾンビー軍団、もしくは心を持たないゾンビー警官
・子どもが死ぬ

今回、ベッドに連れ込まれる七瀬や、子どもの自殺のようなギリギリの描写のエピソードもあったけれど、そういうのは結果的に超能力で防ぐのでOKなのだろう。


昔のドラマの七瀬の行動の目的は、シンプルで、お金を稼ぐことだった。最初はノリオ(アキラ)と二人での生活費を稼ぐためだったが、仲間達と出会って、皆でひっそり暮らすための資金稼ぎに変わり、カジノでの超能力の使用となる。そこで敵に目を付けられて、最後には追い詰められる結果となる。

今回は、目的が父の失踪の謎を追うことに切り替わってしまった。そして父が死を偽装してまで身を隠さざるを得なかった理由である、超能力を悪用しようとする勢力との対決へと発展していく。ここで、せっかく本物の超能力をもった人々と敵対する物語になったのだから、ゾンビー軍団を彷彿とさせる超能力部隊との対決をちょっと期待してしまったけれど、そうとはならずに、戦うでもなく、原作寄りの警官部隊に追い詰められてしまう。

なぜ戦わないのだろうと考えてみた。未知能力を悪用する組織と対決するのに、人を攻撃する手段や、人を出し抜く手段として未知能力を七瀬達が使ってしまうと、自己矛盾を起こしてしまうからではないだろうか。今回のヘンリーは、西尾から七瀬を守るために使ったとき以外、とても心優しいことにしか力を使っていない。飛んでくる看板からアキラを守ったり、最終回でも商店街で子どもが乗っている自転車を支えて立て直したりした。西尾のときは、ヘンリーにとって大切な七瀬の命を守るためであり、そして(後から分かることだけど)七瀬が隠された能力を暴走させ命じてしまったという特殊な事情がある。でも、何も知らなかったとはいえ未知能力を攻撃の手段として使ったこの一回の暴走が、のちのち皆を悲劇に追い詰めてしまうというのは、なんて悲しい展開だろう。


今回のドラマは原作小説と昔のドラマを分解し、状況を変えて再構築している。順番が変わっていたりしているけれど、多くのエピソードは受け継がれている。最終回の今回は、ほぼ昔のドラマの終盤をなぞっていた。買い出しに行ったときにヘンリーが能力を使うことも、別な目的だったけど、そう。道路を木が塞ぐことも別の場面から持ってきている。状況は全く違うけど、七瀬と藤子とジャーナリスト、ヘンリーとアキラ(ノリオ)の二組に分かれてしまうのも昔のドラマと同じ。藤子が未来から危険を知らせにやってくることも。七瀬が森を走るのも。

前回の瑠璃による「化け物」発言もそうだった。原作では買い出しの場面で、敵に噂を流された七瀬達が商品を売ってくれない嫌がらせを受けたとき、七瀬が八百屋の女の考えを声に出して繰り返したことへの女の怯えたリアクションだった。第九話で同じように、七瀬は相手の考えていることを声に出して見せたので、瑠璃は「化け物」と叫んだ。でも、彼女の発言にはとても違和感がある。無理矢理感がある。ここは再現する必要はなかったように思う。するにしても別な言葉にするべきだった。

七瀬は森を走っているときに撃たれてしまった。最初、これは誰かが撃たれた衝撃を受け取ったのかと思ったけれど、七瀬が撃たれる場面を角度を変えながら、何度も繰り返し、それが七瀬自身の身に起きた現実だと言うことを印象づけた。アキラの叫びは世界が終わるほどの悲しみに満ちたものだった。七瀬はそれでも走り続け、アキラ、そして包囲している警官達にメッセージを送り、そして横たわる。

七瀬は誰に撃たれたか描写されなかった。警官かもしれないし、佐倉の配下にはないパクス・シエンティアの刺客によるものなのかもしれない。死んだと思われた西尾か念動力で恒介を押さえていた男のどちらかが実は生きていて、恒介を同じ銃で撃ったのかもしれない。でも、一番怪しいのは、遠距離の透視も可能な、西尾だろう。七瀬がジャーナリストと会っていることもお見通しだった。西尾の透視能力には、千里眼の能力もあるようで、かなりの拡大率で見渡せるようだ。森の木々も遮蔽物にならないので、森を走る七瀬がいる位置を見つけるのはたやすいだろう。それと、見事一発で七瀬に致命傷を与えている。七瀬を撃った後、誰も速度の落ちたはずの七瀬を追いかけている様子がない。西尾の能力を使えば、訓練は必要だろうが、射程距離の限界からでも高い命中率で確実に命を奪えるだろう。そういうことを考えると、彼が死んでいなければ、動機的にも、状況的にも、位置的にも、能力的にも彼がもっとも疑わしい。

本来の七瀬ならば、殺意を持った人物が自分を狙っていることぐらい分かりそうだ。そして撃たれた後その人間の思念を感じ取ることも。今回の七瀬はそういうことに無頓着なので、もう問題にすらならない。昔のドラマでは七瀬を森で追い回すのは、禅により心を隠す修行をしているゾンビー軍団なので、七瀬は回避できない(七瀬が命を落とすことまでは描写されなかったが)。原作小説では、心を持たないゾンビのような警官なのでやはり心を読めないので回避できない。以前はそういう理屈があったけれど、今回の七瀬は一心不乱に森の中を走ってしまったので気づかなかったし、自分が撃たれたことよりも仲間を想う気持ちが強いからだと考えるしかないだろう。


ラスト、恒介と七瀬は二人並んで横たわっている。別々な場所で死んだのだけれど、お互いを想い、心がしっかりとつながっていた二人は死をむかえても分かたれることはないということだろう。毎回冒頭のタイトル画面では七瀬ふたたびのロゴが羽に埋もれている。そして最終回ラストでテーマソングが流れる中、二人に羽が降り注ぎ、そして二人の姿は消えてしまう。二人は役目を果たし、天に迎えられたとも解釈できる。


超能力とか、SFとか、ハイテクとか、正直、日本の実写ドラマの実力ではそういうジャンルは描ききれないと思う。もちろん超能力が物語の中心にあっても、作り手が本当に描こうとしてい るのは、いつだって人の心なのだというのは分かる。世界が完全に構築されてあっても心が描いていないならば、それは物語ではない。けれど、世界を丁寧に描いてこそ、そこに生きる登場人物たちが生きてくるのだから、その世界の描写が不完全だと登場人物の存在や、彼らへの共感が薄れてしまう。超能力関係の科学考証は専門的で面白い部分もあったけど、一方で物語世界を描写する緻密さが足りなかった。これは否めないと思う。

それでも、この最終回を、同じ主人公達の死という結末で終わらせながら、いままでの作品の「七瀬ふたたび」とは違う現世での「希望」を果敢に描こうとしたことは、十分に伝えられているのではないかと思う。子どもを殺せないことを逆に利用した、この新しい意味づけが生きていると思う。いろいろ考えて補わないといけないこともあるけれど、十分に楽しめる作品だった。

最後に、昔の作品で恒夫役の堀内正美が七瀬のメッセージを全世界に伝えるジャーナリストの役になったのは、多岐川版のファンとしてもうれしい限りだ。別な役だけど、彼が演じるジャーナリストならば間違いなく七瀬たちの想いを世界に伝えてくれただろう。能力者を道具に使う組織を壊滅に導いてくれただろう。安心してそう思える。


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2008年12月20日

「七瀬ふたたび」が終わって

毎週見ていた「七瀬ふたたび」の放送が終わって、一週間が過ぎてしまった。
余韻というのではなく、物足りなさと言っていいのか、もやもやした何とも言えない気持ちが残って仕方がない。期待しすぎていたのは事実だけど、今回の作品が全然駄目だってわけでもなかった。思いを切り捨ててしまえれば、楽なんだろうけど。ほんとに惜しい。

未知能力を悪用する組織との対決という目的の変更もありだし、希望を残す結末の変更もありだと思う。二人が並んだあのエンディングも申し分ない。でも残念だ。

普通の人の心の中にある異端者に対する拒絶や、利権を握った者たちがその地位を脅かす存在を実力で排除しようとする現実の非情さ、そういう従来の物語のテーマに加えて、科学の暴走や、狂信の恐ろしさとか、いろいろなものを詰め込みすぎて、収拾がついていない感じだ。

物語の展開についても、考えれば考えるほど、未来の事象も含めて、すべての悲劇の原因が七瀬自身の未熟さに帰結されてしまう。本気モードの最終回だけでも、原作通りに追跡者の心を読めないという理屈にしていれば表面上は繕えたのに、それを明示していないので、すべてが心を読もうとしない七瀬の問題になってしまう。本当に残念だ。


ところで、もう一度最終回を見てみたら、今さらだけど、七瀬が撃たれたことがはっきり描かれているのを確認してしまった。七瀬が撃たれてしまう場面、一瞬彼女の後ろに弾の軌道が見える。弾が後ろから追いかけてきて七瀬に当たっている。上からのカットでも、ちゃんと軌跡が見える。もしかしたらと思い、一コマずつ戻して弾の出所を確認してみた。でも犯人は分からなかった。


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